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ヤンデレ×ちょろイン=地雷原!?  作者: 木花 赫夜
一章 同級生は病んでいる
15/35

十三話

2019/10/14

第十三話を投稿致しました。


気がつけばもうすぐ五万文字です。

意外とあっという間だなあと思ってしまいます。


「それで、この学校の部活動と愛好会のリストが欲しいと?」

「はい、持ち出せないならここで見るだけでもいいんですけど」


放課後に生徒会室にやってきた。壬生さんも当然のように一緒にいるけれど、もう気にしないことにした。


「いや、そういう訳では無い。ただ……」

「何か問題でも?」


「ああ、まあ聞いているかもしれないがかなり数が多いんだ」


申し訳なさそうに言う彼は生徒会の副会長だそうだ。壁に備え付けられた扉付きの本棚を開け、中から辞書ほどの厚みをしたバインダーを取り出す。


「まさか、これが」

「そう、これが我が校の部活動リストだ。流石に増えすぎだろうということで、今年は内容を精査するつもりなんだ」


「こんなにあったのね。全然知らなかったわ」

「無理もない。中には卒業生が残していった愛好会なんかも残っているからな。顧問のいらない愛好会は我々生徒会の判断で許可しているが、作るのは簡単でも消すのはなかなか難しいのだ」


何年か置きに同じような愛好会を立ち上げようとする人達がいるらしく、そういう時のために当時の活動内容なども残しているそうだ。


「一応、去年から活動していない愛好会はこちらで調査済みだ。まだ見やすくまとめられている訳では無いがそれでも良ければ活動中のものだけを渡そう」

「ありがとうございます。それで十分です」


渡されたのはA4サイズの紙の束がおよそ10枚ちょっとだ。活動中のものだけでもそれなりの量はある。文字だけで、全てに裏表印刷されているくらいだ。


「これ、全部回るつもり?」

「いや、全部は無理だと思うからとりあえず今日は文化部だけ何ヶ所か見学しようと思う」


「そうね、それがいいと思うわ」

「何かわからないことがあればいつでも聞いてくれ」


「ありがとうございます」


副会長にお礼を言って生徒会室を後にした。まずは一般的な文化部を見に行くつもりだ。


「この時期にまだ見学って珍しいのかな?」

「いいえ、一年生は五月の終わりまでに決めれば大丈夫よ。まだ見学している人も少しはいるんじゃないかしら」


「そうなんだ。うん、じゃあ変な目立ち方はしないかな?」

「徹は目立ちたくないの?」


「うん、まあ、そうだね。ただでさえ壬生さんと一緒にいたら目立っちゃうから」

「――もしかして、私迷惑かしら。徹は私のこと、邪魔?」


「そんなこと思ってないよ。ただ、ファンクラブの人達には刺されそうだなって」

「もう。またその話をするのね。……でも、大丈夫よ。そんなことは絶対にさせないわ。あなたは私が守るもの」


一瞬拗ねた素振りを見せる壬生さんだったが、すぐに何やら決意を固めた表情へと変わる。


「冗談だよ。それに、そんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ」

「そうだといいわね」


大丈夫だとは思っているけれど、あまり不安になることを言わないで欲しい。彼女のファンクラブが妄信的なファンばかりだったら本当にそうなりかねない。


「ところで、今日はどこを見学するつもり?」

「うーん。今日は美術部と吹奏楽部、あとは料理部なんかも見てみたいかな」


正直絵を書いたことも、ちゃんとした楽器を演奏したことも無いし、自炊すらしていない。


料理部に入れば食生活がまともになるかもしれない。候補の中では結構有力だ。


あとの二つは全く未経験だからこそ、やってみたい気持ちが少しある。せっかくだから新しいことに挑戦してみようというわけだ。


「――美術部、吹奏楽部、料理部」

「壬生さん、どうかした?」


「なんでもないわ。行けばわかる事だもの」



「こんにちは。部活見学してもいいですか?」


ドアを二回ノックして部屋に入り、一番近い場所にいた生徒に声をかける。順番は特に考えていなかったが、最初は美術部にやってきた。


「どうぞお。君は一年生?」

「はい、そうです」


やけに間延びした話し方をしているが優しそうな雰囲気の女性が対応してくれた。美術部の活動は主に絵を描いたり、彫刻などをコンクールに出したりするらしい。


何人かは真剣にキャンパスへと向かい合っている。描かれているのは黒や濃い赤、紫などの暗めの色が入り交じっており、正直なんの絵かさっぱりわからない。


「あ、一君。見学来てくれたんだね」

「河西君、せっかくだから来てみたよ」


そんな中、石膏像のデッサンをしている河西君を見つけた。素人目だが彼の絵はかなり上手なようだ。


「秀くんの友達?」

「あ、えっと、同級生です」


「そうなんだあ。一くんはまだ決まってないなら入ってみる?」

「お誘いは嬉しいですが、未経験なのでどうしようかと」


「大丈夫よお。私が手とり足とり教えてあげるから」

「あー、えっと。他のところも見学したいのでちょっと考えさせてください」


「残念だけど、仕方ないわねえ。じゃあ気長に待ってるわあ」


あまり長居せずにそこそこのところで切り上げて美術部を出ると、終始無言だった壬生さんに問掛ける。


「壬生さん、どうしたの?」


「――ここは却下よ」


「却下って、どうしてまた?」

「ここは男女比がかなり片寄っているもの。それとも、徹はさっきの学がなさそうな女が好みなのかしら?」


「あの人、一応二年生なんだけど」

「関係ないわ。話し方が育ちを表しているものよ」


やはりご立腹なようだ。どうも彼女は男女比が女子に片寄っている、在籍している女子の品がない場所は気に入らないらしい。


「男女比っていう話だと、他に見る予定のとこも全部当てはまると思うんだけど」

「そうね、だから全部却下よ」


「そんな馬鹿な」


そもそもなぜ壬生さんの許可がいるのかという話もあるが、ここでそれを言うのは野暮というものだ。


「え、じゃあ吹奏楽部も料理部も見学する意味ないよね」

「そうね」


「そうねって……」


思わぬ理由で予定が大幅に狂ってしまった。副会長から貰ったリストを頼りに俺が入部できそうなところを探す。


「ねえ、じゃあこことかどうかな?」


そう言って俺が指を差した場所には『ゲーム愛好会』と書かれていた。


「私、げえむってやったことないのよね」

「そうなの? 据え置き機は俺もたまにやるくらいだけど、結構楽しいものだよ。まあこの愛好会のゲームはそのことでは無いと思うけどね」


このゲーム愛好会は、愛好会と言いつつもしっかり部活が用意されているようだ。他の愛好会や研究会は放課後の教室を使ったりしているみたいなので、優遇されているように感じる。


「ここは行ってみないとわからないわね。これから行ってみる?」

「うん。壬生さんが良ければ行ってみようと思う」


「私は大丈夫よ」

「じゃあ行ってみようか」


彼女の合意も得たので早速ゲーム愛好会なる場所へ向かう事になった。

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