王様と悪役令嬢
登場人物紹介です。
長いです。
「まあまあ、そう畏まらんでええよ。ご覧の通り、ワシも幽閉された身だし」
土下座する勢いで頭を下げたセシリーに、呑気に国王が声をかけた。
びくびくしながら顔を上げると、ニコニコ笑う国王と、何人かの少女たちが並んでいた。
「あなたもここに入れられちゃったんだね……」
労るように声をかけてきた少女には見覚えがあった。
「えっ……メリッサ・ハヴィス侯爵令嬢?!」
セシリーは声を上げた。
髪の毛はシンプルに後ろでひとつにまとめただけ、化粧もしておらず簡素なワンピースを着ているだけの彼女は、間違いなく元クラスメートの侯爵令嬢だった。
他にも、コルレット・アンブロシア侯爵令嬢、エリシア・エルモア子爵令嬢、シャーリー・オランダ伯爵令嬢など、見慣れた顔触れが揃っている。みな似たようなシンプルな格好をしていた。
「あなた方は、確か……」
震えながらセシリーが言うと、キツめの顔立ちのエリシア嬢がハンッと鼻で笑った。
「そうよ。私たちみんな、婚約破棄されて幽閉されたのよ。あの忌々しいマリー・ゴールド準男爵令嬢のせいでね!!」
そうだ、彼女たちはそれぞれ高位貴族であり、将来を有望視されたイケメンの婚約者がいたはずだった。
しかし、彼らはマリー・ゴールド準男爵令嬢に次々と籠落され、ここ半年足らずの内に全員婚約破棄し、醜い嫉妬でか弱い令嬢をいじめたという容疑ひとつだけで、元婚約者を塔にぶち込んだのだ。
エリシア嬢はパァンと右の拳を左の手のひらに叩きつけ、ギリィッと歯を食い縛る。
「まあいちばん悪いのは、あんなのにコロッと引っ掛かったウチの元婚約者だけどね。あのヒョロ茄子野郎、今に見てなさいよ…!」
彼女のお相手はロイク・ドット。騎士団長の息子だ。
このメンバーの中ではいちばん早くマリー嬢に陥落した脳筋野郎である。
というか、半年前にはすでに王太子含めて全員攻略済みであって、半年かけてゆっくり婚約破棄・断罪を進めていたのだろう。でなければ、騎士爵の息子ごときが子爵令嬢の彼女を幽閉できるわけがない。
バックで王太子が関わっていたはすだ。
「本当に、パトリス様もねぇ……私の家に婿に入る予定だったのに、一代限りの準男爵家令嬢に言い寄って、どうする気だったのかしら?父親みたいに教員にでもなるつもりだったのかしら。たいして勉強できないのにね?」
シャーリー嬢が首を捻りながら言った。
彼女はエリシア嬢の次に、同じ経緯でここに入れられた。
「うーん、その点からすると私の場合はまだわかるんだよね。あの人、既に神官資格持ってたし。ただ、一介の神官風情がハヴィス侯爵家に反感買うのって、得策じゃないと思うんだよなあ」
メリッサ嬢も釈然としない様子で言った。
彼女のお相手は、神官長の息子のリュカ・キルネン。
パトリスに続くように婚約破棄を突き付けてきたので、メリッサ嬢は呆れて自分からここに来た。
「わたくしはいまだに信じられませんわ……あの聡明なアダン様が、わたくしを見棄てられるなんて……」
悲しげに瞳を揺らすコルレット嬢のお相手は、宰相の息子のアダン・セファード。切れ者と名高い彼が、何故安易に準男爵令嬢などに思いを寄せたのか。
彼女が婚約を破棄されたのは、卒業式前の2月、聖バレンチヌス祭の真っ最中だった。
「皆さん……」
セシリーは、言葉もなく彼女たちを見つめた。
「うわぁ、登場人物が多過ぎてわけわかんない……」
後ろでピンクエプロンの国王がボソッと呟いていたが、セシリーには聞こえなかったようだった。
すいません、オッサンは次回からぐだぐだします。