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70:迷宮内戦闘⑦

 アバロンを生贄に召喚された死者の王、リッチー。そいつは俺の倍を超える身長があった。黒い靄はリッチーの白骨の体をローブのように覆い隠している。黒い無骨な杖を手にし、強者にしか持ち得ないある種の圧を放っている。


 ひと目でわかった。こいつ俺より強い。


 しかし、何故か動かない。黒杖を掲げ、理解不能な言語を用いて何やら詠唱している様子だった。


 詠唱が完了してしまえば、ろくでもないことが起きることは目に見えている。


 詠唱を止めるため、そしてあわよくば手傷を負わせるため、俺はリッチーに即座に殴り掛かかった。少女剣士も俺と同時に斬りかかっていた。しかし、黒杖の一振りでリッチーの周囲に強固な結界が出現し防がれてしまう。


 ヴァジュラマ教徒を舐めていた。結果論だが、俺のミスだ。


 あいつらは死後の利益を求めて生きる狂人共だ。死をいとわないのがやつらの基本スペックだった。


 欲をかいたのはしかたない。あの時点ではアバロンを生け捕りにするのが最善手だった。ただ、代償術が使用できないよう猿轡でも噛ませておくべきだった。そうすれば今ほど状況は悪くならなかったかもしれない。


 とはいえ反省している場合ではない。


 攻めあぐねている内に戦闘相手のいなくなったハクモたちが駆け寄ってきた。


「なにあれ。」


 ハクモが険しい表情で尋ねてきた。


「神話上の化物リッチーだ。6本首のヒュドラより強いかもしれん。アバロンが自身を代償に召喚しやがった。さっきから何やら詠唱してやがるが、結界に阻まれて攻撃出来ねえ。」


「わかった。私も攻撃してみる。」


 ハクモが浄化の神聖術を使用し、同時に白蛇にリッチー目掛けて特攻させた。俺達よりかは効果がある様子だったが、結界を抜けることは結局出来なかった。


「ちっ、どうするか」


「一度や二度の失敗で諦める我じゃないよ!神話の化け物とたたかう。すなわち新たな伝説の爆誕!死者の王リッチーよ!我の覇道の礎となれ!」


 少女剣士はそう言い、再度勇ましく斬りかかったが、何度試してもリッチーの結界を抜くことが出来ない。技術云々の話ではなく純然たる力が足りていない。


「ぐぬぬ。ならば今度こそ奥義を成功させて…」


 奥義?瞬体だの剛体だの言うやつか?


「それは無理だ。」


 クイが口を挟んだ。


「奥義は丹田に許容量以上の剣気を集め、暴発させることで一時的に限界以上の力を発揮する技術だ。でも女にはそれが出来ない。メヒコ師範代が言うには女は子を宿すから丹田の力の許容上限が大きい。大きすぎるからどれだけ力を集めても暴発させることが出来ないってことらしい。あくまで仮説だけど。だから女は剣王にはなれないって言われてる。奥義が使えないから。」


「むう。我なら出来る!加護だって操れたんだ!奥義だって…。」


「待て。加護を操作しただと?」


 思い付きを口にする。


「なら今から改めてあらゆる加護を与える。それも剣気とまとめて丹田にぶち込め。」


 奥義発動に自前の力で足りないならば、外部から供給してやればいい。都合のいいことに少女剣士は加護の力を操作できるようになっている。


「そんな無茶な…。そもそも奥義だって普通に難しいんすよ。言われて出来るもんじゃない。」


 自身がやるわけでもないのに、情けない顔で泣き言を言うクイ。


「無茶でもやれ。あれを見ろ。無茶せずにどうにかなりそうに見えるか?」


「それは…、たしかに…。」


 俺とて土壇場で新しい試みをしたくはない。しかし、他に手がないからワンチャン賭けてみようぜっつってんだ。


 無茶しなければ到底敵わないのだ。神話の化け物リッチーは。


「面白い!前人未到の領域!我なら出来る!」


 俺とハクモとで分担し神聖術を使用し加護を与える。


 その力を少女剣士は目を閉じ迎えいれた。


 意識すれば俺にも少女剣士に授けた加護の力の流れを知覚することが出来た。


 その力は、腹部に集まり、丹田を満たし。そしてやがて溢れた。


「嘘だろ…。」


 クイとポーロが呆然としている。


「これが、奥義…。」


 爆発的な剣気と加護の力が少女剣士の全身から放出されている。


「いや、加護を用いた我の新しい技、超神体だ!」


 少女剣士はそう言うやいなや、リッチーめがけ、凄まじい速度で突進していった。


 超神体により増大した力を白亜の剣に集め振り下ろす。


『白夜光』


 剣気と加護の力の合わさったその斬撃は白い剣閃を描いてリッチーの結界と衝突した。


 まばゆい光が生じ、爆発の爆音がそれを追いかける。


 光が収まった頃には、すでに少女剣士はリッチーと斬り合い、殺し合っていた。リッチーの結界術は消滅していた。


 一見互角にも見えるが、やはりリッチーのほうが格上だろう。一時は中断していた詠唱を、戦いながらも再開させている。更に結界術とは違う防御術も行使するようだった。


 リッチーの相手は少女剣士一人に任せるには荷が重い。


 勝率の低いギャンブルは好きじゃない。


 勝利を盤石のものにしたい。そのためには戦いに加わり援護するのが一番いいが、戦闘力があまりに劣る者は却って足手まといになる。


 味方で助勢足り得る可能性があるのは俺だけだろう。


 しょうがない。俺もリッチーに向かって駆け出した。


「お頭!?いくらお頭でも危ないよ!?」


 少女剣士がありがたくも助勢に来てやった俺に対して舐めた口をきいてきた。


「誰にもの言ってんだ!お前に出来るということは俺にも出来るということだ!」


 何年神聖術を行使し加護を身に纏ってきたと思ってる。その扱いならば少女剣士よりも俺に分がある。


 丹田とやらに力を集めオーバーフローさせることで通常以上の力を発揮できるならば、その技術は俺にも使用可能なはずだ。


「喰らえ!」


 加護の力が増大し、限界を超えて強化された俺の拳はリッチーの防御術を貫き、本体にダメージを与えた。


 剣気が無くとも発動するかどうか未知数だったが、結果はごらんのとおりだ。


 こんな力の使い方があったとはな!


「うわっ!?お頭も超神体習得したの!?リッチーは我の獲物だからね!止めは我が刺すからね!?」


「超神体じゃねえ!俺には剣気は扱えないからな!強いて言えばこれは純神体だ!」


 超神体は剣気と加護の力の合わさった技だ。


 加護の力のみで成し得たこれは、残念ながら超神体とは言えないだろう。


 ゆえに「純神体」と名付けよう。


 兎にも角にも、俺はまた一つ強くなった!


 成長を実感するなどいつぶりだろうか。気分が高揚している。


「リッチーのとどめは早いもん勝ちだ!そして手柄をたてるのはこの俺だ!」


 普段ならリッチーの止めを誰が刺すかなんて気にしないが、今の俺は興が乗っている。


 力が充実し、全能感に酔いしれている。


 リッチーにとどめをさすために、久々に覚悟の必要なあの技をやる。力を足腰、腕、そして拳に流し込み放つ。


「食らえ!解放骨折パンチ!」





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[良い点] 力さえあれば訓練も無しにぶっつけ本番で十全に発揮できる…これだから天才は。(褒めてます)
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