国王陛下のオッサン飯
ご飯タイムです。
「まあまあ、セシリー嬢もそんなじゃらじゃらアクセサリーやらなんやら付けてたら重たいじゃろ。顔洗って着替えてきたらどうかな?上にいろいろあるから」
国王がそう言うと、エリシア嬢が手を上げた。
「はい!私が付き添います!学園卒業したら侍女として働くつもりだったんで、高貴なご令嬢のお世話なら任せてください!」
「おお、ほんじゃエリシア嬢に頼むかな。ワシはご飯したくしてるから、終わったら降りといで」
はーいと気軽に返事をするエリシア嬢の横で、セシリーは硬直した。
……国王が?ご飯のしたく?そういえば初めて見た時からピンクのエプロンをしていたような。右手にお玉も持っていたような…?
呆然としているセシリーを連れて、エリシア嬢は「1名さまご案内ー」とか言いながら3階への階段を登った。
‡‡‡
3階には、ベッドとドレッサー、クローゼットがいくつか並んでいた。洗面台もあった。
セシリーは、エリシア嬢が持ってきてくれた盥のぬるま湯で顔を洗って、化粧を完全に落とした。汗と涙でどろどろだったので、さっぱりした。
粗末な白布でしずくを拭き取り、手伝ってもらいながら髪飾りやイヤリング、ネックレスを外し、髪の毛を下ろした。エリシア嬢が丁寧にアクセサリー類を紙で出来た箱に入れて、セシリーの髪をブラシで整えて、後ろでまとめて簡素なゴム紐で結わえた。
「さあ、ここからが本番ですよ……」
エリシア嬢が気合いを入れて、ドレスの『解体』に取りかかった。
なんせセシリーは公爵令嬢である。ここにいるどの令嬢よりも身分が高く、まして学園生活のいちばんの晴れ舞台である、卒業パーティーのドレスだ。「もはや鎧……」と小声で言いながら、なんとかコルセットまで外した。
クローゼットから白のシンプルなワンピースを出してきて、セシリーに渡す。
「これ、1人で着られるように前ボタンなんですよ」
エリシア嬢の介添えですっかり着替えを済ませたセシリーは、おずおずとお礼を言った。
「あの……ありがとうございます、エルモア子爵令嬢」
「やだなあ、エリシアと呼んでくださいよ、婚約破棄&幽閉仲間じゃないですか!私もセシリー様とお呼びさせていただきますね!」
明るく言われて、セシリーはようやくわずかに頬に笑みが浮かんだ。さっきまでガッチガチだったのだ。
さあご飯にしましょう!とエリシア嬢に誘われ、階下に降りると、メリッサ嬢とシャーリー嬢が部屋の中央のテーブルに食器を準備していた。
2階は端っこにキッチンがあって、鍋がいくつか並んでいる。いい匂いがする。
「あら、可愛いじゃない。前から思ってたけど、セシリー嬢は普段着てるゴテゴテのドレスより、そういうシンプルな系統の方が似合うわよ?」
シャーリー嬢がセシリーを見て言った。
彼女は学園でも評判のオシャレさんだったので、セシリーは「そ、そうかしら?ありがとう」と自分の着ているワンピースを見た。確かに綿で出来ているであろう白い服は、着心地も含めて今まででいちばんしっくりしている気がする。
「……さて、セシリー・マードック公爵令嬢よ」
国王が真面目な顔で聞いてきた。
「っ、は、はい、国王陛下」
セシリーは反射的にその場でひざまづいた。
「シチューとカレーと肉じゃが、どれ食べる?」
「は?」
ぽかんとしたセシリーに、国王は続けた。
「いや、ある日ワシは気付いてしまったんじゃよ……肉と玉ねぎとニンジンとじゃがいも入れるまでは、全てのレシピは一緒だということにな!」
なんか1人で盛り上がりだした。
「ならばあとは、仕上げにカレールー入れるかシチュールー入れるか砂糖醤油入れるかで三通りの料理ができる……!ワシはこれを『三位一体改革"トリニティレボリューション"』と呼ぶことにした!」
「国王陛下、じゃあ私シチューいただきますね」
「私カレー」
熱弁を奮うオッサンの後ろで、エリシア嬢とシャーリー嬢が自分の持っている皿に鍋からそれぞれついだ。
「ああっ……コルレット様、それは……?」
メリッサ嬢が目を見開いてコルレット嬢を見た。
「どっちも食べたかったから……」
彼女の皿は、半分シチュー、半分カレーという状態になっていた。
「おおっ……あれぞ伝説の盛り方、『二色丼"ハーフ&ハーフ"』……!コルレット嬢もだいぶここに馴染んできたのう」
うんうんと頷く国王陛下の前で、セシリーはいつまでひざまづいてればいいのかなあとかぼんやり考え出した。
ダラダラ書いてたらなんか長くなってしまいました。ちょっとペースを上げようと思います。