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88:剣王編③少女剣士VSブルーノ


 ヴィクトリアとスネイルの戦いが終わり、すぐにブルーノとマクファーソンの戦いが行われた。


 ヴィクトリアも余裕のある勝利だったが、ブルーノは圧倒的な勝利を収めた。


 マクファーソンが弱かったかといえばそんなことはなく、剣王に名乗りを上げるだけの力を有していることは誰の目にも明らかだった。


 しかし、ブルーノはマクファーソンの繰り出す攻撃をすべて見切り、躱した。マクファーソンの持てる力のすべてを引き出し、叩き潰した。


 マクファーソンが降参し、うなだれる中、ブルーノは薄く微笑むだけだった。


 そこには残酷な力の差があった。




「おいおいおいおい。あいつめっちゃ強いじゃん」


「まあまあだね。我の方が強いけど。まあまあだね」


「おい!ホントだろうな!顔引きつってんぞ!」


「引きつってないよ!ちょっとこわばってるだけだよ!」


「引きつってんじゃねえか!」


 ブルーノの戦いを見終わって、思わず俺は少女剣士に声をかけた。


 あいつめっちゃ強いじゃん。お前勝てんの。


「お頭、意外と優しいとこあるんすね。嬢ちゃんの緊張をほぐそうとしてやってんすね。」


 部下が涙を拭いながらそんなことを言ってきた。


「いやー、我は違うと思うなぁ」


 少女剣士は苦笑しながらそんなことを言う。


「この男がそんな気遣いができると思うか」


 とアイギス。


「フランシスコのことですから、ヴィクトリアさんが剣王になることで得られるコネと教会内での立場に目がくらんでるだけでしょうね。」


 モネが笑う。


「お前ら…」


 好き勝手言いやがって。まあ、そのとおりなんだが、他人に言われると釈然としない。


「お頭…」


 長い付き合いのくせに俺のことを少しもわかってない部下が白けた視線を送ってくる。


「勝利を願う俺の思いに曇りはない。それ以上に大事なことがあるか!?」


「疑ってたからあんなに慌ててたわけですが」


「こんな男のことは無視しろ。ブルーノは強敵だが、ヴィクトリアも決して劣っておらん。」


「うん。ありがとうアイギスさん!」


「ハクモ。ヴィクトリアさんに言うことはありますか。」


 ハクモはモネに促され、ヴィクトリアの前に進み出た。


 皆の視線をあびながら口を開く。


「頑張って。」


「がんばる!」


 ヴィクトリアは鼻息荒く戦いの舞台へと向かった。


「おい。ハクモは置いていけ」


「あ、ごめん思わず。」


「……」


 少女剣士は勢いに向かせて抱きかかえたハクモを元いた場所に戻し、改めて戦いの場へ向かった。







 破壊され、足場の悪くなった舞台の上で、二人にらみ合う。


「まさかこんなに早く、ここまであなたが強くなるとは思いませんでしたよ。ヴィクトリア」


「我にビビってるの?」


 不敵な笑みを浮かべ煽るヴィクトリア。


「ええ。あなたにはわからないかもしれませんが、下から追い上げてくる若手というのは怖いものなんですよ。ですが、ここで芽を摘む機会を得られたのは僥倖です。」


「ブルーノだって我とそんなに年変わらないじゃん!」


「今までは自分より弱い者は見下して馬鹿にし、自分より強いものは経験の差だと言い訳が出来たのに、あなた相手だとそういう言い訳が出来ないということです。怖いと思いませんか?」


「意外と女々しいんだね」


「ええそうなんです。女々しいんです。だから勝ちに行かせてもらいますよ!」


「こっちはもとから勝つ気だよ!」


 立合い人の合図とともに戦いが始まった。


「あなた相手に小手調べはいりませんね。奥義・流体」


「やっぱり、ブルーノも体得してた。奥義・流体」


 存在を知る者が限られ、習得している者は更に限られる流体。


 ブルーノは先程のマクファーソン師範代との戦いで流体を使わなかった。


 だが、ヴォークトの最有力の弟子であるブルーノが流体を使えないとは考えにくい。


 流体を使用されることは想定済みのことだった。


 互いに膨れ上がった剣気を制御し、剣を重ねる。


 ヴィクトリアは少しでも戦い優位に運ぶため、ヴォークトから教わった。鞭のようにしなる斬撃を織り交ぜ、攻撃のタイミングをつかめないようにしているが、ブルーノには通じない。


「ヴォークト師範と何度も手合わせしている私にその技は通用しませんよ!次はこちらです」


 ブルーノは流体の瞬体の度合いを大きく高め、一瞬でヴィクトリアの懐に潜り込んできた。


 もはや互いに剣の間合いではない。


 ヴィクトリアが瞬時に肘撃ちを見舞うも、ブルーノは体を後方に倒し避け、そのまま足を真上に振り上げヴィクトリアの利き腕を強く打ち付けた。


「ぐっ」


「あなたも剣の間合いのさらに内側での戦いにそこそこ精通しているように思いますが、私もその間合いを得意としています。さて、勝負です。」


 ブルーノは再度ヴィクトリアの懐に潜り込んできた。


 ブルーノはその速度だけではなく、特殊な歩法をも使って間合いを測りにくくしている。


 あっさり懐に入り込まれたヴィクトリアは未だ痛む利き腕をかばいながら、体勢を低くし、足払いをかける。


 ブルーノは迫るヴィクトリアの足を逆に踏みつけようとするもそれは避けられた。


 だが、その踏み込みを利用して体重の乗った拳を振るいヴィクトリアの顔面を殴りつけた。


「ぐあっ」


 ヴィクトリアは殴られたのも構わず、反撃になぎ払いを見舞ったが、ブルーノに余裕を持って避けられてしまった。


「はははは!とっさに剣気を顔に集めて防ぎましたか!流石ですね!一歩間違えれば首が飛んでましたよ!しかもそのまま反撃してくるとは胆力がすごいですね!」


「余裕ぶるのも今のうちだよ。」


 ヴィクトリアは剣と鞘を構え、体勢低く、突進した。


 ブルーノに迫る直前、壊れた舞台を鞘でたたき、砂埃を巻き上げ、礫を飛ばした。


 ヴィクトリアは砂埃に身を隠しながら同じことを続ける。


「こういう戦い方もできるんですね!ですがジリ貧ですよ。」


 だが、その瞬間、巨大な岩塊が飛んできた。


「なにっ!?」


 ヴィクトリアは砂埃と礫を飛ばしながら壊れた舞台から大きな塊を掘り出していたのだ。


 岩塊は視界を塞ぎ、ヴィクトリアの影すら追えない。


 ブルーノは迫る岩塊に、避けるか斬って防ぐか選択を迫られる。


 ブルーノは足を止め、斬って防ぐことを選んだ。そのほうが次撃への対応がしやすいからだ。


 迫る岩塊を斬り裂き、どこからヴィクトリアが攻撃を仕掛けてくるかと意識を移行した。


「せいやあああ!」


 だが、予想外なことにヴィクトリアの咆哮とともに新たな岩塊が正面から間隙なく迫っていた。大きく虚をつかれた。


 ブルーノの足はすでに止まっている。


 咄嗟に岩塊を斬り裂き防ぐが、今度は左側からヴィクトリアが姿を表した。


「ぐっ」


「食らえ!」


 ヴィクトリアの振り下ろしがブルーノに直撃し、左肩から手首まで大きく切り裂かれた。


「ぐああああああああああ!」


 ブルーノは重傷を負い、悲鳴をあげながらもヴィクトリアの追撃を許さず、距離を取った。


「形勢逆転だよ。」


「はあはあ。不覚を取りましたね。」


 血を流し、左腕を力なく垂らしている。


 だが、それでもブルーノからは降伏の意思は見えない。


 血は流れているが、その量は不自然なほど少ない。剣気の操作である程度流血も抑えることができる。


「降伏したら?」


「しませんよ。面白くなってきたところじゃないですか。」


「意外だね。ブルーノは戦いにそんなに興味がないんだと思ってた。」


「戦いは大好きですよ。ですが戦いは身を滅ぼします。賭博や麻薬なんかよりよっぽど中毒性と依存性がある強烈な快楽です。身を滅ぼしたくはないので普段は抑えていますが、今日は治癒の神聖術が使える神官がいる。遠慮する理由がありませんね。」


 ブルーノは傷を受けていない右腕で構える。


 ブルーノの利き腕は右だ。左腕を負傷してもまだ戦える。


 負傷前と変わらぬ速度でヴィクトリアに迫る。


 ヴィクトリアは舞台を鞘で叩いて礫を飛ばす。


 ブルーノは流血で体力を奪われ続けている。距離を取って時間を稼げば、ヴィクトリアに有利に働く。しかしヴィクトリアは礫を飛ばしながらも、ブルーノへと向かっていった。


「まさかそちらから私の間合いに来てくれるとは思いませんでしたよ。」


「片手で礫を弾きながら戦うのは大変でしょ。すぐに我が追い詰めるよ」


 二人の剣士は互いに笑みを浮かべ、剣を振るった。


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三連休にも次話投稿したいです。出来なかったらすみません。

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