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ヤンデレ×ちょろイン=地雷原!?  作者: 木花 赫夜
一章 同級生は病んでいる
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十四話

2019/10/15

第十四話を投稿しました。


基本的に愛好会などは部室を与えられないらしい。しかし、今向かっている『ゲーム愛好会』には部室があるという。


この壬生第一高校には部室棟というエリアがあり、運動部や文化部の多くがここに部室を与えられている。


何故かこのゲーム愛好会もそこの一角に部室がある、と生徒会副会長に貰ったリストに書いてある。


「リストによるとここ、みたいだね」

「二階の角部屋ね。隣は……空き部屋みたいね」


コンコンと二回、控えめにノックをするが中から反応はない。


「すいませーん」


声を掛けてもう二回ほどノックをするもやはり反応がない。不在だろうか、とドアノブを捻ると鍵は掛かっていないようで一切の抵抗もなく回る。


「開いてるわね」

「うん、気がついてないのかな?」


そのまま部室に入るべく扉を開ける。室内は暗く、やや埃っぽい。カーテンの隙間から零れる陽の光で空気がきらきらと光っていた。


「誰もいない、のかな?」

「いいえ、あそこに」


壬生さんの指先を視線で追うと、ソファーの上に人影が見える。暗闇に目が少し慣れた頃には、それが抱き枕のようなものを抱いて眠る少女らしいということがわかった。


「起こした方がいいのかな?」

「気持ちよさそうに眠っているわね」


すぴすぴと寝息を立てて眠る少女を起こすのも申し訳ない。念の為、部活見学で来たけれど寝ていたので日を改めるという書置きを残して今日は帰ることにする。


少女を起こさないようなるべく静かに扉を閉めて外へ出る。


「この後どうしようか」

「そうね。他に気になるところはあるのかしら?」


「他に、か」


リストを見ながら唸って考えてみても興味を引くものはそう多くない。壬生さんの許可が必要となったばかりに選択肢が大幅に減ってしまったからだ。


「とりあえず、ここも含めてあと何ヶ所か見学してダメそうだったらまた考えようかな」

「そう、それなら今日はもう帰るだけかしら?」


「また迎えが来るまで一緒にいようか?」

「ええ、嬉しいわ」


壬生さんと二人、校門の前で話しながら迎えの車が到着するまで他愛のない世間話に花を咲かせ、程なくして帰宅した。



部活見学をはじめて三日ほど経ち、転入してから最初の金曜日を迎える。概ね目星を付けたところは見終わったが、予想通りほとんどは壬生さんによって却下され、残っている中で興味があるのはゲーム愛好会くらいになってしまった。


「今日はどうするんだ?」


昼休みに彰と宗次郎の三人で昼食をとっていると彰が唐突に切り出した。


「部活の見学の話なら、週明けにでも行こうと思ってるから今日は予定なしかな」

「そんならどこか遊びにでも行かないか?」


バスケ部は体育館の割り当てから外れているらしく、毎週金曜日は自主練習の日と決まっているらしい。


「どこかって?」

「そうだな……ゲーセンとかどうだ? ゲーム愛好会入るんならちょうどいいだろ」


「あ、いいね。僕も久しぶりに行きたい、かも」

「まだ入ると決めたわけじゃないけど、ゲーセンか。そういえばしばらく行ってないな」


「おし、んじゃ決まりだな! 他にも誰か誘うか?」

「他って?」


「いや、お前はすぐ思いつかなきゃダメだろ。後で根に持つタイプだろう?」

「た、確かにそうかもしれないね」


「あ、もしかして壬生さんのこと?」

「もしかしなくても他に誰がいるんだよ」


今日は昼休み中になにやら用事があるらしく、珍しく彼女は傍にいない。忘れていた訳では無いけれど、意識していなかったのも事実だ。


「――私の事、呼んだかしら?」


今しがた話をしていた相手に後ろから声をかけられ、びくりと方を大きく揺らす。


「……びっっっっくりしたぁ」

「あら、失礼しちゃうわ。人のことをおばけみたいに」


眉間に皺を寄せてはいるが、そこまで怒っているわけではなさそうだ。数日間ほとんど一緒に居たおかげで、少しだけ表情が読めるようになってしまった。


「あ、そうだ。壬生さんって今日の放課後予定ある?」

「弓道部に行く予定だったけれど」


「そっか……ゲームセンターに遊びに行こうと思ってたんだけど、それなら仕方ないね」

「それってデートのお誘いかしら?」


「あ、いや一応この二人も一緒に」

「おい、一応ってなんだ。まあ優菜とかも誘うつもりだから、無理そうなら仕方ないな」


「そう……行くわ」

「そうだよね……って行くの? 部活はどうするの?」


「一日くらい休んでも大丈夫よ」

「いや、今週一度も行ってないよね?」


「問題ないわ」


思えば今週は部活見学に付き合ってもらいっぱなしで、壬生さんが自分の部活に行く時間を奪っていた。せっかくならそっちを優先して欲しかったけれど、彼女の中ではすでに決定事項らしい。


「それで、優菜と恵にも声をかけた方がいいのかしら?」

「ああ、人数多い方が楽しいだろうしこっちからも頼む」


「わかったわ。それじゃあ放課後にね」


そう言って離れていく彼女の先には委員長がいた。早速今の話をしているのかこちらをチラチラと伺っている。


何気なく手を振ってみると委員長も手を振り返してくれるが、やり取りを見ていた壬生さんが睨むのですぐにやめた。


「……なあ、徹ってどっち狙いなんだ?」

「あ、それ僕も気になる」


「え? どっちって、何が?」

「とぼけんな」


「普通に考えたら壬生さんだと思うんだけど、徹は委員長とも結構仲が良いよね」

「委員長が世話焼きなのは今に始まったことじゃなさそうだけど、それだけじゃない気がするんだよな」


「そんなこと、ないと思うけど。委員長には避けられてる感じがするし」

「鈍いなあ。あれはどう見ても意識してるだろう。行き過ぎた鈍感は罪だぞ」


「そうなのかな? 俺個人としては普通に仲良くして欲しいとは思っているけど」

「……はあ。これは先が長そうだな」


もちろん気がついていない訳では無い。しかし、あからさまな態度は自意識過剰では無いかとも思うので、極力自制しているのだ。()()が友人として、なのかどうかはっきりしない以上は俺から引っ掻き回すようなことをするつもりは無い。


鈍い鈍いと散々いじられたが、あえて否定もせずにやり過ごすことを選ぶ。


昼食を終えて眠気と戦いながら午後の授業を切り抜けると、待ち侘びた放課後と転入後初となる週末がやってきた。

投稿時間が毎回ばらばらなのは筆者の力不足です。

本当は決まった時間に更新する方が皆様読みやすいのでしょうけれど、期間を決めてしまうと雑になってしまいそうで、ある程度満足出来てから投稿しております。

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