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ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険  作者: 守 秀斗
第五章 うら若き二十歳の勝負どころの乙女/アトノベル騎士団の呪い編
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第四十六話:フランチェスコさんに告白

 なんだか、また表彰されることになった。

 何故だろう。

 レッドドラゴンの時は、あたしが退治したことになっているし、クーデターが発生したときはあたしが主導して鎮圧したことになっている。

 実際は、ドラゴンなんて倒してないし、クーデターの時もラーメン屋の二階でちょっと銃撃戦やっただけ。

 どういう基準で表彰されるのかよく分からん。


 バルドも一緒に表彰。

 バルド活躍したっけ?

 あの偽物古書をゴミ箱から拾ったのと、うたた寝していたクラウディアさんを見つけたくらいだけど。

 

「あーキミ、キミ、今回の働き、褒めてつかわす」

「ありがたきお言葉、光栄の至りでございます」といつも通り頭を下げつつ、型どおりに答える。

「あーそれから、キミ、来年度から安全企画室長ね、ヨロシクー!」と王様に言われた。

 何じゃ、安全企画室って。

 ああ、前にクラウディアさんが言ってた、情報省の楽な部署の事か。

 とりあえず、どうでもいいや、来年度の話なんて。

 フランチェスコさんも表彰のはずなんだけど、居ないなあ。

 遅刻でもしたのか。


 あたしが、周りをキョロキョロしていると、

「フランチェスコさんは、表彰を辞退したそうだよ。そういう立場ではありませんって」とバルドが教えてくれた。

 なに、じゃあ、もう帰っちゃうのか。


 部屋を飛び出すあたしにバルドが声をかける。

「おい、プルム、下賜品は」

「寮に届けておいて、あたしは急ぎの用があるんよ!」 

 足首痛いけど、そんな事どうでもいい。


 言ってなかったけど、実は、今回は入念に情報収集したからね。

 クラウディアさんのコネを使って、会った次の日から情報省に身辺調査させたから。

 もちろん、恋愛目的なんて言ってない。

 バレたらクラウディアさんに怒られちゃう。


 フランチェスコさん、恋人無し、婚約者も無し、片思いしてる人も無し、男が好きなわけでもないし、実は女ってわけでもない。

 わからないのはどんな女性がタイプかってこと。

 けど、脈はあると思うんだ。


 ああ、けど、もしかしたら、いわゆる勘違いの吊り橋効果かもしれん。

 いや吊り橋も補強して、鉄鋼製とかコンクリート製の橋にすればいいんよ! ってわけのわからないことを考えるあたし。


 え? 情報省に身辺調査させるなんて純愛っぽくないって? うるさい! あたしが純愛と言えば純愛になるの!

 出会ってから、一週間も経ってないだろって? いいの、恋愛に時間は関係ないの! 一秒だろうが、一か月だろうが、一年だろうが、十年だろうが、百年だろうが、千年だろうが関係ないんよ!


 警備隊庁舎に戻ったら、もう、置いてあった資料を持って、すでに帰ってしまったとサビーナちゃんから聞いた。

 何も言わないで帰ってしまうなんて、やっぱり、あたしの事なんてどうでもいいと思っていたのだろうか?

 いや、とにかく、どう思っていただけでも聞きたい。

 こうなったら、教皇庁まで追いかけるぞ! と庁舎を飛び出す。

 そしたら、すぐに偶然見つけた。

 これは恋の女神の仕業だぞ!


「フランチェスコさん!」とあたしが呼ぶと、荷物を持ったフランチェスコさんが振り返る。

 スポルガ川の近くの桜並木。

 桜の木の下。

 桜の花が舞う中、絶好のロケーション!

 えい! こうなったら、突撃だ!

 って、何て言おうか! 

 もう、単純でいいや!


「好きです!」

 胸に飛び込む。

 フランチェスコさんに抱きしめられる。


 やったあ! 相思相愛よ! 純愛成就よ!

 フワ~っと頭が真っ白。

 告白した男の人にしっかりと抱きしめられるのなんて初めて。

 何秒経ったのか、何時間経ったのか、何日経ったのか、わからない。

 しばらくして、離れる。

 

 キャッホー!

 あたしの恋愛物語もハッピーエンド!

 この物語もこれで終わりね。

 ご愛読ありがとうございま~す。

 って読んでる人いたのかな?


「プルムさん」

「は、はい」

「すみません、抱きしめてしまって」

「へ?」

「僕には資格がありません」


 えー! 資格って、いつから恋愛に資格が必要になったの?

 もしかしたら恋愛免許証ってのが必要になったの?

 教習所には意地の悪い教官から、イヤミとか言われながらみんな取得してんの?


「わ、私じゃ、ダメなんですか」

「いや、プルムさんが悪いんじゃなくて、そうじゃなくて」

「じゃあ、どうしてですか!」


「僕は出家するんです」

「は? 出家?」

「神に使い、妻をめとることは一生できません」


 桜散る。


 フランチェスコさんが見えなくなるまで、ずうっと見送るあたし。

 見えなくなった。

 あたしはがっくりと膝を落とす。

「働いたら負け!」がモットーのあたしだけど、

「恋愛したら負け!」なんてやだよー!

 号泣するあたし。


 しょんぼりとして寮に帰る。

 ん、部屋の前に荷物があるぞ。

 御下賜品と書いてある。

 ああ、例の王様がくれる褒賞品か。

 椅子に座って、中を開けるとオルゴールが入っていた。

 ゼンマイを回すと、あら、台の上のかわいい男の子と女の子の小さい人形がくるくると回って、踊り始めた。

 かわいい。

 失恋のショックがほんの少し癒される。


 あれ、よく見ると、このオルゴールに少し汚れがある。

 この国の王室は貧乏なのか。

 だいたい、どうもこの下賜品とやらに統一感がないなあ。

 万年筆とか双眼鏡にオルゴール。

 まあ、かわいいからいいか。

 眺めてなごんでいたら、最後に人形同士がキスして、ゼンマイが切れた。

 ガクッときて、椅子からずり落ちて床に寝そべる。


 人形に先を越されてしまった。

 今のあたしには嫌がらせにしか感じないぞ。

 もう疲れた。

 何もする気が無いぞー!

 床の上で、そのまま寝る。

 次の日、風邪ひいた。

 足首も痛い。


 今日は休むぞ!

 ヨガでもするか。

 やれやれ。

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