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ヤンデレ×ちょろイン=地雷原!?  作者: 木花 赫夜
一章 同級生は病んでいる
30/35

二十七話

2019/11/12

第二十七話を投稿致しました。


乾燥し始めたせいか職場内で流行した風邪をもらってしまいました。ようやく治ってきましたが、皆様も十分お気をつけください。


「徹、行きましょう」

「おまたせ。彰達今日は部活の友達と食べるみたいだよ」


「そうなんですか。それなら仕方ないですね」


今日の昼食は彰と坂本さんが他のグループに誘われたようで、琴葉と恵と三人で食べることになった。


二人はと言うと、今日はまだ会話をしているところを見ていない。恵は気にしているようだが、琴葉は視界に入れようとすらしていない。


「二人とも、本当に何があったの?」

「……なんのことかしら?」


恵がちらりと琴葉に視線を向けるが、当の本人はまるで相手にする素振りもない。


「できれば仲良くして欲しいんだけど……」


俺のつぶやきは届いていなかったのか、どちらも反応せずただの独り言になってしまった。


「徹は今日も愛好会に行くのよね?」

「そのつもりだよ。そういえば琴葉も先輩と話したいって言ってたっけ」


「そうね。徹が行くところだもの。どんな人かくらいは知っておかないと」

「心配しすぎじゃないかな?」


「――昨日の話、ちゃんと聞いていたの?」

「そうでした。気をつけます」


「とはいえ、本当は私も行きたかったのだけれど、今日は弓道部に行くわね」

「何かあったの?」


「さすがに休みすぎたみたいで部長と顧問の先生から呼び出しを受けたのよ」

「ああ、そういえば一週間くらい休んでたからね」


「ついでだから兼部の話もしてくるわね。だめだと言われたらあっちは辞めて徹と同じところに入部させてもらうわ」

「どっちにしろ入ることは確定なんだね」


「当然じゃない」

「当然かあ。それじゃ先輩に一人増えること伝えておくね」


「よろしくね」



「恵は――」

「はっはい! なんでしょう!?」


「先輩がゲーム用意してるんだっけ?」

「はい、そうみたいです。今朝メッセージがありました」


「どんなゲームか知ってる?」

「いえ、来てからのお楽しみだそうです。あんまり難しいのだと困りますよね」


「うーん……なんとなくだけど、いきなりそんなのは持ってこないと思うな」

「そうなんですか?」


「いや、鏑木先輩とちょっと話した限りだと本当にゲーム全般好きみたい。それもテレビゲーム限定って言う訳でもないみたいだったからさ」

「私、テレビゲーム以外のゲームってどんなのがあるか想像できないです」


「それも込みで来てからのお楽しみなんじゃない?」

「なるほど! さすが徹くんですね」


「――って言っておいてめちゃくちゃ難しかったらどうしようね」

「う、それは頑張るしかないんじゃないでしょうか」


昼食を取りながらの会話はそれなりに弾んでいるようにも見えるが、実際のところ琴葉と恵が言葉を交わすことは無かった。終始俺とどちらかの一対一の会話で、ぎすぎすした空気がなんとも居心地悪い。


俺が恵と、部活の話で盛り上がっている時なんか琴葉からの視線が痛々しい程だった。何を食べていたのか味も思い出せないほど緊張感溢れる昼食を終え、放課後を迎えた。


「じゃあ琴葉、今日は恵と二人で部活に行くね」

「……ええ、また明日」


何か言いたげな様子だったが、荷物をまとめすぐに教室を後にしてしまったため、どうしたのか聞きそびれてしまった。


「今度は何をやったんだ?」


離れて様子を見ていた彰が声をかけてくる。俺が何かをやらかした前提で話しかけてくるのが少し心外だった。


「俺は何もしてないよ……多分」

「えらく自信なさげじゃないか。多少は心当たりがあるんだろう?」


そう問われたことで反射的に隣の席を見てしまった。やや俯いていた恵が視線を感じ取ったようで、こちらと目が合った。


「ごめんなさい。私のせいなんです」

「委員長が? 喧嘩でもしたのか?」


「はい、少し……いえ、結構」


やはり二人は喧嘩を、それも結構なものをしたらしい。薄々どころか琴葉を見ていればすぐにわかっていたけれど。


「徹くん、ちょっと御手洗行ってくるから待っててもらえますか?」

「うん、わかった」


これ以上は聞かれたくなかったのか、そそくさと行ってしまう。


「聞いたらまずかったか?」

「いや、遅かれ早かれこうなってたと思う」


「なになに、あの二人喧嘩してるのー?」

「らしいな。なんか知らないのか?」


「私は知らないなー。ちょっと探っとこうか?」

「坂本さんそんなこと出来るの?」


「徹くん、それはどういう意味だい?」

「え、いや深い意味は無いけど」


眉間に皺を寄せ、目を細めたまま数秒見つめてきたあと、ぱっと元通りの表情に変わる。


「本当っぽいなあ。まあいいけど。その辺はほら、女子トークってやつだよ」

「なるほど。じゃあお言葉に甘えて、お願いするよ」


「任されたー」

「成功率三割くらいだと思っておけよ」


「なんだとこのやろー!」


坂本さんが彰のほっぺたをつねって引っ張り、抵抗する彰は坂本さんの頭を上から押さえつけるように引き剥がす。二人のじゃれあいをしばし見守っていると、坂本さんが何かを思い出したような声を上げた。


「あっ全然話変わるんだけど、藤子って覚えてる?」

「峰藤さんだったっけ? 見学行った時に話したよね」


「そうそう。その子がなんか学校来てないらしくて、今日何回か電話したんだけど繋がらなかったんだよね。ちょうど徹くんが見学来たあとから来なくなったみたいで、何か知ってたりしないかなって」

「残念だけど、あの日少し話したくらいで彼女のことは何も知らないんだ」


「やっぱそうだよねー。 本当に何してるんだろ」

「誰も連絡つかないの?」


「そうみたい。メッセージも既読にならないし」

「悪いけど多分力にはなれないと思う」


「いいのいいの! こっちもダメもとで聞いてるだけだから。 しゃあない明日の放課後行ってみるかー」


「――徹くん、お待たせしました」


ちょうど話のキレがいいところで恵が戻ってきた。


「それじゃ行こうか」

「はい」


「おっし、俺らも行くぞ」

「はいはーい。じゃあ二人ともまた明日ねー」


「うん、またね」


「……なんの話してたんですか?」

「今朝の噂の事だよ。なんか知らないかってさ」


「ああ、例の子の事ですか」

「そうそう。残念だけど連絡先も知らないし、ちょっと話しただけだから力にはなれなかったけどね」


「しょうがないですよ。友達ですらなかったんですから」

「まあ、そうなんだけどさ。一応心配だねって」


「――徹くんは優しいですね」

「そんなことないよっと、先輩にこれから行くって連絡しとこうか」


「あ、はい。お願いします」


スマホを取り出して先日登録したばかりの鏑木先輩宛にメッセージを送る。


『これから恵と部室行きますね』


するとすぐに既読が付き、一分も経たないうちに返事が来た。


『私はもう部室にいるから早くおいで。今日は入門編のゲーム用意して待ってるよ』


「ねえ、恵」

「なんですか?」


「鏑木先輩ってメッセージだとやたら饒舌だったりする?」

「あ、そうなんですよ。普段物静かな印象ですけど、メッセージだとすごいいっぱい話してくれるんです」


「やっぱりそうなんだ。なんか今送る相手間違えたかと思ってびっくりした」

「あ、これはちい先輩に報告ですね」


「ちょっと待った。今のはなかったことに」

「ふふ、さてどうしましょうかね」


悪戯っぽく笑う姿は琴葉と重なって見えた。長年一緒にいると仕草も似てくるんだろうか。喧嘩したとはいえ、どこかでは仲直りさせてあげたい。


恵にからかわれつつも部室に到着し、ノックをしてから中へ入る。鍵は開いていたので問題なかったのだが、扉を開けた先には仁王立ちの鏑木先輩が待ち構えていた。


「よくぞ来た。今日のゲームは……これ」


――勿体ぶっていた割に、テーブルに広げられていたのは見覚えのある升目に白と黒の丸い石。所謂オセロ、別名リバーシとも呼ばれる庶民的ゲームだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いよいよ本番ですね、続きが楽しみです。 [一言] 3人目が待ち遠しい。
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