哀れな吸血鬼
『哀れな吸血鬼』
著者:ゲルド
むかしむかし、最北の国のお話です。
大きな山脈の近くの湖の畔に、それはそれは美しいお城が建っていました。
お城の名はディーロイド城と言います。
ディーロイド城の庭には、美しい『青い薔薇』がたくさん咲いていました。
その薔薇はどんな傷や病、呪いさえも瞬く間に治す事が出来る『幻の花』と呼ばれており、人々はその花が欲しくてたまりませんでした。
しかし、そのお城には真っ赤な目をした恐ろしい吸血鬼が住んでおり、誰もその薔薇を手に入れることは叶いませんでした。
そんなある日、近くに住む村人達が吸血鬼に内緒で薔薇を盗みました。
吸血鬼は怒り狂いました。
近隣の村々を襲い、恐ろしい力で殺戮の限りを尽くしました。
噂を聞きつけたこの国の王様が、都で一番有名な魔法使いに吸血鬼退治を頼みました。
魔法使いは持てる力全てを使って吸血鬼に挑み、なんとかお城に封印する事が出来ました。
それから幾年。
今もその吸血鬼はお城に囚われたままです。
満月の夜になると、彼の悲しい叫び声が辺り一帯にこだまし、あまりの恐ろしさにお城に近づく者は誰もいません。
哀れな吸血鬼はずっと1人。
この先もずっと1人。
ゆっくり更新していきます。