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テンプレとの遭遇

ちょっと時間が空いてしまいました。

ブクマ、ご感想、評価ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ励みになっております!


 テンプレとの遭遇




 第一印象は――魚拓ならぬ顔拓が取れそうな厚化粧だな、だった。

 元お隣のヒステリックボイスの持ち主ことメリグ聖女見習いが、腕を組んでアシュリーの行く手を阻んだ。

 場末の娼婦のほうがまだ慎みのあるのではないかと思われるようなけたたましい化粧と、レースやフリルで異様に装飾の施された白ワンピースと思われる服。たしか、デコルテや腕の裾にのみ刺繍が施されたシンプルなものが、見習いへと支給される服だったはずだ。その面影がなくなるくらい色々魔改造してある。

 面識はなかったが、あの頭痛がしそうな甲高い声には嫌というほど聞き覚えがあった。


「アシュリー・ゴーランド! 貴女、アレクシス様に取り入って、教皇様に近づこうとしているそうね? 貴女のような泥くさい小娘が、尊きお方の歓心を頂けると思って?

 ふしだらに髪など巻いて、はしたない! 身の程をわきまえたらいかが?」


 神殿の人の多く行きかう広場で、いきなりフルネームで呼び止められ、思い切り指をさされながら罵倒された。

 流石に毎日周囲の冷たい目をかっさらっているにも関わらず、甲高く囀っているだけある。びりびりとそのソプラノボイスは響き渡り、周囲の足は止まり、空気は凍り付いた。

 アシュリーの髪がくるくると巻いているのは、巻き髪にはまった女官の趣味と、儀式に向けての練習という実益を兼ねている。揺れるピンクドリルは嫌でも目に付くので、臙脂のバンダナをリボン代わりにして、ポニーテールにしていた。お団子にすると、女官たちががっかりするから諦めたのだ。

 ちなみに、アシュリーは今日も儀式の練習である。冷たい水の中に入り、立ち泳ぎの練習である。湖面を優雅に泳ぐ白鳥ごとく、足は如何に必死にバタ足をしていようと、なるべく滑るように静かに移動し、すまし顔でいなくてはならない。


「取り入るのではなく、仕事です。確かに役割上、聖下に近づくことはありますし、枢機卿らの視界には入りますが、これは職務です」


「しらじらしい! 貴女のような新人の小娘が、そのような大役を預かること自体がおかしいのよ! どんな手を使ったのかしら!? ああ、なんて汚らわしい!」


 汚らわしいのはオメーの思考だよ。10歳の子供がどうやって取り入るっていうんだ。アシュリーは呆れて視線を返した。

 悪役令嬢も真っ青な言いがかりである。

 芝居がかった身振り手振りで大げさに喚く姿は、いっそのこと滑稽だった。


「そもそも! アレクシス様は非常に真面目であまり女性には近づかないの! あのお方にどうやって取り入ったの!?」


「上司なので最低限の会話はします。アレクシス様の部下の中で、わたしにしかできない仕事もありますので」


 貴族の子女やガチムチ筋肉祭りを怖がる人々への案内や対応はアシュリーに振られることが多い。こちらの世界で云う節句の巡礼に来た子供たちのなかには、大柄な人を怖がるタイプも一定以上いるし、未婚の令嬢はあまり近くに異性が来るのを嫌がることもある。

 騎士のなかには傭兵上がりで、計算や文字の読み書きが苦手なものがいるので、その書類作成フォローもすることもある。

 アシュリーはアレクシスの名前をやたら連呼するメリグに、ぴんときた。

 メリグは身分の高いイケメンに次々と取り入ろうとしていると女官ネットワークでは有名だ。当然、アシュリーも御付きの女官からきいている。


「でも! だとしても! この前アレクシス様の部屋へ訪れたと聞いたわ! この前なんて、これ見よがしに隣を歩いていたでしょう!?」


「書類配達の雑用しているのですから、小間使いの下っ端が執務室にお伺いするのは当然でしょう? それとも上司にこちらに出向けと?」


「貴女でなくてもいいでしょう!? それにデートのように教会を歩き回るなんて不謹慎だわ!」


「先輩に雑用を押し付けるわけにはいかないでしょう。デートも何も、わたしとアレクシス様が並んでも精々上司と小間使い。もしくは兄と妹ですよ」


 そういえば、この前、町の屋台の傍を歩いていた時「カッコいいお兄さんね」とか「可愛い妹さんね」ときゃーきゃーいわれた。二人の髪色や顔は全然違うが、会話が微塵も甘ったるくなく、似た色の瞳をしていたからだろう。

 それでアシュリーがいるとナンパに会わないと気づいたらしいアレクシスをはじめとする一部が、街に出るときアシュリーを指名することが増えた。もし、運悪く絡まれても妹がいるからよせとそれとなく匂わせて拒絶する。完全に虫除け扱い。迷惑だ。

 思い出してさらに機嫌が降下するアシュリー。

 激情を叩きつけるように叫ぶメリグに、白けた視線と淡々とした声音で返すアシュリー。


「だ、だとしても近づき過ぎよ! 弁えなさい!」


 聞き分けのないガキは嫌いだよ、とアシュリーの中のアラサーが毒づいた。

 アシュリーの精神年齢を考えれば、確かにアレクシスはショタコンゾーンから外れている。だが、あのThe乙女ゲーと云わんばかりのキラキラエフェクトが入りそうな美貌は地雷の気配がする。自分の未来の危機を感じ、ときめきが死滅する。くだらない日常会話より、業務の話の方が盛り上がる。

 アシュリーは威圧で黙らそうかと一瞬思ったものの、いくら不躾なメリグとはいえ、非戦闘員の聖女見習いにスキルを使用するのはためらわれた。

 だから、笑顔という武装を用意する。


「ではお聞きしますが、メリグ様」


「な、なによ!?」


「貴女にどんな権限がおありで、どんなご迷惑をかけしたのかお教えいただけないでしょうか?

 わたくし、まだ教会に来て日が浅い若輩者ですの。

 上司に会わず、先輩らにも迷惑を掛けず、円滑に業務を終わらせる方法をご教授願えませんか?」


「は!? そんなこと私が知るわけないでしょ! 自分で考えなさい!」


「では、このことを包み隠さずアレクシス様に相談させていただきますわ。

 わたくしの直属の上司も、最初の先輩も、聖騎士見習いへとお声をかけていただいたのもアレクシス様ですので、あの方のお顔を立てる意味でも無視できませんわ」


 まあ、困りましたわといわんばかりにアシュリーが白い繊手を頬に添える。

 だが、メリグにとっては意中の(うちの一人)アレクシスへの報告という言葉にメリグの顔が真っ青になったり真っ赤になったりしている。


「だから、アレクシス様に近づかないでって言ってるでしょう!?」


「では書面でこのことを報告上げさせていただきますわ。アレクシス様がどんな判断をするかはあの方次第。それでよろしいですね?」


「ちょ、やめて! やめなさい! アレクシス様にはいわないで!」


「あれも駄目、これも駄目――わたくし、貴女にここまで強く一方的に命令をされなければいけない立場ではないはずなのですけれど。まだ聖女見習いでもありますし、この仕事は教会の決定ですわ。メリグ様には、この決定を覆す権限がありまして?」


 意訳:外野がグダグダうるせえ、引っ込んでろ


 アシュリーがさも困ったと云わんばかりにため息をつく。

 その愛らしい顔立ちを悩まし気に曇らせた。あくまで声音は柔らかで、鈴を転がすように可憐な声でつぶやく声は、ことのほか静かな広場に響く。

 周囲でメリグに対する堪え切れない失笑や密やかな嘲笑が漏れる。それは、今まで周囲の高貴の異性から歓心を得ようと愚かしいまでに傲慢を繰り返す彼女に対する鬱憤もあったのだろう。

 自分の不利をようやく理解したのか、メリグの顔が怒りに染まる。


「この・・・調子に乗ってるんじゃないわよ!」


 振りかぶった平手がアシュリーへと向かう。

 調子に乗っているんじゃなくて事実なんだけどな、とその手を冷たく一瞥するアシュリー。大人しく叩かれておけば、この場にはたくさんの目撃者もいることだ。彼女がどう言い訳しても、叱責を受けるのはメリグの可能性が大幅に上がる。

 そういえば、この前もベルンに引っぱたかれたことも思い出す。あれよりは全然軽そうだ。


「ハイストップ。アシュリー・ゴーランドだな? 練習に来ないってエイザム司祭が青い顔で探していたぞ」


 いつまでも来ない痛みに、知らない声が降りかかってくる。

 見れば聖騎士のものとも、司祭服とも違う白い衣装が目に飛び込んだ。さりげない金糸の刺繍のはいった白いハーフコートに、ライトグレーのベストには真珠を割った釦が輝いている。白い細身のズボンに膝までの良く磨かれた黒いブーツ。

 シャラッシャラした効果音が聞こえてきそうなプラチナブロンドは一筋の赤いメッシュが入っている。長い睫毛に縁どられた琥珀色の瞳が悪戯っぽくウィンクする。大胆なほど笑みを浮かべた唇が繊細な美貌とはかけ離れた性格を表している気がする、文句なしの美形だ。

 無性にイラっとした。アシュリーはイケメンアレルギーかもしれなない。


「見ての通りです。助けていただきありがとうございます」


「ありがとうって面はしてないけどな」


「正直、一発殴られたらメリグ様が謹慎くらい食らうかなと期待していました」


「・・・・アレクシス兄様の報告以上だな。まあいい。ちゃんと練習しろよ」


 琥珀色の瞳に見覚えがあると思ったら、アレクシスの関係者か。兄ってことは弟か、とアシュリーの中で情報が飛び交う。

 声には出さず、口だけで「早く行け」と呟いた。メリグには見えていないのはいいが、任せていいということだろうか。ぺこりと少し頭を下げて、アシュリーは脇を通った。








「――というわけで遅れました」


 エイザム司祭が頭を抱えていた。

 それなりに年を重ねた顔に、追い打つように苦渋を塗りたくられたことだろう。そして疲れた顔で「そうか」と何とか吐き出した。

 どうにかしてくれよ、あの聖女様候補。アシュリーは切実に思う。


「今度はアシュリー殿に矛先が向かったか・・・・そんな気はしていたが、メリグは優秀な聖女候補が現れるとすぐに、その・・・・」


「イビリをすると?」


「・・・・うむ」


 前々からそんな気がしていたが、メリグは矢張り性格が相当クソなようだ。

 悪役令嬢顔負けの強烈さだ。


「わたしは聖女より聖騎士として、戦術や魔法の腕を磨きたく思っております。

 いなくなれば、暫くは大人しくなるとは思いますが」


 あの性格を野放しにすれば、そのうちとんでもない不祥事をしでかすだろう。

 幸い、アレクシスはアシュリーに対して魔法の手ほどきや戦術の手ほどきを、時間の合間を縫って教えてくれている。

 メリグが特別扱いしている、というのもあながち完全な見当違いではないのだ――主にガチな戦力的な意味で期待されている新人である。

 アシュリーはその見た目にそぐわぬ剛毅と豪胆を持ち合わせた少女である。

 ゴブリンだろうが人食い大カマキリだろうが、頭を砕けば死ぬ。死ななくてもダメージは通る。殺気をぶつけてくる魔物に臆さず、打ち据えることに躊躇いのない実戦経験のある教えやすい新人だ。


「あの新人イビリを何度も続けられますと、聖女候補が何人も潰されます」


「う、うむ。実はすでに何人か聖女を辞した娘たちもおります・・・」


 アシュリーは軽く引いた。それでもまだあの少女は聖女候補らしい――というより、能力的には正式に聖女と認めてもよいらしいのだが、とにかくあの素行の悪さと、本当に聖女になってさらに権力を持たせたらますます我儘が悪化すると懸念して、保留のままだという。

 治癒魔法の使い手としては、教会としてはぜひいて欲しい。だが、権力を持たせるには余りに人格に問題がある。非常に厄介な人物だということだ。

 だが、アシュリーはそんなこと知ったことではない。


「害悪は早めに除去したほうが、教会のためにもなりますわ。もしくは、メリグ様のお得意の治癒術をたくさん使っていただくために戦場の慰問でもいって頂いたらいかがです?」


「あのメリグ殿が、そう簡単に向かうと思いますか?」


「あの権力の匂いが大好きなメリグ様ですから、その戦場に伯爵侯爵公爵といった上級爵位の子息がいるといえば息巻いていってくださるのではないでしょうか?

 貧乏だろうが、五男だろうが、嘘つかなきゃいいのです。名誉貴族だろうが、懲罰で出向させられていようが婚約者のいない若いイケメンですよ、とでも煽てれば赴いてくださるのでは?」


「アシュリー殿・・・メリグ様がお嫌い・・・ですよね。やっぱり」


「あれで好きだとかほざいたら、わたしはとんでもない性癖でしかないと思いますが」


 聖杯を模した金属の器を女官からもらい、アシュリーは水の中へ入っていった。

 泳いで向こう岸までいくと聖なる炎を模した松明の近くまでいき、隣の台座に器を置いて泳いで戻っていった。

 同じことを10セット行ったところで、アレクシスが顔を出した。


「そろそろ終わるか?」


「ええ。だいぶ泳ぎなれてきました。本番も問題ないかと」


「・・・そうか」


「なにかありましたか?」


 歯に物の挟まったような、妙に歯切れの悪いアレクシス。なんだか冒険者の勘か野生の勘かがピンときた。


「メリグ殿が、お前の儀式の役目をよこせと騒ぎだした」


「まあ」


 やりそうだ、とアシュリーは口に出さずに思った。

 エイザム司祭はアレクシスと顔を見合わせ、かなり狼狽している。アレクシスは苦々しい顔で首を振った。

 あれはないものねだりするタイプで、手元のお宝はないがしろにするタイプだろう。


「わたしはメリグ様にお譲りしてもかまいませんわ」


「しかし、アシュリー殿はずっと儀式の練習をして、洗礼や禊を繰り返してきたではありませんか・・・っ

 これはアシュリー殿の行いに対して、報酬でもあります。ホルシュタインの聖杯発見と浄化の立役者として、大々的に聖下たちに御目通りを果たせるまたとない機会です」


 興味ねぇ、とアシュリーは断言できるが、小さな円らな瞳をきらきらと輝かせるエイザムを無碍にすることができるほど、外道ではなかった。

 しかし、アレクシスはこの大役を周囲に角が立たない様にと、無難なアシュリーにやらせたかったのだ。それを邪魔して今更引っ掻き回され、若干不機嫌そうだ。横やり小娘の私情ありまくりの我儘で、アレクシスが行った調停や調整が一切合切無駄になったのだ。


「わたしは教会の権力事情に疎くありますし、その判断はアレクシス様にお任せいたします。

 聖女候補という名誉は頂きましたが、過ぎたものを頂いたという気もあります。

 騎士候補としてアレクシス様にご指導していただきたい身としては、正直聖女候補としての今後はあまり重要視してはいないのです」


「・・・・できる限り、お前を使いたい。そのつもりでいる。

 あの厚塗り女を、間違っても聖下の目の前に等お出しできるものか。

 そんなことしたら、ピスタチオ卿にどんな嫌味を言われることか・・・・・」


「ピスタチオ卿?」


「枢機卿のお一人で最も古株の方です。穏健派の方ですが・・・メリグ殿は前科が多いので」


 身分不相応なのに、隙あらば聖下に近づこうとする。そんなメリグを忌々しく思うものは少なくないらしい。ここまで来ると、聖女候補でいられたメリグもすごい。

 半ば感心していると、アレクシスに小突かれた。ついでにさっと簡単に髪の毛と服を乾かした。恐らく魔法だが、どういったものかは不明。その便利な恐らく生活魔法であろうそれに、アシュリーは金色の瞳を輝かせて振り返った。


(なんて便利! この魔法があれば生乾きの匂いとはおさらば! 素晴らしい! 是非とも教えていただきたい!)


 アシュリーから期待と称賛に満ち満ちた視線を受けたアレクシスは、満更でもない笑みを浮かべた。


「そういえば、ツェルニオに会ったそうだな。だいぶ面白がっていたが、何を言ったんだ?」


「ツェルニ・・・? どなたですか?」


「ツェルニオ・フォン・アルビニオン。私の従弟だ。白銀の髪に、一房だけ赤毛の混じったお前より少し年上の少年だ」


 名前は微塵も覚えがなかったが、白銀の髪に一房赤毛というキーワード。むしろ遺伝子構造が気になる意味ではパワーワード。

 アシュリーはメリグからの平手打ちを華麗に邪魔した美少年を思い出した。


「ああ、あの方が…そういえば」


「思い出したか」


「絡んできたメリグ様にあえてぶん殴られて、メリグ様が謹慎喰らわないかなと画策したと率直に申し上げました」


「・・・・その手があったか」


「だいぶ頑張って煽ったのですが、上手くいかないものですわね」


「全くだ。あの馬鹿、余計な邪魔をしやがって」


 ちっと舌打ちを響かせなかったものの、共にやさぐれた表情を浮かべる子弟関係のある上司と部下。見目麗しいのに腹の中はチンピラと腹黒が同居中だ。

 そんな中、根っからの善人であるエイザム司祭だけがおろおろしていた。








 だが、その儀式当日にやはりというか事件が起こった。

 朝から女官がいつもの淑やかとはことなる、騒々しい程の足音でアシュリーの部屋へ転がり込んできたのだ。その目には涙さえ浮いている。



「た、大変です! アシュリー様! 御衣裳が!」



 そういって出された儀式用の白い衣装は、無残にも切り刻まれていた。

 アシュリーは寝ぼけ眼にそれを見せられ、事態を把握して口を手で押さえた。

 金色の目を大きく見張り、ストロベリーブロンドの睫毛を震わせた。そして、可憐な唇から漏れたのは嗚咽――ではなかった。


「ぶっはぁ! マジナニコレ! 超テンプレ! 悪役令嬢っぽい! うけるーっ! やべえ! メリグ様に協力する人いたの!? つーか本人がわざわざ夜中に衣裳部屋行って切り刻んでったのかな!?」


 ゲラゲラと爆笑するアシュリーに、女官たちはぽかんとした。

 笑いに笑って、すでに引き笑いである。目に涙を浮かべ、鋭利なもので乱雑に陰湿に切り込みを入れられた純白の衣装を指さして大爆笑だ。

 最初はぽかんとしていた女官たちも、数秒置いて狼狽し始める。

 アシュリーは落ち込むでもなく、傷つくでもなく、寧ろ楽しげであった。教会にいるときのアシュリーがお澄ましな猫を被っていることは知っていたが、ここまで予想外の反応をするとは思わなかったのだ。

 ひぃひぃと笑っているアシュリーは、ベッドの上を転げている。

 あの驕慢極まりないあのメリグが、夜中にいそいそと衣装を切り刻みに行く姿を想像して、勝手に一人で悶えていた。


「と、とりあえずその衣装は使えないですね。アレクシス様とエイザム様にご連絡とご確認を。予備があるか確認をしてみましょう」


 こんな穴だらけの衣装を着たら破廉恥極まりない。

 いくらまだ凹凸少ない少女でも、うら若い乙女が着ていい服装ではないことは間違いない。

 唖然とするも、女官たちは「それもそうですね」と上役たちの意見を仰ぎに行った。







キャラクターが増えてきたので、そのうち人物総覧みたいなのも作るべきかなと思いつつ。

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