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勇者に同行する幼馴染の言葉は信用成らない

作者: 結城 祭

 魔物が蔓延り、魔王が世界を侵略する世界。慈悲深い女神は魔王に対抗するために異界より勇者を招いた。そして、その勇者と共に魔王へと挑む者を世界中の人々の中から選ぶ。

 そして何の奇跡か、とある一つの村から三人の同行者が見つかった。


「ごめんねラッテ。あたし勇者様と一緒に魔王を倒しに行くの」

「あ、ああ……」


 魔法を使う者が着るローブに身を包んだ少女が告げた。


「ごめんなさいジャック。わたくし勇者様と一緒に魔王討伐に赴きます」

「お、おう……」


 聖職者の聖衣に身を包んだ少女は告げた。


「ごめん、グレイ。私勇者様と一緒に魔王と戦う事にしたわ」

「そ、そうか……」


 腰に剣を携えた少女も告げた。


「「「あたし(わたくし)が帰ってきたら結婚しましょう! だから待っていてね!」


 彼女達には恋人がいた。幼き頃より共に過ごした愛する者。

 その未来を守るために彼女達は自らの危険を鑑みず、勇者と共に魔王に挑む為旅立った。己が愛する者を守る為に——。






「で、どう思う?」


 少女たちが旅立ち、村に残された男達。彼らも幼少の頃から共に過ごした幼馴染であった。


「どうって、次に帰ってくるのは結婚報告か出産報告だろ」

「同意。寧ろ帰ってこない確立の方が高いと思う」

「「あ~それな!」」


 旅立った少女達、アリス、カレン、クレアのパートナーである彼らは親友同士だ。狭い村だからこそ、同い年の子供が友達になるのは必然だった。


「でも良かったのか? 俺は兎も角お前ら一応恋人だっただろ?」


 グレイの言葉に、ラッテとジャックは苦虫を潰したような顔をしながら口を開く。


「いやぁ、アリスは金銭欲の塊だしなー。僕じゃあいつを養えないよ」

「俺も無理だな。カレンは自己啓示欲が半端じゃない。それにあいつのサディストっぷりはついていけない」


 二人の答えに納得がいったとグレイは頷くが、その姿をラッテとジャックは可哀そうな者を見る視線を向ける。


「な、なんだよ?」


 それに気が付いたグレイは、疑心てきな視線を向けた。


「いや、グレイも大概だろ?」

「クレアも承認欲求の塊でし」


 二人の言い分には、グレイも言い返す事が出来ない。彼自身もそれを認めているからだ。


「だからこそ『勇者のお供』、『剣聖』、『魔を払う者』なんて言われてる現状から唯の村人にはならないだろ」

「「だね~」」


 彼女達にそれぞれ並々ならぬ欲求を抱えていた。そして、この狭い村でそれを最大限満たしてくれるラッテ、ジャック、グレイのパートナーとなったのだ。


「それに魔王討伐って何十年もかかるんだろ? 下手したら互いに爺婆になっちまうよ」

「そうだな。それに俺達家を継げるわけじゃないしな」

「そうだねー、僕なんて早く出ていけって家族の圧力が凄いよ」


 彼らは多少の違いこそあれ、家を継げない三男四男の集まりだ。自らの食い扶持は自分で探さなければならない。

 そして、狭い村の中に彼らが就ける仕事先が有る筈が無かった。それ故、日々の糧を得るためにこの村を出て自立する必要があった。


「取り敢えず、当初の予定より半数になっちまったけど冒険者になるか」

「そうだね、幸いみんな成人の儀で魔器(まき)を授かったから冒険者は俺達向きだね」


 魔器とは、成人を迎える儀式の中で、神様から授かる恩恵の事だ。これを授かるのは極一部の者で、恩恵を受けた者は大成すると言われている。


「二人は良いよね。僕なんかアトラトル(やりなげのアレ)だよ。補助具じゃん!」

「いいじゃねーかよ。槍は魔力で生み出せるんだし、ある意味無限に投げれるだろ」

「そうそう、俺達も大差ないよムチとトンファーだぞ。……色物ばっかだな! はっははっ」


 ジャックが自虐的に笑うが、魔器を授かるだけで有難い事なのだ。それに魔器を使う者が弱かったためしが無い。


「そうだぞ。元手のない俺達には有難い事だろ。それにバランスも悪くない」

「うーん、確かにそうかも」

「それじゃ当初の予定通りダンジョン都市に行くか」


 ダンジョンとは、魔王の力の源となる人間の魂を効率よく集める為に作ったとされる魔窟だ。ただ、ダンジョンには人々の生活に役立つ物が隠されており、それを求めて人々は挑む。

 それに放置すると魔獣が溢れてくるので適度に討伐が必要なのだ。


「でも勇者ご一行様もダンジョンには行くんじゃない? 正直鉢合わせは嬉しくない」

「任せろ。そこは考えがある」


 魔王を倒す勇者も、最初から強い訳では無い。だからダンジョンに挑んで経験を積むのだ。それに、魔王の力を生み出すダンジョンを破壊する事で、魔王の弱体化も狙える。だから、勇者はまずダンジョンに挑んでその最奥にある格を破壊するのを最初の目的とするのだ。


「勇者一行は確実に破壊できる小規模なダンジョンから回る筈だ。だから俺達はグランドダンジョンを目指す」

「成程ね。確かにそこなら勇者一行様は来ないだろう」

「確かにグランドダンジョンの破壊は現実的じゃないしね」


 グランドダンジョンとは、古の魔王が作ったとされる最古のダンジョンだ。その規模は他のダンジョンとは比較に出来ない程強大で、誰も最奥まで到達した者は居ない。だが、低階層であれば他のダンジョンと同じように比較的安全に魔獣を倒せるので人気は高い。

 それにグランドダンジョンの周辺にはダンジョン都市と呼ばれる大きな複合都市が形成されている。強大なダンジョンの近くに街を興すなど危険が付きまとうが、それ以上に利益も大きいのだ。


「だろ。それにダンジョン都市なら大抵のものは手に入るからな。拠点とするにも丁度いいと思う」

「だな。最初は資金集め、次に足場固めだな」

「だね。よく考えたら僕たち解放された?」


 幼少の頃から色々振り回されていた彼らからすれば、今の状況は正に自由を手に入れたと言える。

 ラッテの言葉に、三人は互いを見やり、ニヤリと笑って拳を打ち合った。







 その後、グレイ達一行はダンジョン都市に赴き、様々な騒動を引き起こしながら新たに仲間を三人加え、未踏破領域を開拓するまでに至った。


 因みに、勇者達の活躍は遠いダンジョン都市にまで届き、幼馴染の少女たちは勇者の妾になったとの噂を聞き、三人は「「「やっぱりな」」」と納得したのだとか。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 三人とパーティを組んだのは皆女性ですか? そしてその後はどうなりましたか? [一言] なんというかwin-winな関係になった気がします 勿論幼馴染との縁も切りましたし 向こう側にも…
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