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命がけの恋愛なんてまっぴらです。

初投稿です。

恋愛そっちのけで自称保守派の主人公が、周りに頼りになる人たちがいないせいで迷走・暴走しまくっています。




 望まない立ち位置



 ロブソン村は国境であるゼクラシア山脈をさらに下がった、森林の近くにあるど田舎である。

 村の人口は約100名ほどしかいない小規模集落だ。主な産業は農業と畜産。自給自足で、足りないものは森の恵みや近場の草原、そして月に一度ほどやってくる行商人や、馬でも半日ほどかかる距離にある隣の村から調達するしかない。街ではない。ロブソン村とどっこいの良く言えばのどかな、身も蓋もなく言えば鄙びた村だ。

 そんな風光明媚な場所に雛にも稀な美少女ならぬ、美幼女がいる。

 ふわふわのストロベリーブロンドの髪と、金貨もかすむそりのある睫毛に彩られた黄金色の瞳。白い肌はシミ一つない――まあ子供だからということもある。

 その美幼女の名はアシュリー・ゴーランド。

 畑の作物と、近場の狩りで食い扶持をつなぐ、農家兼猟師の家の娘だ。

 そして前世の名は佐原樹里。アラサーのお宅で、年齢イコール彼氏いない歴をこじらせた喪女である。

 今日も今日とてのどかな村の中で、彼女は絶望を噛み締めていた。

 何故って?

 彼女は知っていた。

 この世界は、乙女ゲームと呼ばれる恋愛シミュレーションゲームジャンルの一つの中の物語であるということを。

 そして、よくある乙女ゲームシナリオの王道ごとく、唐突に珍しい魔力を見出されて王都の貴族も通う学園に通うこととなる。そして、王道のごとくそこには輝かしいイケメンが掃いて捨てても湧いてくるようになぜかいる。その国の王子やら、公爵やら伯爵やらのご子息や、豪商の息子、はたまた稀代の天才魔法使い、騎士の卵、平民のふりをした亡国の皇子やエルフの教師やら、ケモミミショタやらとよりどりみどりのバーゲンセールも真っ青なラインナップであるということを。

 そして、自分はその主人公の『アシュリー・ゴーランド』であるということを。

 ついでに王子をオトすには幼馴染であり婚約者でもある、公爵令嬢とバトらなければならない。時にはいじめられ、庶民だなんだと恫喝され、周りにはひそひそされる――が、普通に考えれば、ど田舎の芋娘が国の一粒種に、しかも高貴な婚約者がいるにもかかわらず、その令嬢を差し置いて纏わりついていればいい気がしないだろう。普通だよね。王子とご令嬢の結婚は、王子の地位を盤石にするためであり、国の契約である。個々に感情はあれど、ノブレス・オブリージュを全うしなければならない。

 公爵子息や伯爵子息も、身分は変われど、ど田舎のぺんぺん草娘がまとわりついていい相手じゃない。

豪商の息子なんて、基本自給自足で生活してきたろくな教養も知識もない小娘が商売の役に立つ気がしない。

稀代の天才魔法使い? 若いうちはいいかもしれないが、そのうち理解できなくなるだろう。天才と凡人は基礎からして違う。

 騎士だって、王族に憶えの目出度い王宮騎士なんて名家に決まっている。王侯貴族なんて陰謀が常に乱気流で発生しまくって絶え間ない。絶対関わりたくない。

 教師との禁断の恋なんて興味ない。異種族狩りに巻き込まれるなんて御免だ。

 亡国の皇子? メッチャ暗殺者がバリバリ来ますが? なんでそんな死に急ぐ必要あるの?

 とりあえずスチルは回収する派の樹里――今はアシュリーである彼女は大体知っていた。

 ゲーム版アシュリーの男を見る目も運も割とクソである。

 命がけが基本とか、どんなアンノウン人生だ。

 玉の輿に命懸け、つーかクソ田舎娘なんて、公爵令嬢差し置いて結婚しようなんて王位継承権とか剥奪されたり、廃嫡されたりするんでないのか? 公爵ってその国でも特にえらい貴族だよね?

 もし結婚しても社交場スキルも、人脈もない、公爵家に目の敵にされているだろうポッと出の聖女というネームバリューしかない人間に何ができると?

 平穏一番、刺激は二番。堅実に生きたい。行きたいじゃなく、生きたい。

 命は投げ捨てるものではなく、大事に取っておくべき保守派な幼女だった。

 転生特典か、ちゃんと自分のステータスは見える。

 だが、悲しいくらい電柱とあひるが乱舞している幼女の現実。

 可愛さなんて、絶体絶命の危機の前では価値はもやし以下だ。

 だが、アシュリーには記憶と云うアドバンテージがある。

 そして、まだ3歳である。漸くよちよち歩きができるようになったレベル1の幼女である。

 アシュリーは、ドラゴンや悪魔やヘルハウンドとバトルする気はない。聖女の目覚めもする気もない。質素堅実に図太くしぶとく生きていく所存だ。製作者チームよ、なぜ乙女ゲームに魔王討伐なんてファンタジーにしてもRPG要素を入れた。

 たしかにこの原作は超大作RPGの美形どものスピンオフ要素でもある。

 おかげでルートによってはアシュリーが魔物と一騎打ちするゴリラになったり、天才も魔王も逃げるアルティメット魔力お化けの聖女になったり大変ヤベー混沌が混じっている。

 アシュリーは入学した15歳から18歳の間の3年間に、ごく普通の少女からステゴロで悪魔を潰す、もしくは圧倒的魔力で粉砕するジェノサイダーになるのだ。主人公補正にしてもヤベーヒロインである。

 3年間でこれである。イベントシナリオ的に、飛躍的に上がるものがあるにしても、大変ヤベー代物である。能力引継ぎなんて2周目要素なんざ使った日には、キラキラ王子様がぴよぴよのひよこちゃんに見えてきて、騎士が微笑ましい駄犬に見える鬼畜の所業だ。もちろん樹里は使った。ステータス上げは面倒なのだ。2周目ならば、1周目狙えなかったキャラクターも楽々である。

 アシュリーは恋愛より自分の命を取る決心、弱冠3歳にして決めた。

 とりあえず、ハイハイでお家をよちよちと這いずり回って毎日体力を1ずつ上げ、とにかくいろいろなものを調べまくって知能向上を目指した。

 椅子でも床でも何でもいい。取りあえず調べまくる。コマンド連打だ。

 最初は『床』としか出なくても、何度も調べれば『木の床』に変わり、しつこくさらに調べれば『ゴーランド家の床。築10年の低級木造住宅の為、やや劣化している』と表示が出る。

 その結果わかったのは、ゴーランド家は普通に貧乏だった。

 3代くらい前は牧畜もあったが、魔物や賊に奪われ食われ、今ではすっかり貧乏農家である。

そして学もないので、今の生活で手一杯である。

 小さな肉片があればマシなスープと、固くて酸っぱい黒パンがデフォである。

 割と泣きたい。小さなアシュリーにパンは固く、お肉があれば兄のベルンが食べてしまう。彼曰く「俺が冒険者になったら、将来もっとうまいもんくわせてやるから!」らしいが、今のところ彼の好きな食糧を略奪され、嫌いな野菜を押し付けられた記憶しかない。

 母のマーサは口では怒るが、無言でアシュリーが不味そうにもそもそと――大人しく食べるのを見ているうちに、ベルンの横暴を黙認するようになった。

 父のゲイルはあまりに目に余ると怒るが、基本スルーのスタンスだ。

 弱者にやさしくない家族である。

 ちなみにマーサはローズピンクの髪に緑の瞳である。なかなか攻めた配色だ。ゲイルは癖のあるくすんだ金髪に金の瞳。ベルンは金髪に緑の瞳だ。見事に配色が分かれている。

 彼らの生活はワンパターンだ。

 朝起きて畑仕事か猟をして、お昼になったら食事、夕方にも食事。ランプの油は貴重なので、日の入りとともに就寝だ。

 健康的だが、その日の糧を生きるのに手いっぱい感が強い。簡単に云えば、進歩のない日々だ。

 そして、その生活に特に疑問も覚えないのか、何か改良を加える気配もなく、変化に乏しい。

 アシュリーは思う。


(わたしはもっと豊かに生きたい。いずれ王都に行くにしても、玉の輿より堅実な生活が欲しい。安定した生活基盤が欲しい)


 保守的なアラサーは、日本の豊かな生活に思いをはせた。

 しかし、まだレベル1である。モンスターなんてほとんどいない。たまに水路に小さなスライムが苔を食べるために流されながら壁に這っているのをみたことある程度。

 そういえば、スライムは雑魚モンスターの基礎である。

 村人にすらスルーされる手のひら大の小さなスライム。

 ベビースライムと云う、スライムの中でもさらに下級のモンスターらしい。

 倒したら経験値とかアイテムがでるだろうか。

 ゲームでは水や粘液をゲットできたはずだ。そして、すごく小金だが薬屋や道具屋に売れるはずだ。

 だが、まだアシュリーは3歳児。頭が大きくバランスも悪く、手足も短い幼児体形の子供である。

 うっかり水路に落ちたら死ぬ。

 アシュリーは来るべき日まで、その野望を胸にしまうことにした。



 


 



 まだまだ不慣れな点があるので、徐々に改善していきたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

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