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あたしの結婚式

 あたしとバルドの結婚式です。


 まあ、式にこぎ着けるまで、いろいろとありましたけどね。

 レッドドラゴンや吸血鬼、狼男、ゾンビ、クトルフよりも強敵な姑、親族軍団。

 スラム街出身で、現在無職、貯金ゼロのあたしは平身低頭。

 なんとか許してもらいました。


 


 ウェディングドレス姿のあたし。

 あたしがこんな恰好するとは。

 いまだに信じられないぞ。

 

 けど、もっと早く着たかったなあ。

 バルドにちょっと文句を言った。


「もっと早く、プロポーズしてくれればいいのに」

「いや、君がすごい勢いで出世しちゃうから」

 男のプライドってやつですか。

 あたしが無職になったから、告白したんかい。

 ちっさいなあ。

 まあ、いっか!



「いつからあたしのことが好きだったの?」

「うーん、裸を見た時から」

 ニエンテ村の時か。

 十六歳のときじゃない。

 ちょっとロリコンはいってるんでない? 

 まあ、いっか! 

 大して変わってないし。



「旦那様、なにか、あたしにご注文はありますか?」

「よく君をつけていたことがあるんだが、何やら怪しげな賭博場に入ってたね。ギャンブルはやめてほしい」

 つけてたって、ストーカーかよ。

 よく、後ろから視線を感じたことがあったけど、こいつだったのか。

 危ない奴だな。

 あれ、ピンチな時もあったけど、隠れて見てただけかよ。

 まあ、いっか!


 それに、あたしはいつの間にかすっかりギャンブルから卒業してしまった。

 やっぱり、心の隙間がふさがれたのかしら。

 


 サビーナちゃんとダリオさんが来た。

「プルムさん、すっかり女らしくなりましたね~」とサビーナちゃんがニコニコ笑う。

 でかい胸を見せつける。

「アハハ、そう」

 このオンナー! 今までのあたしは女じゃなかったんかい! 

 まあ、太っても可愛いから許すよ、サビーナちゃん!

 ダリオさんは完全にハゲちゃったな。

 それでも、カッコいいけど。



 おっと、式場に、えらくいい香りがしてきたぞ。

 なんかスゲー眩い光が。

 おお、女神が舞い降りてきた。


 クラウディアさんまで来てくれた。

 ちょっと薄化粧してきたぞ。

 神々しくて、目が痛い。

 今日のファッションは清楚な恰好。

 白いブラウス、紺色のスカートにぺったんこの靴。犬がないぞと思ったら、短い靴下の横に犬柄の刺繍。小学生かよ。地味。それなのに花嫁のあたしより一億倍目立っているぞ!


「プルムさん、バルドさん、おめでとうございます!」

「クラウディア様、ありがとうございます! 懲戒免職になったあたしの結婚式に出てくれるなんて、嬉しいです」

「それが、私もクビになりまして」

「えー! どうしてですか」

「分限免職になりました」

「分限免職って何ですか?」

「簡単に言うと、無能だからお前はいらないということですね。かばってくれていた王様が退位しちゃったので。即行でクビになりました。それに、私は前から『参事官』じゃなくて、『惨事官』って、陰で呼ばれていたみたいですよ、ウフフ!」

 クラウディアさん、ウフフとか笑ってるけど、いいのか。

 後、『惨事官』って自覚してたんかい。


 そうそう、イガグリ坊主頭の王様は突然退位した。

『王様辞めるよーん。働いたら負け! 朕は勝っている』という言葉を残して。

 ふざけとる。

 まあ、皇太子殿下が新たに国王になられるので、これからは、このナロード王国もいい国になるでしょう。


「これから、どうするんですか」とクラウディアさんにあたしは聞いた。

「ヨガ教室でも開こうかなと思ってたんですが、プルムさんのウェディングドレス姿を見たら、私も結婚したくなっちゃった! もう三十三歳だし」

 そのセリフを聞いた途端、クラウディアさんの周りに男どもがむらがる。

 あたしはぶっ倒される。

 花嫁のあたしを踏んづける奴もいる。

 美人には勝てまへん。


 それにしても、クラウディアさん、三十三歳だったのか。

 全然若い。

 初めて会った時と、全然変わらん。

 むしろ若くなっている。

 十代後半に見えるぞ。

 まさかクトルフか。

 いや、まさにクトルフ以上に不思議な存在。

 世界遺産に登録したらどうだ。

 いっそ世界新七不思議に入れたらどうかって感じだ。


 バルドに助けられる。

「なんなんよ、あの人たち」

 男どもはクラウディアさんに名刺を渡したり、自己紹介している。

「会社の連中かな、あんな綺麗な人いないからね」

 むむ、何だと!


「バルドもクラウディアさんのほうがいいんでしょ」ちょっと嫉妬するあたし。

「俺、あの人、にがてだなあ、プルムのほうが断然いいよ」

「え? ホントに! ホントに!」嬉しいー!


「あんな美人が家に居たら落ち着かないよ。窒息死するかもしれない。プルムなら大丈夫だからなあ」

 あたしは美人じゃないってことかよ! 

 事実だけど。

 まあ、いっか!



 ちなみにアデリーナさんは欠席。

 実は、魔法禁止令の時以来、疎遠になってしまった。

 仕方が無い。

 これも人生かな。

 


 リーダーとミーナさんがやって来た。

「プルム、おめでとう」

 ああ、やっぱり素敵。

 あたしの理想はやっぱりリーダーよ。

 え? もう浮気かよって? 違いますよ。

 理想は理想。

 現実は現実。

 もう、あたしも大人なんよ。

 理想と現実を一緒にはしない。



 さて、ブーケトスだ。

 ついにあたしが花束を投げる方になったのだ。

 感激!


「昔、これでプルムにボコボコにされたことがあったなあ」とバルドがなんとなくしみじみとした顔で言った。

「そんなことあったっけ。ああ、リーダーとアデリーナさんの結婚式のときか、アハハ!」と笑って誤魔化す。



 え? これからいろいろと大変じゃないかって? お前に子育てできるんかって? 

 そんなことは百も承知よ!

 今は、この幸せを楽しむんよ!

 とにかく、ハッピーエンド!

 キャッホー! 


 あたしはみんなに向かって、花束を高々と投げた。

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