天獄氏の業績を評価してたら眠くなった
大正3年、桜島の大噴火。
大正3年、秋田の大地震。
大正3年、方城炭鉱の爆発。
大正5年、函館の大火事。
大正6年、東日本の大水害。
大正6年、桐野炭鉱の爆発。
大正11年、親不知の雪崩による列車事故。
大正12年、関東大震災。
これらの災害に関わっていたとされる人物がいる。
物部天獄。
彼はある新興宗教……原典では邪教と表現されていた……の教祖であり、ある呪具を作り上げることによって日本自体を呪っていたらしい。
上記の災害が起きた場所は、その呪具が移動した場所なのだということだ。
最後は関東大震災の前日に日本刀で喉をかっ切って自殺したらしいのだが、いや、ほんと、勘弁してほしい話である。
……で、なに? それがいたお寺ですって?
ふーん……へぇー……あっそう。
勘弁していただきたい。
「ま、まぁ、今の住職さんは悪い人じゃないから」
ばあちゃんがフォローしてくるのだが、そんな「悪くない人」が今はいて、「大正時代から時間も経ってる」にも関わらずここまで微妙な態度になっちゃうお寺だろ?
やだよぉ……
やだよぉなんて言ったところで他に選択肢があるはずもなく、お寺に移動することになった。
櫛井さんは寺に電話をし、じいちゃんは「うちの軽トラじゃ全員乗れねぇから、ちょっとバンを借りてくる」と言って出て行った。
その間、八尺様も渦人形も出てこなかった。
平和な時間しゅきぃ……
「大変なことになっちゃったねぇ……ごめんよ、せっかくきてくれたのに」
困った顔でばあちゃんが話しかけてくる。
「ばあちゃんが悪いわけじゃないじゃん。誰が悪いのかはわかんないけど」
「悪いのは私を含めた集落の全員かもしれないねぇ……」
ばあちゃんが悲しそうに呟く。
そうだった。
八尺様は村の水利権を優先するという協定を周囲の村と結んで、この村に封印されたものだったんだ。
「まぁ、それはしょうがないよ。やっぱりばあちゃんも村の人も悪いわけじゃないし」
強いていうなら、時代が悪かった……?
「おーい、バン借りてきたぞー」
外からじいちゃんの声が聞こえる。
昨日からの緊張のせいか、乗り込んだ瞬間にすぅっと意識が遠ざかった。