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ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険  作者: 守 秀斗
第一章 うら若き十六歳の夢見る乙女/レッドドラゴン編
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第五話:盗賊討伐隊、ドラゴンにやられて壊滅

 ベッドでホラー小説読んでたら、いつの間にかあお向けで大の字になって、スカーっと昼寝してた。


「痛!」

 ベッドから床に落ちて目が覚める。

 あたしは寝相が悪いんよ。


「ん? 何か下が騒がしいぞ」窓から覗くと、村の中を通る街道に盗賊討伐隊が傷だらけで戻ってきた。

 あたしは慌てて宿屋から出て、野次馬の村人に聞いた。

「いったいどうしたの? みんな半死半生じゃない」

「ドラゴンが出現して、討伐隊はあっと言う間にやられたみたいだ」

「ひえ、ドラゴンが出たの!」

 ドラゴンなんて滅多に出ないよ、いったいどうなってんの。


 村を通る街道の一番奥にある集会場を解放し、戻ってきた盗賊討伐隊のケガ人の手当てをする。

 集会場の前には大きい空地があるので、軽傷の人はそこで治療。

 こりゃ野戦病院だな。

 さすがにあたしも手伝う。


 うちのパーティも全員ボロボロ。

 みんな声も出せないほどの重傷で、集会場に横たわってる。

 特にサビーナちゃんがひどい。

 全身黒焦げ。

 ドラゴンが口から放った炎にやられたらしい。

 ああ、サビーナちゃんのかわいい顔がもう……。


 サビーナちゃんが、かわいそうで、かわいそうで、涙目のあたし。

 ドラゴン許せん! 絶対ぶっ殺す!

 どうやって手当をしようかと戸惑っていると、

 ん? 何かいい香りがしてきた。

 あれ、何か眩い光が照らされてきたぞ。


「皆さん、傷の具合はいかがですか」と女性が話しかけてきた。

 おっ、絶世の美女現る。

 それにしても、何ですか、この美人は。

 女から見ても凄い美人。


 目鼻立ちの整った美しい顔に緑の瞳が素敵。

 長いストレートの金髪。

 後光がさしているぞ。


 鈴を転がすような声。

 声まで美人。

 全体的に大人っぽいけど、頭に白いカチューシャを付けている。

 よく見ると、カチューシャの端っこに犬のイラストが描いてある。かわいい。そこだけお嬢様っぽい。

 スタイルも抜群。


 美しすぎる美人クレリックの登場です。

 完璧美人だ。

 けど、一般のクレリックのような長い法服は着ておらず、政府の軍服のようなダークグレーのスタイリッシュな制服を着ている。

 着ている服も装飾品も全部高級品っぽい。どうやら王国政府内部でも偉い人らしい。偉い人がなぜこんなド田舎に? ドラゴンが出たからか? それにしては用意がいいけど。


 完璧美人さんが何やら呪文を唱えて、手をかざすと神聖魔法でみるみる傷を治していく。

 神聖魔法とは凄いもんですね。

 あたしの万引き技とは天と地の差があるなあ。


 サビーナちゃんの顔が元の通りのかわいい顔に戻った。

 手足も元通り。

 ちょっと、青白いけど。

 あたしは素直に喜んだ。

 嬉し涙がドーッと出る。


 え? お前さぼってたんじゃないかって? さぼるのと仲間を心配するのは別よ!

 完璧美人さんはリーダーやバルド、アデリーナさんの傷もあっと言う間に治してしまう。

「一応治癒しましたが体力が回復するまで、皆さん、しばらくこの場で身体を休めることにして下さい」


「本当にありがとうございます!」とあたしはペコペコしながら、完璧美人さんにお礼を言った。

 すると、完璧美人さん、あたしの方を訝し気に見ている。

 えっ、何かあたし失礼なこと言ったかな。

 それとも、さぼったのがばれたの?


「では、私は他の負傷者の方々も見てまわりますので、これで失礼いたします。あと、何かありましたら集会所の二階の部屋に泊っておりますので」

 優雅に歩いて、他の負傷者の手当に向かう完璧美人さん。

 あの人は王国情報省所属だと他の冒険者さんたちが噂している。

 情報省? スパイ? 何か怖そう。

 まあ、あたしには関係ないからいいか。


 それにしてもドラゴンなんぞ出現したら、もう店じまいね。

 あたしらの代わりに、えーと、何だっけ、もう忘れた。ナイアル何とかいう洞窟に潜むモンスターを退治したパーティも見かけないところ、ドラゴンにやられたみたい。


 あたしがパーティのみんなの寝床を用意していると、見覚えのある男が声をかけてきた。

 アデリーナさんの知り合いのイヴァーノ、何だっけ。下の名前忘れた。魔法使いのイヴァーノさんだ。

「アデリーナ、俺たちはもう帰ることにした。ドラゴンには敵わないよ。皆さんもお大事に」

「そう、さよなら」何となく冷たい態度のアデリーナさん。

 昔、この男と何かあったのかね。


「さて、これは私たちも撤退でしょうか」とあたしはみんなに聞いた。

「冒険者仲間がやられたんだ、このまま引き下がられるかよ。そうだろ、リーダー!」と意外にも熱いバルド。普段はボーっとした感じなんだけど。

「お、おう」相変わらず優柔不断そうなリーダー。

「私もこのまま残ります」とアデリーナさん。

「知り合いがやられたんです。私も残ります……」青白い顔をしながら、小さい声で話す健気なサビーナちゃん。


 無理しなくていいのに。

 みんな真面目だなあ。

「俺たちはここで休むから、プルムはもう宿屋に帰っていいや」とリーダー。

「分かりました。では、私はこれで失礼いたします。皆さん、お大事に」と言って、あたしは集会場から出た。

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