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ヤンデレ×ちょろイン=地雷原!?  作者: 木花 赫夜
一章 同級生は病んでいる
22/35

十九話

2019/10/27

第十九話を投稿致しました。


0時の予約投稿に間に合わなかったので、手動で更新させて頂きました。


昼休みまでの間、休み時間が来る度に代わる代わる教室へ人が尋ねて来る。大方委員長がイメチェンしたことを聞き付けて一目見に来たという所か。


「委員長モテモテだったねえ」

「そうだな、それにしても流石に疲れてそうだな」


「……何故か知らない人まで話しかけて来るので疲れました」

「あはは。委員長お疲れ様」


疲労からか委員長の顔色は良くない。生徒だけでなく、教員からも繰り返し同じ質問をされていたのだ。気疲れしてしまうのも無理はないだろう。


「しょうがないよー。委員長本当に可愛くなってるんだもん」

「あ、ありがとうございます」


「そういえば、眼鏡はどうしたの?」

「思い切ってコンタクトにしてみました。今朝少し遅くなったのも、付けるのが怖くて時間がかかってしまいまして」


「あー、わかるわかる。私もコンタクトだけど、最初はめっちゃ怖かったもん。ごろごろするし、乾くしで目薬するのも嫌だったなあ」

「お前は目薬下手くそだからな」


「そんなことないし! 三分あれば出来るもん」

「目薬に三分って、時間かかりすぎじゃないかしら」


「えっ! そうなの!?」

「わ、私も目薬苦手なのでそのくらいかかってますよ」


「委員長、こいつを甘やかす必要は無いぞ」

「そ、そんな甘やかしてなんて……」


「まあまあ、その辺にしておこうよ。それで、委員長はもう眼鏡はかけないの?」

「もしかして、一くんは眼鏡があった方が良かったですか?」


「そういう訳では無いんだけど、眼鏡も似合ってたからもったいないかなって」

「それじゃあ、たまに眼鏡にしますね!」


やる気に充ちた委員長は胸の前で握り拳を作る。無理にとは言わないが、個人的に眼鏡をかけている女の子は可愛いと思うので野暮なことは言わない。


「しっかし本当に変わるもんだな」

「もう、彰しつこいよー」


「いや、わかってはいるんだけどな。しばらく慣れそうにないわ」

「まあね〜。一ヶ月ちょっととはいえ、これが委員長って感じで覚えちゃったから違和感はあるかも」


「私は昔の恵を思い出すわね」

「昔の委員長もこんな感じだったの?」


「ええ、その時は眼鏡をかけていたけれど、髪は今くらいだったはずよ」

「委員長ってなんで三つ編み始めたの?」


「ええと、色々ありまして……」


理由について話すつもりは無いらしく、俯いてお茶を濁した。壬生さんは何か知っていそうな感じだけれど、敢えて追求することでもない。


「そういえば、せっかくイメチェンしたけどそのまま委員長って呼んでてもいいの?」

「ええ、()()()()そのままで大丈夫ですよ。私が委員長なのは変わりませんし」


()()()()ってどういう意味かしら?」

「そうですね……一くんには、名前で呼んで欲しいです」


「――は?」


刃物のように鋭い声音に自然と背筋が伸びてしまった。委員長による突然の申し出にも驚いたけれど、それ以上に壬生さんの圧が強い。思わず息をするのも忘れてしまう。


「それと、徹くんって呼ばせて貰いますね」


このなんとも言えない威圧感をまともに受けているはずの委員長だったが、どうやら全く応えていないようだ。


「恵、あなた何を言っているの?」

「え? 琴葉だって私の事名前で呼んでいるし、徹くんのことも名前で呼んでいるじゃない。何かおかしいことでもあるの?」


委員長の言葉は至極真っ当な正論だ。そもそもお互いの呼び方の話であって、ここに壬生さんの意思は関係ない。壬生さんの嫉妬は彼女自身が勝手に抱いているものなのだから。


「――徹。先に私のことを名前で呼びなさい」

「……え?」


壬生さんは一瞬考える素振りをしたあとでそう言った。委員長の提案を突き放す理由もない以上、ここが妥協点だとばかりに要求する。


「転入初日に名前でもいいと言ったわよね? 今から私の事は名前で呼んでちょうだい」

「ど、どうしたの急に」


「私の方が先だったのよ。この子の後なんて許さないわ」


有無を言わさぬ物言いに、情けなくも従うことにする。女の子を名前で呼ぶのは慣れていないのに、急に二人とも名前で呼べだなんてどうしてこうなったんだろう。


「わかったよ……琴葉」

「ふふ、それでいいのよ」


「それと、恵?」

「はい、徹くん」


名前を呼ぶだけでこんなにも満足そうにしてくれるなら、いくらでも呼んであげよう。そう思えるくらいに、二人揃っていい笑顔をしていた。


「あー、塩取ってくれ」

「何、どうしたの」


「口ん中が甘ったるい」

「食後のデザートってやつだねえ。塩振ったらもっと甘く感じるかもよ?」


「なんもうまい事言ってねえからな」

「彰厳しい」


俺たちのやりとりを見ていた彰達がなにやら言っているが、この光景もいつもの事となりつつある。最早何を言われてもあまり気にならなくなってきた。


「ところで――恵、話があるわ」

「それは、ここだとだめなの?」


「ええ、私の勘違いならここでもいいけれど、そうではなかった時は不都合ね」

「わかった。でもこれからだと時間足りないかも」


壬生さんと委員長――もとい琴葉と恵がやや硬い表情を浮かべている。話、とはなんだろうか。気にはなるが二人きりがいいということは俺たちには聞かれたくない内容なのだろう。


「そうね。それなら放課後はどうかしら?」

「放課後って徹くんと部活に見学行く予定だよね?」


確かに今朝、そう約束したところだった。しかしその話の方が重要なら仕方がない。少し落ち込んだ様子の琴葉が、振り向いて俺の目を見つめる。


「ごめんなさい、徹。今日の放課後は恵と話がしたいから部活の見学は行けないわ」

「ううん、気にしないで。一度行ったところだし、一人でも大丈夫だよ」


「ごめんなさい徹くん。早めに終わったら合流しますね」

「わかったよ、委員――恵」


「ふふ、早く慣れてくださいね?」


表面上は変わらず、穏やかな二人だがなにやらぴりぴりと張りつめた空気を感じる。どんな話しをするかは知らないが、喧嘩にならなければいいのだけれど。


予定していた部活の見学は、結局一人で行くことになってしまった。彰や宗次郎は部活だ。仕方がないので今日は挨拶だけして帰ろう。



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