原典を思い出したらダメだと思った
「ぽっ、ぽぽぽぽっぽ、ぽぽぽ……」
2000年8月、ある掲示板に一つのスレが立てられた。
死ぬ程洒落にならない話をあつめてみない?
後に洒落怖と略されることになる「怖い話」を集めるスレだった。
そこで投稿された中で一際輝きを放ち、暗く、強く、魅力を振りまいていた存在。
見た目はやたら背の高く、帽子かなにかを被った女性の姿。
原典での生垣は2メートルを超えていたはずだ。
それからさらに頭が見えていた程度、だったように記憶している。
容姿は見る人によって違うと表現されていたようだが、今の俺には白いワンピースを着ている女に見える。
女性。
非常に背が高い。
頭になにかを乗せている……今は帽子を被っている。
そして、「ぽぽぽ」という声。
間違いなかった。
つまりこいつは……今、俺の目の前にいるこいつは、洒落怖でも一際輝きを放つ存在……八尺様だ。
八尺様に魅入られた存在はどうなるんだったか。
自問する。
原典ではどう書かれていたか。
原典で曖昧な書かれ方がされていたのなら救いはあるように思えた。
原典では……原典では……
八尺様に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。
「ダメじゃん!」
思わず叫び声を上げた。
八尺様はおやつ感覚でちょっとだけ呪って、あとはなぁなぁにしてくれるような存在ではないらしい。
いや、原典での主人公は生き残っている。
八尺様に魅入られながらも生き残っている。
どうすれば生き残ることができるのか……
原典での主人公はじいちゃんの家から出る前に八尺様のことをじいちゃんに相談していた。
「ダメじゃん!」
思わず30秒ぶり2回目の叫びが漏れた。
今の俺のようにじいちゃんの家から出ることはなかったわけだ。
どうすれば生き延びることができる……?
原典を思い出す。
確か八尺様は村にあるお地蔵様の封印により、村の外には出ることができなかった。
つまり村の外に出ることさえできれば俺の勝ち。
……が、八尺様が道に立ち塞がっている現状では、それは難しそうだ。
考えろ。考えろ。
そう、原点では……
「転身ーっ!」
俺は必死でバイクを操縦しもときた道を帰ろうとする。
いったんじいちゃんの家に帰ろう。そして……
「ぽぽっ、ぽぽっぽ、ぽっぽぽ……」
八尺様は俺を、ずっと、見ていた。




