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ヤンデレ×ちょろイン=地雷原!?  作者: 木花 赫夜
一章 同級生は病んでいる
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三話

2019/09/29 三話目の投稿です。

読んでいただき、ありがとうございます。

また、ブックマークや評価をしていただいた方ありがとうございます。とても励みになります。

単純ではありますが、皆様に見ていただけているとわかると途端にやる気が出てくるものなのだなあと実感しております。


「――委員長、頼んだぞ」

「はい、わかりました」


そう呼ばれた相手はいかにもな四角いフレームのメガネと、左右に分けた三つ編みの少女だった。


宮崎先生に促されたとおりに彼女の隣の席へ向かう途中で、同じ列の壬生さんと目が合う。


「さっきはありがとう。おかげで緊張がほぐれたよ」

「私は何もしていないわ。それにしても席が離れてしまったのが残念ね」


「そうだね、席替えとかあるといいけど」

「……ええ、本当に」


壬生さんが前から二番目の席に対して、俺の席は一番後ろだ。四席も離れているので気軽に話ができない分少し寂しい。


「喋ってないでさっさと席つけよー」


宮崎先生に急かされて壬生さんの横を通り過ぎた直後、背筋がゾワっとするほどの悪寒を感じたけれど辺りを見回しても何もなかった。


「一、どうした?」

「あ、いえ。なんでもないです」


悪寒は一瞬だけだったようで、気を取り直して席につくと委員長が話しかけてくれた。


「私が委員長の朝比奈 恵(あさひな めぐみ)です。皆からは委員長って呼ばれてます。何かあったら遠慮なく聞いてくださいね」


「朝比奈さんだね。敬語は使わなくていいから気軽に接してね」

「あ、話し方は普段からこんな感じなので、一くんもあまり気にしないでくださいね」


彼女は丁寧な話し方で好感が持てる。その上雰囲気から真面目そうないい子なんだなと分かり、教員の信頼を得ている事もうなずける。


「んじゃあ、一時限目は一との交流会にするか。 お前ら騒ぎすぎない程度に新入りを質問攻めしてやれ。俺は職員室戻ってるからなんかあったら呼べよ」



にやにやしながら教室を後にした宮崎先生のこういう所が生徒に好かれる理由なんだろう。


転入生が来て一日中そわそわしているよりも、一限全て使って多少溶け込んでもらおうという狙いは好奇心旺盛な思春期の高校生には効果的だった。


「なあ、徹って呼んでもいいか?」


様子見で遠巻きに見ている人もいるが、二つ隣の席の進藤くんが最初に話しかけに来てくれたのを発端にあっという間に席の周りに人だかりができる。


「もちろんだよ。進藤くん」


「なんかそれ背中が痒くなるから(あきら)でいいぞ」

「わかった。これからよろしくね」


「んじゃあ、早速気になってたこと聞かせてもらうけど、徹はもうバスケやらないのか?」

「――徹くんってバスケやってたの?」


どう応えようか迷っていたところに、廊下で聞こえた宮崎先生と話をしていた女子の声が話に入ってくる。


「うん。……父と兄の影響で小さい頃からずっとね。それでさっきの答えだけど、ちょっと怪我しちゃってね。一試合どころか十分も動けないんだ。こんなんじゃ続けられないからね」


こういう話をすると周りが少ししんみりしてしまうけれど、後々になってわかった方が気まずくなるだろう。


「まあ、そんなに気にしないでよ。彰はバスケ続けてるんだろう? 今度見に行くよ」

「そうか! 徹に教えて貰いたいこといっぱいあるんだ。すげえ助かるぜ」


「徹くんってバスケ上手かったの?」

「馬鹿野郎。ありゃ上手いなんてもんじゃねえよ。全国大会の試合中にボールで遊び始めるくらいには実力差があったくらいだ」


彰とは全国大会で一度試合したことがあるのだが、別に遊んでいたつもりはなかった。親の影響で始めたバスケだったが、外国人がやっていたストリートバスケという競技を目にする機会があった。


今までの自分の知っているバスケとは違い、相手を欺くように自分の技術を魅せるプレイは間違いなく俺に影響を与えた。


それからというもの暇さえあれば動画を漁り、公園にある屋外コートで知らない人と競いながらひたすらに技を磨いていった。


彼の言う遊びというのは、それらの経験で得た一種の癖のようなもので反則スレスレのプレイは監督に怒られることも少なくはなかった。


「そんな大したものじゃないよ。練習すれば誰でも出来るさ」

「いや、簡単に言うけどよ。あの完成度は並のやつじゃ到達できねえよ」


「へー、そんなにすごかったんだ。それは見てみたいかも」

「バスケやってるやつならああいうのに一度は憧れるよなあ」


「あ、そうだ! 私女バスの坂本 優菜(さかもと ゆうな)です。彰だけとかずるいんで私にも教えて欲しいな!」

「もちろん。俺でよければいつでもいいよ」


どこへ行ってもバスケを通してコミュニケーションが取れるのはとてもありがたいことだ。今までの人生を注ぎ込んできた反動で、バスケを失った今自分には思った以上に何も無い。


今までの交友関係もバスケで築いたものばかりで、どうやって新しい友人を作るのか正直わからなかった。


「そうだ。じゃあさ今日の放課後もし予定無ければ、部活見学しに来ない?」


何かを閃いたらしい坂本さんがぱちんと手を合わせて、そんな提案をした。


「おお! 優菜ナイスだ! 」

「でっしょー! もっと褒めろい」


気安く話すのを見る限りこの二人はバスケ部という以上に仲がいいようだ。


「今日は特に予定はないけど、先輩とか顧問の先生の許可はいいの?」

「顧問は宮崎せんせーだし、先輩達はGWにあった練習試合で今日はオフなんだよねー」


どうやら都合よく一年だけの練習のようで、せっかくなのでお邪魔することになった。


「え、じゃあ私も見学行きたーい」

「俺もまだ部活決まってないし行こうかな」


坂本さんの提案に便乗する形で、クラスメイト達も数人見学を申し出る。


「……私も、いいかしら」


今しがた俺の席の周りでわいわいしていた皆が急にしんと静まった。


「だめなの?」


声の主は今朝会った恩人の壬生さんだった。彼女の言葉になぜ皆が黙り込むのかわからない。


「え、あ、壬生さんって部活とか入らないと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃって。 もちろん来ていいよー」


誰も反応出来ない中で坂本さんが代表して返事をする形になったが、壬生さんってクラスに馴染めていないのだろうか。


「ええ、入部はしないわ」

「え、じゃあどうして見学に?」


入部はしないと断言する彼女がなぜ部活の見学をしたいと言ったのか、俺だけではなくこの場にいる誰もが理解できない様子だった。


「徹が行くから」


短く一言。色々とツッコミどころはあるが、今後のためにこれだけは注意しておこう。


「壬生さん、その言い方だと誤解されそうな気がする」

「誤解? 何を?」


どうやら彼女は無自覚だったらしい。しかし、誰がどう聞いても俺に対して好意に似た何かを抱いているだろうと言うことは明確だった。


「そうだよ琴葉。それだとなんだか、一くんに好意があるみたいに聞こえるよ」


一番言葉にしにくかった部分を朝比奈さんが代わりに言ってくれた。しかしあまりにも直球すぎる問いかけに彰や坂本さんを始め、俺の席の周りに集まっていた皆がざわつく。


それにしても下の名前で呼んでいるという事は二人は仲がいいんだろうか。


「……そうだったらいけないの?」


賑やかだった教室はまたもや彼女の一言で沈黙することになった。


この度は読んで頂きありがとうございます。


この先も読んでいただけますと嬉しい限りです。

もし良ければブックマークや感想などいただけますと今後のやる気につながります。

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