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国王陛下のひみつ

遅くなりました。

連続で3話上げます!

「今日も美少女風呂ありがとうございました……」


やけにツヤツヤした国王が、ホコホコしながら呟いた。

令嬢たちは皆、風呂を済ませて3階に上がり、寝る準備を始めていた。

火を落としたキッチン前の粗末な椅子に座って、湯冷ましをちびちび飲んでいる国王は、しましまのパンツ一丁だった。


「……どうしたね、セシリー嬢。トイレなら3階にもあるぞ」


「……いえ……あの……」


国王が声をかけると、3階に上がる階段からチラチラとこちらを伺っている令嬢が反応した。


「いいかねセシリー嬢……男というものは基本的に裸族なんじゃ……(ハダカ)(ゾク)と書いて裸族じゃ……キミのお父さんやお爺さんだって、本当は風呂上がりには何もかもさらけ出したいのじゃ……それを良心という名のパンツ一枚で、なんとか我慢しておるのじゃよ……」


「あの、恐れ入ります……少しお話がしたいので、何か纏っていただけませんか……!」


セシリーが死にそうな声で言うので、国王はしぶしぶ寝巻きを着た。男女兼用の頭から被るダボっとしたタイプだった。


「ありがとうございます、国王陛下」


ようやく落ち着いたセシリーが、同じく寝巻き姿でそばの椅子に座った。少し恥ずかしいのか、しきりに腕を擦っていた。


「湯冷めすると良くないでな、手早く済ませようか。話とは何じゃな?」


国王は優しく聞いた。

セシリーは姿勢を正して国王に向かおうとしたが、ふと訝しげな顔をして、目線を上げた。


「?何じゃな?」


「あ、失礼いたしました陛下……その、王冠は外されないのかな?と思いまして」


湯上がりなのに王冠を被ったままの国王に対し、疑問を抱いたらしい。

国王は「あー……」と唸って、セシリーに向かってちょいちょいと手招きした。

「?」となって近付いた彼女は、国王が指差す王冠部分をよく見て、ヒェッと声を上げた。


「こっ、国王陛下、これ、頭皮に癒着してるじゃないですか?!」


セシリーは両手で口を覆った。


「うん、ワシ、呪われとるからね。ていうか、ウチの国の歴代の国王は、みんなこんな感じじゃからね」


国王は「これをエリシア嬢に見せた時はスッゴい引っ張られて、痛い痛い!いやぁお願いもう許して!とか叫んでしまって、犬のウンコ見るみたいな目で見られたものじゃ」とかフランクに話していたが、セシリーは、初めて聞く王族の秘密におののいた。


「そんなお話、王妃教育でも聞かされてませんでしたわ……」


「そりゃそうじゃろ。こういう話は王太子が即位の儀を迎える前に、王妃から王太子妃に伝えるものじゃ。結婚前に話したら『なにそれきもっ』て逃げられてしまうからな」


国王の話はにべもなかった。


「昔、我が国が侵略戦争に明け暮れていた頃にな、隣国の王族を和平交渉と欺いて呼び出して、サックリやったことがあってのう。国の財政は潤ったんじゃが、バッチシ呪われてしまったんじゃ」


隣国は良質な黄金を産出する鉱山を持っていた。

全ての金を略奪し、凱旋した当時の王は、200日後に死んだ。夜毎悪夢にうなされて、最後は髪は抜け落ち幽鬼のごとく痩せ衰えていたという。

すぐさま王太子を国王に立てたが、同じように死んでしまった。

それで、すでに引退していた先々代の王、上王ブレンダンが、呪いを解く方法を神に問うたところ、隣国から奪った金を使って、玉座と王冠を作るよう託宣があった。

すぐさまその通りにして、2番目の王子に黄金の王冠を被せ、黄金の玉座で戴冠式を行うと、新王は悪夢にうなされることなく、長生きするようになったという。


「以来、この国の王は必ずこの王冠を被るのじゃ。外すとたちまち悪夢に取り憑かれるからのう。その内、王冠は頭皮と癒着し、物理的に外れなくなるのじゃよ……」


イーヒヒヒと国王は脅かすように笑った。

しかしセシリーは受け流した、


「そうだったのですね……もし王冠が外れたら、王冠の通りにハゲになっているのでしょうか?」


真面目な顔で聞かれ、アッウンソウダネと国王は片言で返した。キャー怖い!とかいう反応を期待していたのに。


「200日経って自動的に退位になったら、王冠や呪いはどうなるのですか?」


「あー、それは文献によると、鹿のツノが生え変わるようにボロッと取れるそうじゃ。そうなればワシはもう国王の資格はなくなるし、悪夢の呪いからも解き放たれる。冠のキワが痒くてたまらん時もバリバリ掻けるし、シャンプーもリンスも楽チンにできるようになるのじゃ!帽子もオシャレなのが被れる!ワシ、シルクハットが憧れだったのじゃ!」


国王は力説した。呪い返しの重要なアイテムだとしても、これまで様々な苦労があったようだ。


「……では国王陛下は、クーデターを起こそうとしているカディス様達を、わざと見逃したということでよろしいですか?」


セシリーの問いに、国王は目を見開いた。


「なんでそう思うのじゃ?」


逆に国王が問うた。


「だって、今の国王陛下は、とても生き生きとしておられますもの。謁見の間でお見かけした時とは、まるで別人のようです。恐れながら、国王としてのお立場も、公務も、王冠の呪いも、もう限界だと思っていらしたのでは?それで陛下は、カディス様の企みを利用して、早期の譲位を図られたのでは、と」


セシリーは語った。


「国王陛下は、これまで真面目に公務をこなされて来られて、特に失策もなく、国民の王室への信頼が高い状態です。国際情勢が平和で、国庫にゆとりもある今なら、多少ボンクラのカディス様が王位に就いても、なんとかなるでしょう。むしろ今しかない。この先、金鉱脈が枯渇して財政が苦しくなったら、譲位だの何だのは難しくなります。ですから、とっとと王位を譲って経験を積ませてから、国難に立ち向かって貰おうとお思いになられたのでは?……と、愚考いたしました」


スラスラと話すセシリーに、国王は「今、王太子のことボンクラって言った……?」と少し震えた。


「さすがセシリー嬢……王妃教育は伊達じゃないのう。金山の産出が目減りし始めていることに気付いておったか。まあそれもあるが……」


国王はヒゲをちょいちょいひねった。


「言ったじゃろ?ワシはこの世界が『乙女ゲーム』を元にした世界だと知っていた、と。で、逆ハーエンドになった場合の情勢を、リアルに考えてみたんじゃ。そんな事がまかり通る段階で、国の上層部は終わっとる。カディスは傀儡としていいように使われるだけじゃろうな、と」


セシリーは頷いた。

悪役令嬢とされる者達の実家は、古くから王室に忠誠を捧げ、磐石たる地位を築き上げてきた名家だった。元婚約者達が婚姻によりその力を手に入れることはできても、あくまで婚家頼りの権力。

……ならば全て覆してしまえと、彼らの一族は考えたのか。


「それで国が栄えるならよいが、果たしてどうなるか……ワシはちょっと傍観してみたいんじゃよ。ハッピッピ☆で終わった逆ハーエンドの向こうに何があるのかをな」


国王はふっと笑みを浮かべた。

セシリーはその笑みに不吉なものを感じて、背筋がざわついた。



お待たせしましてすいません…。

連載は、ある程度書き留めてから一気に上げないと詰まると知りました…精進します…!

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