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65:迷宮内戦闘②


「こいつ、やはり知っているな。」


 俺がもしやと思って口にしたことが、運よく的を射ていたようだ。


「おいおいおいおい。素敵な反応をしてくれるなぁ!ってことはあれか?ここにはヴァジュラマ像があって、俺にはそれを封印する術があると。つまりはそういうことかぁ?」


 俺が口にしたのはあくまで俺の推論だ。論理の飛躍だ。確信を持つに足る証拠はないが、確かにアバロンとカイバスは苦渋の表情を浮かべている。


 奴らの様子からしてヴァジュラマ像のことを俺に知られたくなかった。しかし、どこからかヴァジュラマ像を封印する方法があると聞いていて、やけに強力な神聖性を発する俺に確認せずにはいられなかったというところだろうか。


 神聖美幼女の話だと、ヴァジュラマ像は破壊するとヴァジュラマの力が解放され、ヴァジュラマ教徒の力が強まるということだった。


 ということは、こいつらの目的はヴァジュラマ像を破壊することのはず。


 しかし、奴らは像の封印を恐れている。


 つまりまだヴァジュラマ像は存在している。像がすでに破壊されているなら封印を恐れる必要はないからだ。


 可能性は二つだ。


 予言か何かでヴァジュラマ像があることを知り、探している最中。すでに像が見つかっているなら、さっさと破壊し、力を解放するはずだからだ。


 もしくは、すでにヴァジュラマ像は見つけてあるが、理由があり、破壊をためらっているか。


 今の状態では仮説にしかならないし、どちらの結果でもこいつらを倒してヴァジュラマ像を封印すれば解決する。


 やることは変わらないということが分かった。


 今はこいつらを煽って正常な判断能力を奪えないか試してみよう。機密情報を漏らす、あるいは戦闘に支障が出たりすれば儲けものだ。


「これは良いことを聞いた!下っ端共に聞いても誰もそんなことは教えてはくれなかった!本当にありがとう!君たちはアスワン教に多大な貢献をしてくれた。憎きヴァジュラマ教徒の行動指針がまた一つ判明したよ!」


 両手を広げ、お大袈裟に賛辞を述べてみれば、目論見通りアバロンとカイバスはその眉間のしわをさらに深めさせた。歯を食いしばり、ギリッと歯がこすれる音が聞こえてくる。


 ヴァジュラマ教徒は俺がヴァジュラマ像を生贄の祭壇で破壊した後で力を強めたという話だ。その後、ヨハネという指導者が現れ、統率のとれていなかったヴァジュラマ教徒を一つにまとめた。


 つまり、眼前のこいつら四大魔は強大な力を手に入れてから日が浅いという推論が成り立つ。なんなら四大魔という人の上に立つ立場になることすら初めてかもしれない。


 新たな立場、新たな環境、そして新たな力。それらは精神を不安定にする。


 アバロンもカイバスも年齢的にまだ若く、30代になったかどうかという風貌だ。


 それでも俺よりは年上だが…。


 なんにせよ、以上の推測が正しいならば、付け入るべきはその精神からだ。


「もしかしてアスワン教に改宗したいのか!?なら早くいってくれ!我々にはいつでも君たちを迎え入れる準備がある。なんせ、どれだけ尋問しても聞き出せなかったヴァジュラマ教徒の目的を教えてくれたんだ。四大魔ともあろう者がうっかり口を滑らせるなんて、そんなことよほどの無能でもない限りあるわけがないからね。」


 怒り、悲しみ、苦しみ等強い感情は時に大きな力をもたらすが、同時にひずみをも生じさせる。精神攻撃は聖務執行官になってすぐに教わる基本中の基本だ。当然俺も習得している。


「「殺す!」」


 心からの笑顔を浮かべる俺に対し、気色ばんで斬りかかってくるアバロンとカイバス。


『偉大なるヴァジュラマよ!血を代価に!大いなる力を与えたまえ!』


 祈りにより黒い剣に脈動する赤紫色の線が産まれた。


 剣から発せられる邪悪な気配が肌を刺し、本能が危険を察して鳥肌が立つ。


 四大魔を名乗るだけあって下っ端ヴァジュラマ教徒にはない圧を感じる。


 さすがの俺もこんな奴らを二人同時に相手するのは分が悪い。


 とはいえ幸い、俺は防衛戦と時間稼ぎが得意だ。


 カイバスはともかくアバロンは既に蘇生術を使用し、その力をメヒコと闇の眷属のゾンビに充てている。アバロンの集中力を乱したからと言ってゾンビの行動に乱れは生じていないためゾンビは自律的に行動しているようだ。


 しかし、現在ハクモを中心にゾンビは浄化され続け、少女剣士によりメヒコゾンビは消耗している。


 果たして俺にのみ意識を割いていて十全に力を発揮できるのだろうか。


 しかもこいつらは連携というものがなっていない。


 強力な力を持つ個人は概して他者との連携を不得手とする傾向にあるが、とても顕著だ。


 互いが互いの足を引っ張りあっている。


 奴らにほころびが生じるまでこいつらの意識をひきつけ続けてやる。


 そう考えていた時期がが俺にもありました。


『蘇れ』


『燃えろ』


 アバロンは懐から死骸を取りだし、カイバスは手足と剣に青炎を纏った。


 やばい。少し甘く見ていたかもしれない。


 多少連携が拙かろうと、それを補って余りある強力な力を二人から感じる。


 6本首のヒュドラ以来の危機感に冷や汗が流れる。


 これは時間稼ぎも怪しくなってきたか?


 少女剣士、ハクモ、部下共よ。俺が二人を引き付けている間にどうにか場を好転させてくれ。


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