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96:剣王編⑪嫉妬のファーラVSヴィクトリア

 対峙する嫉妬のファーラ率いるヴァジュラマ教徒と聖女モネとヴィクトリアとフランシスコの部下共のアスワン教徒。


 嫉妬のファーラを守るように配置された黒剣装備の剣王が異様な迫力を放っている。


「やべえよ。あいつらやべえよ。強者の圧が半端ないっすよ!」


「他の四大魔の力を使えるとか反則だろ!」


「おい!ファーラ!お前!あれだぞ!死者への冒涜は倫理的にあれだぞ!」


 フランシスコの部下共が取り乱している。


「恐ろしいでしょう。恐ろしいでしょう。時代の最強達が今あなた達に牙を剥くのよ!あなた達じゃあ手も足も出ないわ!」


 その様子を見てファーラが得意げに笑う。


「でもこの剣王ゾンビぃ、更に強くなるのぉ!」


 剣王ゾンビたちに手をかざし、ファーラは唱える。


『燃えろ!』


 ファーラの言葉とともに憤怒のカイバスの青炎が剣王ゾンビ達の剣に纏い付く。


「この青炎は燃え尽くすまで消えない地獄の業火。どんな物質も触れれば焼き尽くすわ!この黒剣以外はね!防御不可の三剣王の攻勢をあなた達に耐えられるかしら?あははっははあああ!」


 身体をのけぞらせ、天を仰ぎ哄笑する。ファーラは勝利を確信しているようだった。


「うっわ悪夢の共演!」


「ファーラ半端ないってぇ!」


 そして更にうろたえるフランシスコの部下共。騒々しく落ち着かない。


「ヴィクトリアさん」


「うん!」


 そんななかモネとヴィクトリアの二人は落ち着いていた。


「あらあ?何をスカしているのかしらあ?力の差が理解出来ないのぉ?それとも虚勢をはっているのかしらあ?健気だわあ!」


 満面の笑みで煽るファーラ。


『超神体』


 聖女モネの加護を受けたヴィクトリアは力に意識を集中する。


「はえ?」


 ファーラは膨張したヴィクトリアの剣気と加護の力の奔流に思わず声を漏らす。


「ちょちょちょ待って!なにその力!そんなの聞いてない聞いてない!」


 ヴィクトリアは構わず、力を剣に集める。


「ちょっ、ちょ待てよぉ!」


 ファーラが懇願にも似た声を上げるがヴィクトリアには届かない。


 今のヴィクトリアはアスワン教徒一強い力を持つ聖女の加護を受けている。リッチーを倒したときの比ではない力が宿っている。その力の奔流は容易に目視できるほど。天へと立ち上るそれが白亜の剣へと収束する。


『白夜光』


 ヴィクトリアが光放つ白亜の剣を振り下ろす。


「うぎゃああああああ!」


 歴代剣王のゾンビは何も出来ず力の奔流に呑まれ消えた。ファーラを筆頭としたヴァジュラマ教徒達も再起不能の一撃を受けた。


「ふう。口ほどにもなかったですね。それにしても流石です、ヴィクトリアさん」


「お嬢様のおかげだよ!でももったいないことしたぁ。我、剣王の技を体験しそこねたよ」


 ヴィクトリアは表情をほころばせ、額に浮かぶ汗を拭いながらモネに返答する。


 そんなヴィクトリアとモネのもとにフランシスコの部下達がわらわらと寄ってきた。


「聖女様、嬢ちゃんやりましたね!」


「俺たち最初からなんの心配もしてませんでした!」


「これが絆の力ってやつですかね?」


 盛り上がる調子のいい部下共にヴィクトリアが「個人の力だよ」と無情に告げる。


 視界のヴァジュラマ教徒が白夜光で戦闘不能、一段落したかのような雰囲気が漂いかけたその時。


「があああ!何しやがる!」


「ぶはあ、死ぬかと思いました。」


 白夜光の軌道跡。その先から声がした。


「殺るならヴァジュラマ教徒だけにしろ!」


「この状況は死んでたほうがマシでしたかね」


 激高するフランシスコと諦めの表情を浮かべるヘイムが傷だらけで立ちあがった。








 ミカルゲとブイガノンの戦いは一方的な展開を見せていた。


 ブイガノンははじめ、ミカルゲを仲間に引き込もうとしていた。それ故に手加減をしていた。一度断られても勧誘を諦めなかった。しかし、二度目も断られ、いよいよ味方に引き込むことを諦め、本気でミカルゲ達を殺すべく、力を振るっていた。


 その結果、僅かな時間でミカルゲは満身創痍に陥った。


 何度も黒き大槌の直撃を受け、吹き飛ばされた。戦場を大きく移動し、剣士の里とか隠れ里との境目にまで侵入してきてしまっている。大きな屋敷が視界に入る。


「ぐっ、まさかここまで力の差があろうとはね」


「なんだ?やはり寝返る気になったか?」


「まさか」


 ミカルゲの仲間たちの多くもミカルゲを追い、それをヴァジュラマ教徒達が追ってきて、普段静かな里境がにわかに騒々しくなっていた。


 更にブイガノンの戦闘は非常に荒々しく、大地は揺れ、そして破壊音が鳴り響く。


「君の戦いは派手で騒々し過ぎる。」


「だからなんだ?」


「虎の尾を踏んだということさ」


「なんだ?奥の手でもあるのか」


 怪訝な顔で警戒するブイガノンにミカルゲは不敵な顔で応える。


「ああ。お前もこれで終わりだ!」


 ちょうどその時、里境の大きな屋敷の戸がばんと大きな音を立てて開いた。中からは上半身裸の男。


「誰だ。俺の神聖な営みを邪魔するのは」


 夜の営みを邪魔され、怒り猛るヴォークトだった。


「うるせえんだよ!女共が怖がってやることやれねえんだ!」


「ヴォークト!こいつのせいだ!こいつが諸悪の原因だ!」


 ミカルゲはブイガノンを指差し叫んだ。ギラついたヴォークトの視線がブイガノンを貫く。さしものブイガノンも気圧される。


「貴様!奥の手というのはこのことか!?」


「ふははは!ヴォークトは性欲が溜まれば溜まるほど強い。貴様に勝ち目はないぞブイガノン!」


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