名誉より実利が大事
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アシュリーさん、この度上司ができました。イケメンで割と常識人枠ですが・・・・胃痛担当とならないといいなぁと思いつつ・・・
名誉より実利が大事
「では、これで双方納得ということで契約を締結いたします。
よろしくお願いいたしますね。アレクシス先輩?」
「・・・・・・・・ああ」
ぐったりとしているアレクシスは、アシュリーに二度も雇用条件票なるものを作らされた。やれ、あれが足りない、これはどういうことだと、言い回しや表現が曖昧なものをギツギツに問い詰められ、明文化させられた。
口頭でいいだろうといったが、アシュリーが頑として書面締結を望んだ。そして、自分にも控えを取っておき、丁寧にポシェットにしまっていた。もしも、『著しい契約不履行』があれば、いつでもそれをもって反逆してきそうなことは容易に想像がつく。
アシュリーもアシュリーで、自分の履歴書なるものを持ってきた。
それには自分の名前、年齢、出身地、経歴と簡単なスキルが書いてあった。正直、これだけでアシュリーの能力はだいぶ把握できた。そして、思いのほかアシュリー自身も自分の能力を把握していると舌を巻いたものだ。青田買いをしたつもりが、なかなかに侮れない内容だった。
アシュリーは魔法適性だけでなく、身体強化スキルをすでに保持していた。そして、やや特殊とはいえ騎乗スキルを持っているのはありがたい。騎乗スキル持ちは、それだけで行動速度が変わる。アシュリーがメリー号という魔羊に執着する理由も分かる。また、薬草学スキルを低いとはいえ持っているのは、野営や探索には非常に有難い代物である。
あくまで本人の自己申告だが、アシュリーは無駄な見栄を張らないタイプである。
逆に、面倒ごとになりそうならば有能スキルを隠すことはありそうだ。
10歳にしてこのスキルの多彩さはかなりの掘り出し物と云っていい。
正直、正規に雇いたかったがアシュリー自身は、騎士寮でメリー号を伴うのは難しいという一点で激しく納得いかなかったようだ。アシュリー曰く『臨時雇用』で、必要なときのみこちらから声を掛け、都合をつけられれば仕事に従事する形となった。取りあえず見習い採用となった。アシュリーは冒険者ということもあり、時間の都合もつきやすい。実質は騎士見習いをしつつ、合間に冒険者業――だと思いたい。あの少女の行動予測は難しいのだ。
アレクシスは巧くこちらの騎士団に引き込みたいが、厄介なのが書面で交付されたあの契約書。可愛い顔して可愛くないことをする子供である。
しかし、なんとか次の儀式の手伝い役は引き受けてくれたので、とりあえずはアレクシスも引き下がった。隣の聖女見習いは教皇に会いたくて、顔面に塗りたくりすぎた白粉がまるでピエロのようになっているほど気合を入れているというのに、アシュリーは本当にユーウェルツェーリ聖下に興味がないようである。
「このことがメリグ様にばれたらうるさそうなので、部屋とか変えてもらえませんか?」
「・・・わかった。女官長にも話を通しておく」
確かにメリグならばなにかやりそうだ。
自分と同年代の、しかも自分より容色に優れた少女が隣室にいるというだけでヒステリーに磨きのかかった女だ。聖女候補というのも烏滸がましい精神の作り。見習いでなければ、誰も寄り付かないような娘だが、あれでなかなかの治癒魔法の使い手なのだ。しかし、あの性格なので他の聖女や、女官や騎士、さらには枢機卿らからも煙たがられている。
アシュリー付きの女官も、部屋が変わるということに安堵している。だれだってあの甲高い喚きを毎日聞きたくないだろう。
アレクシスも、メリグが苦手だった。
まだ若いというのに、女の厭らしいところを煮詰めたようなあの性格。アレクシスが貴族の令息と気づくと、しなを作ってすり寄ってきた。アシュリーは忘れているようだが「わぁ、あれが肉食女子ってやつですね」と虚ろな目で云っていた。心底関わりたくなさそうな顔をしていた。
アレクシスはメリグのことを肉食どころか腐肉すら探し回るドクロハイエナだと思っている。あれは毒だろうが死体だろうが肉であれば構わない。腹にたまれば口にする。
アレクシスは深く深く、それこそ腹からため息が漏れた。
メリグのような人間は珍しくない。
周りに期待も大きくされてない人間が突然特別な存在と認知される。戸惑いより、環境の激変により、自信から増長へ一気に変わる。突如、周りが傅くのだから分からなくもない。そして、元の身分が低い程、己をわきまえるタガが外れたときの反動は目に余るものがある。
メリグはその典型である。
アシュリーのように粛々と受け入れ――淡々としている方が珍しい。
アシュリーはその愛らしい見た目から、そしてその謙虚で向上心のある振る舞いから女官や騎士からも人気である。本人が思っている以上に、彼女は好印象なのだ。
見た目というのは、アシュリーが思っている以上に強い『力』なのだ。言葉や行動よりも、素早く情報として目に入ってくる。
(本人には自覚がないが『誘惑』や『魅了』のスキルが潜在的にあるかもしれない)
聖人、聖女には精神影響を与えるスキルを持つ者が珍しくない。
中には大衆効果を及ぼす『扇動』や『カリスマ』といったスキルもある。
その価値を値踏みしかねるアレクシス。
「・・・アシュリー、お前泳げるか?」
「人並みには」
「立ち泳ぎは?」
「あんまり長くは無理ですよ・・・何かあるんですか?」
「ああ、儀式の都合上ある程度泳げないと困る。
聖下たちにより浄化された聖杯を、さらに聖なる炎で浄化するんだ。
君の仕事は、その炎に聖杯をくべるまで運ぶ役目なんだが・・・水中を移動しなくちゃならない。
その水の中は男子禁制。清廉と純潔を司る女神の領域。清らかなる乙女のみわたることが許される女神の神域だから、大原則が未婚の女性だけが入ることが許される」
せいぜい数メートルだが、儀式用の衣装を着たままわたるのでそこそこ元気のある若者でないと難しいのだ。アレクシスの説明に、アシュリーはげんなりした。
アシュリーは着衣のまま入水したことがある。うっかり足を滑らせたメリーを川から救出するため、ファイト一発したことがあるのだ。はっきりいって、なかなかにきつかった。
水中では布地が水を吸い、抵抗感を増やし、かなり動きづらかった。メリーも自慢の羊毛にたっぷり水がつかりパニック状態だったこともある。仕方ないから強引に担いだが、脳筋スキルがあったからこそできた荒業だ。自分より大きな魔羊メリーの俵担ぎ。
「衣装は肌に張り付いても良い様に少し厚手でできているが、余り水に影響されない様に特殊な素材を用いている。それでも儀式用だからある程度重くなるのは覚悟してくれ」
「承知しました」
その後、儀式の練習をするからと何度か水の中に入って、なるべく聖杯を模したコップを掲げながら水中を渡る訓練をした。
これがまたキツイ。
お嬢様育ちや蝶よ花よと聖女様よと育てられた娘たちにはいささかきついのでは?
なるほど、田舎育ちの冒険者娘に声がかかるわけだ。下手すりゃ溺れて水没だ。儀式的にも外聞的にもよろしくない。教皇と枢機卿が参加する儀式なのだから、恙なくするべきだろう。
アシュリー付きの女官たちは、折角教皇や枢機卿らとお近づきになれるのだから、軽くお化粧をして髪を巻きましょうと張り切っている。
「アシュリー様のストロベリーブロンドはお綺麗ですね! 最近、ピンクや赤の髪色は王都でも流行っていますのよ!
最近は結い髪もストレートに流すより大きめに巻いて優雅に揺れるようにするのがレディの憧れですわ!」
そわそわと行ったり来たりしている。
まだ聖女候補である状態の人間が、教会の殿上人といえる人々と相まみえることは大変名誉なことらしい。そして、それは世話係や護衛たちにも直結するという。
やはりあのホルシュタインの聖杯は余計な事態を招いている、と表に出さずともアシュリーは苦々しく思った。
楽しく自由な冒険者生活は遠のくばかりである。
なんか顔の横にフランスパン張り太さのピンクドリルが錬成されていくのを見て見ぬふりをした。くるくる器用にドリルを錬成する女官はご機嫌だ。アシュリーの趣味ではない髪型であるが、教会女官歴の長いだろう彼女の見立てに逆らうほど、アシュリーは教会の世情にも詳しくないし、流行にも敏感ではない。
ここ数年の流行りはシックな黒やネイビーといったものがメインだったが、今年からはパステルカラーが流行の兆しらしい。
ニコニコとよくしゃべる女官さんはララァを思わせる。彼女より変態臭はないが。
ちなみに、今の一番流行の髪はプラチナやブロンドらしい。まだ赤・ピンク系は二番手どまりであり、今まではブルネットが主流とのことだ。貴族たちはこぞって明るい髪色のウィッグを買いあさっているらしい。そして、時折王都ではその髪欲しさに長髪の女性が狙われる事件もあるくらいだそうだ――なんでも、流行カラーの鬘は肩ほどの長さのものを作れるだけで月収2~3か月相当にもなるという。背中までいくと半年分以上、腰まで届き、巻き髪が豪奢に揺れる量となると年収は軽く飛ぶという。それでも品薄らしい。貴族の流行への貪欲さはすさまじい。銭を叩きつける勢いで欲しがっても、手に入らない。売る側もまた事情があるのだ。売る側も自分の頭が地肌が見えるほどそりこみたくない。また、女性の髪は基本結えるほどの長さが基本ということもある。手入れの大変さもあり、どうしても庶民の髪の長さは美しさと両立も難しいので――必然的に長く美しいウィッグは非常に希少価値も高くなる。
「お化粧は水白粉を軽くはく程度にしましょう。水ですぐ落ちてしまいますもの」
この世界にはウォータープルーフ製品はまだない。魔法で似たような状態を付加できるとは思うが、一般的な化粧品にそこまで高度な技術はない。
そもそも化粧品もスキンケア用品も高級品である。アシュリーはポーションより保存期間の短い水薬をさらに水で割って肌や髪に叩きつけて化粧水代わりにしている。そして、お風呂などには薬草のしなびたのや、残りかすを温泉の素代わりに使用している。
流石ファンタジーな世界であり、それだけでお肌や簡単なあざや擦り傷は、お風呂上りやその翌日にはツルンツルンになっている。まだ若いアシュリーだが、今後を考えると十代からのスキンケアは怠れない、中身アラサーである。
ちなみにこのふわさら髪ともち肌は女官さんたちにも大人気であり、時折その化粧品もどきと温泉の素もどきの余ったものをお渡ししている。あかぎれや肌荒れが激減したと大変好評だった。
使用期限が大変短いのが難点だが、魔法も使用せず無添加なので仕方ない。
香油や蜜蝋があれば、もっと香りも良く、使いやすく効能が高いものを作成できるかもしれないが、冒険者業と聖女見習いと騎士見習いと半端に掛け持ちしているアシュリーには余り時間がないのも事実だ。
アシュリーはその合間を縫ってメリーとホーンウルフを退治したり、ハイホークを打ち落としたりしていた。最近、アーミーアントの巣をみつけ、そこに攻撃魔法を滅多打ちに試し打ちをして、魔法スキルを実践でも鍛えている。奴らは良い。数が多いので経験値が美味しいうえ、触角や手足が武具の素材となるし、腹の後ろに特殊な蜜を蓄えている。うっかり破裂させてしまうと使えないが、ちょいちょいと美味しい素材となるのだ。アーミーアント――軍隊蟻という名の通り、集団でいるし、仲間を呼ぶという特技があるのでちまちま皆殺しにせず生かさず殺さずをキープすると、素材がたんまり手に入る。
ララァには「巣まで破壊してください。アーミーアントは数が増えると師団相当に危険度が跳ねあがるので」と苦言を呈されたが、ウルウルとした目で「もう少し搾り取れると思うから、ダメ?」とお願いしたが駄目だった。血を吐くような表情で「春から秋は数が増えやすいので、ダメです!」と。それ以外ならいいのか。
アシュリーの愛しい大事な生きたへそくりちゃんは仕方なく爆殺した。勝手に増えてくれる素晴らしいへそくりちゃんだったが、仕方ない。
「アシュリー、いるか?」
「アレクシス様、どうぞお入りください」
「すまない、少々聞きたいのだが・・・ああ、儀式用の練習か?」
「ええ、といっても、わたしはあまり詳しくはないので女官さんに衣装から髪型までお任せしていますが」
「どうせ水に入るのだから、すぐに崩れるぞ?」
「だからこそ、最初に気合を入れるのですわ! アレクシス様!」
握りこぶしをして、ふんすふんすと鼻息荒い女官。アシュリーは悟りを開いて目が茫洋としている。アレクシスは、どちらかといえばアシュリー側の人間だった。
「だ、そうです」
「そうか」
理解できない、と云わんばかりに女官を見るアレクシス。
くるんくるんに巻かれた髪は、アシュリーの髪が腰に届くまで伸びていたからできた代物だろう。本人が先ほどの話を聞いて「売り飛ばしたいな」などと考えているなどとは知らない。長い髪の手入れは手間だが、メリーと御揃いの色だとアシュリーは後生大事に伸ばしていた。お洒落ではなく、相棒メリーへの愛だ。
メリーは本来なら白い羊毛がスタンダード。あのピンクは稀少色である。そのお揃いのカラーリングを持つアシュリー。運命だと柄にもなく感じている。最初は金になるとしか思わなかった魔羊だが、今では唯一無二の存在である。
最近、庭で雑草をもぐもぐと食べているメリーに面白がって子供が寄ってくることもあるが、メリーは基本大人しい。というより、雑魚に興味を示さず、アシュリーとメリー自身に危害がなければ静かなものだ。
牛並みの巨体の魔羊という時点で、実は相当視線を浴びているメリーだがアシュリーはメリーに慣れ過ぎてそのあたりは気にしていない。
近寄ってくる子供も、相当な動物好きか、度胸試しである。
特にアシュリーがいて、許可をえることができれば鼻で笑うようなしぐさはされるものの、大人しく触らせてくれる。
ちなみに、強引に移動させて連れて行こうとし、屋根より高く蹴り飛ばされた騎士が数人いる。自慢の鋼の甲冑に見事な蹄の跡が残り、騎士の間では恐怖の魔羊である。
アレクシスはその点を含め、アシュリーとメリーは組ませておいた方が戦力になると思っている。安心だ。それに、メリーは一般の魔羊より強靭である。下手に野に放逐すれば、他の魔羊を統率し、巨大な群れを形成しかねない。いくら大人しい種類の魔物とは言え、ボスクラスの魔物を野放しにすべきはない。実力は折り紙付きだ。
たっぷりと巻かれた髪を、少し不満そうにみょんみょん引っ張っているアシュリー。女官は「可愛らしいですわぁ」と相好を崩してくねくねしている。たしかにこれだけ見目がよければ、等身大の着せ替えお人形遊びでもしている気分だろう。メリグという同年代の聖女候補もいたが、あれの性格や趣味は強烈で、まちがってもこれほど自由に着飾らせたりできない。
「つ、次は結い髪もしてみましょう! 編み込んで、サイドだけ垂らして巻き髪がふわふわ揺れるように!」
「まだやるのですか・・・?」
「やるのです!」
目がギラギラと光っている。アシュリーは彼女に任せるといっている手前、なるべく協力するつもりではあるらしい。だが、テーブルに置かれたたくさんの装飾品や櫛、ピン、巻き鏝、何に使うかよくわからない器具まである。
「まあ、こちらとしてはこの書面を確認してほしい」
「・・・・これ、わたしの作った履歴書と同じ書式ですね」
「わかり易かったから、今後採用する騎士候補生たちに書かせようと思ってな」
「虚偽申請されないといいですね」
「もちろん、面接時に鑑定や看破のスキル持ちを用意する」
「その方がよろしいかと。今まではどのように採用を?」
「スカウトもあるが、紹介もあるな。これよりも簡単なものしかない。コネ入りの場合など、それこそ何もない時もあるからな・・・・」
「ザルですね」
「いうな。少なくとも私の所属は実力を鑑みたスカウトがほとんどだ」
つまりアレクシスのところ以外の聖騎士たちは、コネ就職ばっかりの所も多いということだ。騎士は一種の名誉職だ。同じ戦士といえど、傭兵や警備兵などとは心証がだいぶ違う。騎士でありながら、教会の看板も背負っている。
「中には武官にも文官にもなれなかった、貴族のボンボンのねじ込みの受け入れ所みたいな場所もあるからな。
平民を露骨に見下して、やっかんでくる連中も多い。そういったやつらは適当に受け流しておけ」
うえーい、どこにでもあるぜ天下り。コネ就職の腐ったミカン箱。
アシュリーは遠い目になった。全力で関わりたくない人種たちである。
「アレクシス様の部下は平民の方が多いのですか?」
「他のところよりは多い程度だろう。聖騎士にはワイトやヴァンパイアといった特殊な魔物の討伐も多い。基本、ある程度の魔力の持ち主でないと厳しい職種でもあるからな。
もちろん、剣一本でやっている奴もいなくはないが、それらは相当な実力者だ」
「確かに、魔法を習う機会のない平民には、いささか重い仕事ですね」
暗くなる前に帰らなきゃと、小さなゾンビは何度かメリーで轢いたことがある。
奴らは基本、脳を叩き潰すか、体をかなり粉々にするかぶつ切りにしないとなかなか倒れない。
「あの魔物たちは、胴体を真っ二つに轢いたくらいでは終わりませんもの」
「・・・戦ったことがすでにあるのか?」
「ウルフゾンビやリビングデッドくらいです。基本脆いので、走っているメリーにぶつかるとホント飛び散って悲惨なんですよ・・・・生活魔法で洗い落とせるようになり、今後対応が楽になりますが・・・」
「あー・・・たしかに。あれは馬で轢いたことあるが、悲惨だな」
「アレクシス様もおありで?」
「ああ、緊急の伝令があり早馬をとばしていたら、茂みから急に現れて、な」
容易に想像できる。
ゾンビ系の魔物は、基本攻撃動作以外が遅い。ひっかくときはそこそこ早く動くが、基本の移動や気配察知は非常に遅い。すでに死んでいる為か、感覚が鈍いのだろうか。
しかも、日中より夜になってから動き回る。こちらの視界が悪くなってからのそのそ動き回るのだ。そしてのろいうえ、脆い。ぶつけた拍子に手足が落ちるのもいる。
アシュリーが初めてゾンビを粉砕したのは、メリーに乗り始めたばかりのころだった。
そんな生態のせいか、ドクロハイエナに集られ食われるのがざらである。
ドクロハイエナは基本、取りやすい魔物や弱者しか襲わないためアシュリーにはおおむね無害扱いだ。狩った魔物の血抜きや臓物を抜いているとき、折角埋めたのをその傍から掘り返して食べ漁る姿が印象的だ。よくウルフ系と取り合っている。
「飛び散るやつはたいてい腐敗が進んで、極めて脆いからな。
馬にダメージもないんだが、精神的なものが半端ない。なにより臭いが凄まじいし」
「わかります。その癖、妙に水っぽくて、腐って蛆が中にたまってると、髪や服の隙間にとんで泣きそうになります」
「ゾンビ系は見たら火属性か光・聖属性で焼き払うのが一番だぞ。
触ると毒や病気になるやつもいるし・・・なにより臭いでその武具が二度と使えなくなることもある」
アレクシスの言葉には実体験があるのか、実に切実な響きが籠っていた。
アシュリーも腐敗したあの臭さは知っている。凄まじいのだ、あれは。拭いても洗っても臭気がすごいのだ。メリーは丸刈りにし、その分の羊毛は処分するしかなかった。
しみじみと、互いの体験をかたるアシュリーとアレクシスには妙な絆が芽生えた。
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