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ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険  作者: 守 秀斗
第一章 うら若き十六歳の夢見る乙女/レッドドラゴン編
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第三話:冒険者ギルドが襲われた

 夕方、アデリーナさんに会計担当者として、冒険者ギルドに組合料を払いにいくよう頼まれた。

「いってきます」とあたしは冒険服に着替えて、宿屋を出発。

 宿屋から冒険者ギルドを目指す。


 今は、秋。

 夕方近く、街道を歩いているときれいな夕焼け空が見える。

「きれい」とあたしはつぶやく。

 あたしはきれいなもの、美しいものに弱いんよ。

 惹きつけられる。

 永遠に見ていたい。


 さて、しばらくきれいな景色を眺めながら歩いていると、街道途中の賭博場が見えてきた。

 うーん、こちらにも惹きつけられる。

 賭博場も美しいのかって? いや、美しくはないけど、やっぱり惹きつけられちゃうんよ。

 え? ギャンブル依存症? うむむ、そうかもしれん。


 うーん、困ったなあ。今、懐が温かいんよ。

 ダメダメ、これはみんなから預かった大切なお金。

 ちゃんと冒険者ギルドに納めないと。

 ダメダメと言いながら、

「少しくらい、いいか」と体が賭博場に吸い込まれた。


 ……。

 賭博場から放り出された。

「イカサマだあ!」とわめくあたし。

「おととい来やがれ!」と賭博場の用心棒にどつかれ、街道からはずれて草むらにゴロゴロと転がる。

「痛!」

 薔薇の花やら何やらのトゲで顔を切った。

 踏んだり蹴ったり。

 組合費も自分のお金もギャンブルで全部パーにしちゃった。

 どうしよう。


 トンズラしちゃおうかな。

 う~ん、だけど、もともとギャンブルに負けて借金取りから逃げ回ったあげく、こんなド田舎に来たんよね。

 もう逃げるところは山奥しかないじゃん。


 悩んでると、突然、冒険者ギルドの方が騒がしくなった。

 何事かと、草むらに隠れて様子を見ていると、馬に乗った黒装束の怪しげな連中が街道を走り抜けていく。

 ん? あたしが隠れている草むらの前を通り過ぎたとき、何か落としていったぞ。

 拾ってみると、丸くて平べったいペンダント。

 何だか安っぽいペンダントだなあ。

 だけど、ドラゴンのデザインはかっこいい。かっこいいので貰っておこっと。おしりのポケットに入れておく。


 冒険者ギルドに行って、情報収集。

 大勢の村人たちが集まっているぞ。

「何が起きたんですか」とあたしは見物している村人たちに聞く。

「冒険者ギルドが盗賊らしき連中に襲われたらしい」と村人の方々。

 冒険者ギルドに何か宝物でもあったのかな。


「ギルドの主人が殺されたらしいですよ」

「あらまあ、それはかわいそうに」

 かわいそうと思いつつ、

 ひらめいた! 

 博打でスッカラカンの件は、盗賊のせいにしよっと。


 あたしは宿屋に帰ると、フラフラしながらリーダーのいる部屋に入り、倒れこむ。

 もちろん演技。

「大変……冒険者ギルドが何者かに襲われたの……ギルドの主人が殺されたみたい」

「大丈夫か、プルム、顔が傷だらけじゃないか」とリーダーが優しく抱き起こしてくれる。

「ケガは大したことないです……」

 薔薇のトゲだから、大したことないのは当たり前ね。


「さっき、馬が何頭か街道を駆け抜けて行ったが、そのことか」とバルド。

「……預けたお金も奪われたみたい、申し訳ありません」

「いや、これは仕方がない、気にするな。組合料の件はギルドに少し待ってもらおう」

 リーダーありがとうございます!


 自分の部屋に戻って、アデリーナさんに顔のケガを手当てしてもらう。

「大した傷じゃない、痕は残らないでしょう」

「ありがとうございます、アデリーナさん」とお礼を言う。


 廊下からゾロゾロと人が歩く音がして、隣の二〇三号室に入った。

 新しい宿泊客かな。

 二〇三号室との中扉が開く。

 まずい! 鍵を閉めとくの忘れてた。


 かっこいい魔法使いの服を着ている男が入ってきた。あたしらを見るなり、「おっと、失礼」と扉を閉めかけると、

「イヴァーノじゃない」とアデリーナさんがその男に声をかけた。

「何だ、お前も呼ばれたのか」

 アデリーナさんと知り合いかな、この男性は。


「呼ばれたって、どういうこと」

「盗賊が出たんで、討伐隊を結成するからって呼ばれたんだけど」

「そう、知らなかった」

「まあ、お前も参加するなら、よろしく」とイヴァーノと呼ばれた男は顔を引っ込めた。


「アデリーナさん、あの方を知ってるんですか」とサビーナちゃんが聞くと、

「名前はイヴァーノ・アルベリーニ。ちょっと、知ってるだけ。あの人も魔法使いだけど、いい加減なところがあるから、あんまり好きじゃない」と厳しいご発言のアデリーナさん。もしかして、男嫌い?


 アデリーナさんがリーダーに討伐隊の件を報告しに行った。

 中扉の鍵がなぜか開いていたことは、うやむやに。助かった。

 それにしても、盗賊討伐隊か。もし、うちらのパーティが参加するなら、もうちょっと調子の悪いふりをしておこうっと。

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