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77:モネの事情2


 アーカードが去り、一応の平穏を取り戻した。


 レミスもどうやらモネとともについてきていたようだが、宿の広間で我かんせずと休憩している。


 少女剣士、ハクモ、部下共は各々の部屋に戻り、個人の時間を過ごしているはずだ。


 今、俺の部屋にはモネとアイギスがいる。


「そういえば、フランシスコ。メイスを壊してしまったそうですね。なので代理の武器を持ってきましたよ。」


 俺のメイス、戒めが破壊されてしまったことは教会に報告済みだ。聖女に伝わっていてもおかしくはないがここまで対応が早いのには驚いた。


 だが、戒めは同型のものがいくつかあったはずだ。代理の必要はないと思われる。


 俺の怪訝な表情を察してモネが言う。


「残念ながらあんな重いもの運べません。運べたとしても移動速度が大幅に落ちてしまいます。」


 モネの言葉に得心し、うなずいているとアイギスが前に出てきて大きな包から2種のメイスを取り出した。


「銘は『正義』と『道徳』です」


 俺が今まで使用してきた『戒め』は二振りで一対のものだったが、そういうメイスは多くない。


「人に暴力を振るうのにこれ以上の名分はありませんよ。なんせ人を最も痛めつけてきた言葉です。」


 メイスの打突部分にはモネの言葉と同様、数多の棘がついている。実に物騒で凶悪な見た目だ。


「また、この銘なら暴行を行っても教義に反しません。正義や道徳は時に痛みを伴うものです。正義の鉄槌というやつですね。」


 皮肉なことに、キラキラとしたなんだが素敵な言葉、世間で良いとされているものほど他人を傷つける武器足り得る。そしてそれを振りかざす本人にはその自覚すらない。


 使用者に痛みを伴わず、相手を傷つけることができる。実に聖務執行官向きの武器の銘だ。


「神官が使う武器としてこの見た目はどうなんだ。」


「教会の所有物として登録していますので、それを批判する者は異端のそしりを免れませんね。」


 そう言うと聖女様はニコリと微笑んだ。


 そして俺は新たなメイスを手に入れた。





 俺のメイスの話が終わり、アイギスは部屋から退室していった。しかし、モネは何故か出ていかず、俺の目の前に座っている。


 モネと俺のふたりきり。


 他に用でもあるのかと俺が問う前に、モネが口を開いた。


「それにしてもフランシスコもこれで既婚者ですね。すでに子もいますしどんどん遠くへ行ってしまいます。」


「結婚を承諾したつもりはない。当事者をおいて勝手に話を進めやがって…。」


「嫌なら止めてくれればいいじゃないですか。てっきりヴィクトリアさんと結婚したいのかと思いました。」


 口を尖らせ何やらすねたような態度を見せるが、それは理不尽だ。


「おい待て。何不機嫌になってんだ!俺は悪くないだろ!お前が話に同意したらなにか意味があると思うだろうが!」


「ムキになるところが怪しい。」


「ガキか!?」


 不覚にも取り乱した俺を見てモネは「フフ」と笑う。


「さて冗談はこれくらいにして本題に入ります。」


「勘弁してくれ。」


「フランシスコ、私に報告すべきことはありませんか。」


 モネが真剣な表情で漠然とした問いを投げかけてきた。俺の目を覗き込み、つぶさな仕草から情報を読み取ろうとしてくる。


「例えば、あなたの恩寵のこと、とか…。」


「…。」


 神聖美幼女から賜った譲渡の恩寵のことが脳裏をよぎる。


 神官の命を代償に古の勇者を産んだ譲渡の恩寵。その力が今俺にはある。


 とはいえ、俺に世のため人のため自らの命を犠牲にするような崇高な意思などあるはずもない。


 よってこの譲渡の恩寵が俺にもたらす不利益について、リスクを負わないよう考えることはあっても不安に感じたり、心配するようなことはなかった。


 だが、そのことを他者に知られるとなると話が変わってくる。ある種の人柱になることを強いられる可能性がある。


 このことを知られることは都合が悪い。しかし、モネがそこまで詳しいことを知っているとは限らない。カマをかけているだけに過ぎない可能性も十分ある。


 こいつは予知夢の恩寵を授かっているが、万能ではない。


「神官の命を代償に神の恩寵あらたかな超常の剣士が生まれると夢をみました。」


「それが俺だと?」


「あなたならやりかねません。」


「勘違いだ。俺はそんなことはしない。」


 沈黙の時間が流れた。モネにより一層目を覗き込まれ、目をそらすことが出来なかった。


 心臓が脈うつ、冷や汗が背筋を伝うのを感じる。


「ふー、そう。ならいいのです。」


 モネは胸をなでおろし、独り言のように呟いた。


「それが確認出来ただけでも私がここに来た意味がありましたね。」


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