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その影にご注意  作者: 秋元智也
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第一話

浅田恵、一見女のように見える外見とその名前からよく間違えられる事が

多いいのだが、れっきとした男である。


いつだったか覚えていないが陰に住むモノが見えるようになったのは運が

悪いとしか言いようがない。


見たくて見ている訳ではない。

だが、向こうは見えている者には悪戯をしてくる事が多く、極力気にしない

ようにしているのだが、気づくと目が合ってしまう。


そういう時は関わらないように逃げるのが一番だった。

その日も見てはいけないモノを見てしまった。

それは陰に生きるモノではなかった。


空き教室で弁当を食べようと開いただけだったのだが、そこには先客がいたのだ。


それもお取り込み中だった。


「おい!お前何してんだよっ…さっさとでてけ!」

「はぁ〜?ってかこんなところで何を…いや、いい。ご飯が不味くなる…」


ドアを閉めると別の場所を探した。

なんでこんな時に…。

田辺唯。金髪ハーフのヤリチン男はところ構わずやっている事がある。


何が楽しいのか毎日違う女を連れている。

同じ女の時など滅多にない。年もバラバラでそんなにモテるのか不思議だった。

その割に後腐れなく好かれてるいるし、男の敵でしかない。


「なんなんだよ!こっちが悪いみたいじゃん。」


恵は愚痴りながら弁当を駆け込む。

田辺のせいで時間が少なくなってしまった。

花壇の水やりもまだしていない。

ご飯を駆け込むと花壇へと向かう。

いつもの日課のように水やりと草むしりを行う。


花は見ているだけで落ち着く…ストレスも感じないように綺麗に咲く姿が好きだ。

それに比べ人間は浅ましい。

恨みを買っているのか、誰しも後ろに黒いモヤを抱えている。


恨みや妬みは霊を引き寄せる。

何もしなくても寄ってくるモノには抗えず後ろにゾロゾロと連れている人もいる。

そういう人には決して話しかけられたくはない。


恵を見ると後ろにいるモノが急にこちらに移ってくるからだ。


「はぁ〜、お前達はいいよな〜」


キーンコーン、カーンコーン。


予鈴が鳴ると恵は立ち上がり教室へと戻る。

さっき、空き教室であった田辺から睨みつけられるが完全無視を決め込んだ。

そういえば、田辺にはモヤが付いていた事がない。


珍しいと思いながらも窓の外を眺める。

校庭にもうようよと動き回る黒い影がいる。

形を保てないのか消えかけているモノや、そうでないモノもいる。


先生に呼ばれ黒板の側に行くとその前を遮るようにモヤが見える。


嫌だな…。


軽く手を振ってモヤを霧散させると横を通りすぎる。

さっさと終わらすに限る。回答を書いてすぐに席に戻った。


変な人だとは思われたくないけど、こればっかりは仕方がない。


授業も終わるとホームルームがあり、その後は下校時間となる。

恵はそそくさと教室を出ると家へと向かう。

人の多い所は苦手だ。

誰かは強い影に憑かれている事が多いからだ。

家には大量のお札が貼られており、影は入ってこられない。


家だけが恵が唯一くつろげる場所だった。

宿題を終わらせ、床に寝転がった。


高校に入るのだってギリギリの学力なので少しでも勉強はしなくてはならない。


恵の頭が悪いというわけではない。

中学に上がる時に神隠しにあったのだった。

あの時の事は全く覚えていないのだが、学校から帰ってきてから近くの神社に遊び

に行って、そこからの記憶が全くない。


そして、悪い事にそれ以前の記憶をもなくしていたのだった。

一週間後に神社で発見された時には、自分の事も全く分からなかったという。


その日を境に友達も離れていった。


いや、恵が友達を怖がるようになったのだ。

友人の後ろに付いているモヤが話しているうちに自分の方へと手を伸ばしている

ように見えるからだった。


やっとそのモヤにも慣れた頃には近くに誰もいなくなってしまった。

高校は離れた東京へときたのだが、そもそもそれが間違いだったのかもしれない。


モヤがはっきり人の形に見え出して、怨念が強いモノほどはっきり見える。

学校ではできる限り驚かないようにしていても、いきなり出てくると声が上ずっ

てしまう。


そうして、今のクラスでも友人は一人もいなかった。



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