聞いても回答はなかった
俺が肩を貸しているばあちゃんが鍵を取り出そうとして、もたついてもたついて、ようやく鍵を開けて、まずばあちゃんと俺、次に櫛井さん、最後にじいちゃんが家の中に転がり込み、じいちゃんが鍵を閉める。
それでようやく一息つくことができた。
車の中では緊張しっぱなしだったしなぁ。
腰が抜けたような変な歩き方で今にたどり着き、へたり込む。
へたり込みながら考えた。
「櫛井さん、八尺様ってなんなの?」
もしかしたら櫛井さんは知っているかもしれないと思って聞いてみた。
俺と同じように緊張で大きく息を吐いている櫛井さんは俺を見た。
「なにといっても……この辺りに封じられている妖怪で……」
俺の問いに困惑したような櫛井さんだが、聞きたいのはそうじゃない。
「あ、そうじゃなくて……あれって多分霊的な存在じゃない? 霊だとすればどこの誰の霊かとかはわかってるの?」
正体がわかればなんとかなるんじゃないかと思った。
「いや、それはわからんが……」
わからんかぁ。まぁ、そうだよなぁ。
ただ、さっき、車の中からの観察でいくつか思ったことはある。
櫛井さんがなにか情報を持っていればとは思ったが……それは仕方ないだろう。
原典では俺の親父を含めた親戚を呼び集めて、みんなでバンに乗せ、血族で目眩しをしながら集落からの脱出を図った。
しかし現状では俺の手首には痣がある。恐らく八尺様はこれで俺を見分けることができる。
これで目眩しは無意味ということなのだろう。
いや、もし可能だったとしても、俺だけ脱出してもばあちゃんが集落に残ることになってしまう。
原典と同じ脱出はできないことになってしまう。
痣が俺にある以上、それ以外の親戚を呼ぶことは、ばあちゃんが俺を庇ってくれたときと同じように、犠牲者を増やす結果になりかねない。
同じことができないなら……俺には考えることしかできなかった。




