窓の外を見たらどうしようもなかった
「あっ、ああ……」
その視線を感じて、俺は硬直してしまった。
魅入られるというのはこういうことか……
体の自由が奪われるように、そっちから視線を外すことができない。
「ん、どうした?」
じいちゃんが俺の異変に気づいたのか、俺の顔とその視線の方向を見る。
ばあちゃんも同じ方向を見る、が……
「? なにかあるのか?」
あぁ、原典と同じだ。
じいちゃんとばあちゃんには八尺様は見えていないのだ。
「窓……窓の外……」
俺はそこに八尺様がいることを必死で伝えようとする。
「ぽぽっ、ぽ……ぽぽぽっ」
八尺様はそんな俺の無駄な努力を笑っていた。
こつん。
その八尺様の体が窓に当たったのだろう。
この音はじいちゃんとばあちゃんにも聞こえていたようだ。
「いるのか!? そこにいるのか!?」
じいちゃんが驚いたように叫ぶ。
じいちゃんは八尺様は魅入られたものでないと見えないこということは知らなかったようだ。
声も聞こえない。
姿も見えない。
さて、どうしよう?
どうしようがある?
俺はその間もずっと八尺様を見つめていた。
目が離せなかった。
しかし、このまま見ていることで俺は死ぬことも頭の片隅で理解していた。
こつん、こつん。
八尺様は獲物をいたぶるように、音を立てる。
「ぽぽ……ぽっ、ぽ、ぽぽ」
声が聞こえるたびに意識が遠くなるのを感じる。
八尺様は視線で取り殺す怪異であることをはっきりと理解した。
意識がだんだんと白くなっていくのを感じる。
話が違うじゃないか。
八尺様は「魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう」怪異だったはずだ。
数日どころか当日じゃないか……
あぁ、俺は……俺は……
そのとき、八尺様の視線が遮られた。
「この子は殺させませんから!」
ばあちゃんが八尺様から俺を守ろうと覆いかぶさるように抱きしめていた。




