見せようと思ったらじいちゃんが出かけた
邪視という話がある。
この話に登場するのは主人公とその叔父。
どちらも能力者ではない一般人だ。
2人で叔父の所有するある山の中の別荘に出かけたところ、邪視の持ち主に襲われるという話だ。
邪視……イビルアイ、邪眼、魔眼とも呼ばれるそれを見たら「死にたくなる」と言われている。
原典では主人公も叔父も生き残っているのでそれが本当かはわからないが、「それを見たことによって感情のセーブができなくなる」のは確かなことのようだ。
邪視の力によっては、衰弱し、ついには死に至るという。
別荘から山を見ていたところ、山の中から出没した邪視の持ち主に見つめられ……魅入られ、しかし、なんとかそれを撃退するという話だ。
その撃退方法は「不浄のものを見せること」である。
つまりあれだ。
ちんこを見せるんだ、ちんこを。
ペットボトル小便を浴びせられた上、ちんこを見せられたミスター邪視は「言葉はわからないが、凄まじい呪詛のような恨みの言葉を吐きながら、くるっと背中を向けた」のだという。
ミスター邪視かわいそう。
八尺様はその正体が山窩であるという説もあり、だとすれば山の怪異であるともいえる。
視線の怪異であり、また山の怪異という共通項がある以上、弱点を同じとしている可能性は十分にある。
八尺様の弱点はちんこ!
そこで少し考えた。
本当だろうか。
山の怪異の話でキャンプというものもある。
あるキャンプ場に泊りにいった大学生たちが、祠からなんか御神仏っぽいものを持ち出した挙句、怪異に襲われたという話である。
この話の中で「黒くて臭い液体」が出てくるのだが、「臭い」という表現がなされている以上はおそらく不浄なものなのだろう。
ちなみに俺はこの話を初めて読んだ時、黒い液体の正体は「不健康な色の水状の下痢」だと思っていた。
下痢じゃなかったとしても、少なくとも清浄なものではないだろう。
ミスター邪視が明らかに嫌うものである。
しかしキャンプ場の近所の祠の主は黒い液体を撒き散らかしていった。
ということはキャンプ場の近所の祠の主は山の怪異というカテゴリーであっても、汚物は弱点ではないということだ。
ちんこを見せつけることが八尺様に効くかどうかはわからない。
これは最終手段にしておこう。
じいちゃんとばあちゃんが悲しむしな。
「ごちそうさま」と言いながら、そういえば邪視とキャンプは両方N県の話だったっけ、と思い出す。
N県……新潟? 長野? 奈良? 長崎? わからない。
だがこの2つの話が同じ県内の話である可能性はあるだろう。
そんなことを考えているとじいちゃんが立ち上がった。
「櫛井さんのところにいってくる」