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ヤンデレ×ちょろイン=地雷原!?  作者: 木花 赫夜
一章 同級生は病んでいる
32/35

二十九話

2019/11/17

第二十九話を投稿致しました。


最近体調崩しがちなため、投稿頻度が落ちております。

出来るだけ更新ペースを上げられるように頑張ります。


「何回やっても真っ白……」


あれから十数回、先輩と対戦してはみたが変わらずの結果だった。恵とは四回に一回くらいで勝てるようになったものの、やはり俺には向いていないのかもしれない。


「お、落ち込まないで下さい! それに、だんだん勝てるようになってきたじゃないですか」

「そうは言ってもね、流石に負けすぎて凹む」


「手加減した方が良かった?」

「いえ、それはそれで納得いかないので本気でいいです」


「でもこのままじゃいつまで経っても勝てないですよ?」

「うぐ……恵もなかなか厳しいこと言うね」


なぜだか一度も角すら取れない。勝つのはできずとも一色に染められるのだけは避けようと思っていたのだが、どうやっても先に全部とられてしまうのだ。


「経験の差」


どや顔でピースをうかべる先輩がとても憎たらしい。どうにかして勝てないものか。


「それにしても、オセロだけで結構時間潰せちゃうものなんですね」

「あれ、今何時くらいなの?」


「今は――六時前ですね」

「うわ、もうすぐ下校時間だったんだ」


「いってつが再戦したがるから」

「すいません、俺負けず嫌いなんですよ」


「負けず嫌いはいいことですけど、そろそろ片付けて帰りましょうか」

「そうだね、悔しいけど帰ろうか」


出していたものと言ってもオセロくらいなので、片付け自体は直ぐに終わった。あとは戸締り確認するだけ、そう思っていたらピコンと携帯が鳴った。


『そろそろ帰ろうと思うのだけれど、まだ学校にいるなら一緒にどうかしら?』


送り主は琴葉からだった。断る理由なんてないけれど、念の為二人がいることも伝えておく。


『ちょうどよかったわ。先輩がいるなら挨拶しておこうかしら』


ということは兼部の許可が出たのだろう。流石に向こうを辞めてまでこっちに入るとは思えない。


「今琴葉から連絡あって、一緒に帰らないかってさ。二人ともいいかな?」

「えっ……あ、えっと。ごめんなさい。私ちょっと用事思い出したので先に帰りますね。徹くん、ちい先輩、また明日会いましょう」


そう言うと、恵は荷物を持ってさっさと帰ってしまった。呼び止める間もなく取り残された二人は、お互いの顔を見合わせて首を傾げた。


「誰?」

「え? ああ、壬生 琴葉っていう同じクラスの子です」


「二股?」

「そんなわけないじゃないですか」


「冗談。二人は仲悪いの?」


二人、というのは琴葉と恵のことだろう。確かにさっきの様子だけ見ると、琴葉の名前を出した途端に慌てて帰ったようにしか見えない。


「いえ、仲はいいんですけど最近喧嘩したみたいで」

「なんとかしてあげればいいのに」


「出来ることならそうしたいんですけど、生憎喧嘩の理由も教えてくれないんですよね」

「そうなんだ」


会話をしながら戸締りを済ませて校門へと向かう。残っているのは運動部くらいなもので、グラウンドの方ではサッカー部が片付けをしていた。


「一緒でいいの?」

「琴葉ですか? 大丈夫ですよ。むしろ先輩がいないと困ります」


「どういうこと?」

「一応、入部希望者なんです」


そう告げると、先輩は立ち止まり目をまん丸にしていた。いつもの眠たげな瞳しか知らないので、初めてみる表情に不思議な感じがした。


「びっくり」


そう言うと思っていた。なんというか、そっくりそのまま顔に書いてあったからだ。


「まあ俺も昨日聞いたばかりなんですけどね。弓道部に入っているので、兼部にするか向こうをやめてこっちに来るか悩んでました」

「そこまでするの?」


「彼女の中では決定事項みたいなんです」

「あっという間に人が増えた」


「確かに、でもこれで安心ですよね」

「いってつ、ありがとう」


「いや、俺は何もしてないですよ。恵を誘ったのは先輩ですし、琴葉には勧誘とかしてないですから」

「それでも、最初に入ってくれたのはいってつだから」


首を横に降り、真剣な眼差しで見上げている。一応同い年とは言え、先輩から感謝されるのはなかなか照れてしまう。


「その子、ゲーム好き?」

「どうだろう。あ、でもゲームセンター行った時にシューティングゲームやったんですけど、なかなか上手かったですよ。それこそ初めてとは思えないくらいに」


「それは有望株」


むふーと鼻息を鳴らし、どうやら満足気な様子だ。テレビゲームも好きな先輩からすると、一緒に出来る相手がいるというのは嬉しいことなのかもしれない。


「これで四人になりますし、出来るゲームが増えますね」

「パーティーゲームは大体四人用だから」


「遊ぶ中で二人が仲直りしてくれるといいんですけど」

「きっと大丈夫。ゲームは偉大」


自信満々に言い切る先輩が頼もしいようでいて、根拠の無い自信に苦笑いを浮かべてしまう。


「そろそろ来ると思うんですけど……」


そんな話をしているうちに、校門に着いてしまっていた。雑談として昨日勧めてもらった動画の感想などを話していると、急いできたのかやや上ずった声で呼ばれる。


「――徹、待たせてしまってごめんなさい」

「琴葉、お疲れ様。そんなに待ってないから大丈夫だよ」


「急いで来たのだけれど、やっぱりそっちの方が早かったみたいね」

「着替える必要も無いからね。今日は迎えには来ないの?」


「駅まで行って買い物するから、そこで来てもらう予定なのよ。それで……」

「ああ、すいません先輩。紹介します、彼女がさっき話した壬生琴葉さん。同じクラスの子です」


「徹と同じクラスの壬生 琴葉です」

「それで、琴葉。こちらがゲーム愛好会の部長の鏑木 千鶴先輩」


「二年の鏑木 千鶴、よろしく」

「はい、よろしくお願いします」


「部活の方は話出来たの?」

「ええ、兼部という形で落ち着いたわ。ただ、条件として七対三で弓道部に出ることと言われてしまったけれど」


「三割もこっちに出てくれるんだ。それになにか不満でもあるの?」

「いいえ、()()()()()()()。私としては九対一くらいがよかったのだけれど、そこまで譲歩してくれなかったのよ」


運動部には大会もあるだろうにその比率でいいんだろうか。普通は逆だと思うんだけど、お父さんが許してくれるのか心配になる。


「それ、本当に大丈夫なの? お父さんとかに反対されない?」

「大丈夫よ。 既に了承済みだし、元々惰性で続けているだけだもの」


「そ、それならいいんだけど。まあ、そういうわけで先輩。彼女も入部希望なんですけど、いいですよね?」

「もちろん。五人以内なら歓迎」


「五人以内? どういうことですか?」

「顧問がつくと面倒」


先輩の言う通り、この学校の規則では愛好会の所属が五人を超えると教員の監視下に置く必要が出てくる。これにはトラブルの予防という意味もあるらしいのだが、先輩は顧問がつくことを嫌がっているようだ。


「それは、どうしてですか?」

「みんな休みで二人っきりでも顧問の邪魔が入ることがある」


「それはっ……賛成します。これ以上の入部は断固拒否しましょう」


ここでまた一つの協定が出来たようだ。恵の時にも何やら言っていたが、どうやら先輩は相手の懐にはいるのが上手いのかもしれない。


「そういえば……あの女はいないのかしら?」

「琴葉、その言い方やめようよ。恵なら急用を思い出したからって先に帰ったよ」


「そう……逃げたわね」

「喧嘩は駄目」


どうやら先輩らしく注意してくれるようだ。少しでも耳を傾けてもらえるといいんだけれど。


「そうですね。気をつけます」


しかしあまり効果は無かったようで、琴葉の口から出たのは表面上だけの返事だった。喧嘩中は冷静ではないので、仕方がないことなのかもしれない。先輩との顔合わせも済み、このまま和やかな雰囲気で帰れると思っていたが。


「それはそうと、徹?」

「どうかした?」



「――二人っきりで随分楽しそうにしていたわね」


甘かった。やはりそんなことあるわけがなかった。

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[良い点] かわいい(脳死) [一言] 更新お疲れ様です。 ご無理をなさらずお大事になさってください。
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