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68:迷宮内戦闘⑤


 真奥・超越体により、メヒコゾンビは瞬体と剛体を併せ持った力を発揮している。


 ヴィクトリアは今までは目視することさえ叶わなかったその動きを、加護の力を目に集中させることでメヒコゾンビの動きが目で追えるようになった。


 今まで、急所をかばっていたのとは反対に、手足に力を集中させる。


 先の戦いと違い、動きを目で追える。ならば、躱すことが出来る。


 極限の集中が必要だが、今のヴィクトリアにはそれが可能だったし、そうすることでしか勝利を掴むことが出来ない。


 時間をかければメヒコゾンビは力を使い果たし、勝手に朽ちていくだろう。しかし、それを容易に許すメヒコゾンビではない。


 彼我の距離を考えると、時間稼ぎは却って隙を晒すことにもなりかねない。


 時代と共に洗練されてきた殺しの御業。


 修めた技術の数も、その熟練度もヴィクトリアは劣る。


 切り裂くための新しいインスピレーションが必要だ。


 出来なければ死あるのみ。


 血が沸き立ち、筋肉が躍動する。神経の一本一本、末端から末端まですべてが支配下にある感覚。


 意識はメヒコゾンビただ一人のみに向けられているが、視界は広がっている。


 死への恐怖が適度な緊張感となって背中を押す。極限の集中状態へとヴィクトリアを誘う。


 メヒコゾンビが圧倒的剣気で剣の射程を伸ばしたのと同様に、ヴィクトリアもまた自身の剣気と加護の力を凝縮し、剣撃を伸ばす。


 結果、息もつかせぬ攻防のなか、ヴィクトリアはメヒコゾンビの左腕を切り落とした。


 しかし、黒ずんだ体液が飛び散り、ヴィクトリアの視界を奪う。


 痛みを感じないメヒコゾンビはひるむことなく、ヴィクトリアのその隙目掛けて会心の刺突を放った。


 ヴィクトリアの戦闘における予測と反射速度は突出して優れている。それは晒した隙を補って余りある。


 刺突を紙一重で躱し、伸びきったメヒコゾンビの肘関節を黒剣ごと切り落とした。


「ぐるうううあああああ」


 痛覚のないはずのメヒコゾンビが咆哮を上げた。切り落とされた黒剣はトカゲのしっぽのようにのたうち回る。


 そうした一切合切を無視してヴィクトリアは剣を振るった。白亜の剣はメヒコゾンビの首を捕らえ、斬り飛ばした。


 メヒコゾンビは苦悶の表情で「ちくしょう」とつぶやき、動かなくなった。


 ヴィクトリアがメヒコゾンビの討滅を確認し、そして勝鬨を上げようとしたまさにその時、


「動くな!こいつがどうなってもいいのか!」


 フランシスコの大声が耳に飛び込んできた。







 メイス戒めに忌々しい青炎を灯し、逆襲とばかりに殴り掛かってみたが、そううまくはいかなかった。


 打開策になると期待していた。形勢が逆転したかのように感じていた。しかしそれも一瞬のことだった。


 治癒の速度も遅くなり、頭痛も始まってきた。


 神聖術使用の限界が訪れようとしている。


 重さと頑丈さだけが取り柄だった俺のメイス戒めは青炎に焼かれ、その丈を半分ほどにまで縮められてしまった。


 それにもかかわらず、俺は未だアバロンとカイバス、そのいずれにも攻撃を当てることが出来ずにいる。


「つれねえなぁ!俺はただお前達に同じ経験をしてほしいだけなんだ。お前たちがくれたこの貴重な経験を分かち合いたいんだ。」


 俺はただ、生きたまま火にあぶられる苦しみを分かち合いたいだけなのに。どうしてわかってくれないんだ。


 俺の悲壮な叫びは奴らには通じないようだった。


「うるせえ!独りで苦しんでろ!クソが!言葉尻だけ聞くと良い事言ってるように聞こえるのが腹立つ。こいつまだ結構余裕あるんじゃねえの?」


 アバロンが悪態をつく。口の悪い野郎だ。


 神は苦しみは分かち合うものと説いていたはずだが、さすが異教徒、そうは問屋がおろさない。


 短くなった炎灯るメイスを振り回し続けているが、まるで当たらない。


 だが逆に二人の攻撃は致命傷ではないものの命中し、俺に消耗を強いている。


 今更ながら2対1とか卑怯だろ。


 悪化していく状況に歯噛みする。


 まずい。まずいぞ。


 時間稼ぎとか言ってる場合ではなくなってきている。神聖術の使用限界が近いということは、俺の負傷が治癒されなくなるのも近いということだ。


 アバロンもカイバスもはじめは頭に血が上っていたが、今は落ち着いている。なかなか隙を晒してはくれない。


 どうする。どうする。


 焦燥とともに周囲の状況を確認する。


 ハクモは順調に闇の眷属のゾンビを駆逐しているようだ。しかしクイとポーロがボロボロで追い詰められているのが気になるところだ。二人がどうなってもかまわないが、奴らが倒れれば戦線に穴が出来る。その影響は全体に及ぶだろう。順調に見えて、一つ何かを間違えれば総崩れになる可能性もはらんでいる。助勢を求めるのは難しいだろう。


 祈るような気持ちで少女剣士へと視線を移す。


 丁度メヒコゾンビの生首が宙を舞うところだった。デカした!


 神よ。今度こそ俺を救い給え!


 俺は状況を打開すべく咄嗟に懐に手を入れ、切り札を取りだし、叫んだ。


「動くな!こいつがどうなってもいいのか!」


 神聖な力を放つ聖遺物。


 俺は迷宮を聖域に変える実験のために持参した女神像を両手で高々と掲げ、言葉を続けた。


「おっと動くなよ。動いたらこの女神像がボンだ。迷宮丸ごと神聖な力の暴走で吹き飛ぶぞ。」


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[気になる点] >戦闘における予測と反射速度は師範代の中にあってさえ、ヴィクトリアは卓越している。 ここの文、伝えたいことは分かるんだけど文章がちょっとおかしい?
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