見つめあったら連れて行かれた
「ほほほ、ほほほ、ほほほ」
渦人形が笑っている。
もうこの段階になると俺は視線を上げてがっつり様子を見ていた。
ばあちゃんはまだ下を向いてたし、じいちゃんは渦人形は見えても八尺様は見えないから状況が掴めてないだろうし。だから状況を理解してはっきり見ていたのは俺と櫛井さんだけだった。
まぁ、八尺様のプロとはいえ、魅入られていない櫛井さんから見る景色は俺とは違うものである可能性もあるわけだが。
渦人形はその長い首を伸ばして屋根の上からこちらを見ている。
首のところ以外は本当に普通の和人形だ。
造りもしっかりしているし、着物もかなりいいものを着ているように見える。
だからこそ首の長さの異様さが際立っていた。
ゆーら、ゆーらと首が振り子のように上下に揺れる。
普通の和人形に見えるし、猫をけしかけたら斬新な髪型にしてくれるんじゃないかなぁ……
「ぽぽっ、ぽぽぽ……」
八尺様は渦人形をしばらく見ていたが、やがて渦人形の首に合わせるように上半身を揺らし始める。
そういうの他所でやってくれないかな。うちは間に合ってるんで……とか思っている、一瞬の出来事だった。
八尺様が屋根の上の渦人形を掴み取り、そのまま抱きかかえてどこかへ走り去っていった。
っていうか早ぇ! 八尺様、やっぱり身体能力高ぇ!
車の中のみんな、声を出すことができなかった。
ばあちゃんはまだ下を向いていた。
「……えっ?」
「……あっ、今のうちに家の中に!」
あまりの状況に理解が追いついていない俺に櫛井さんが促す。
あぁ、確かに今のうちだ。
踏み台をとってくる時間も惜しいのでばあちゃんに肩を貸して急いで車から降りて、家の中に転がり込んだ。
「人形が飛んでった……」
じいちゃんが呟く。
そっかー。魅入られてなかったらそう見えたかー。




