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ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険  作者: 守 秀斗
第四章 うら若き十九歳の困惑する乙女/クーデター発生編
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第四十話:いろいろと落ち着かないあたし

 次の日、またジェラルドさんが職場の部屋にやって来た。

「プルム小隊長」と呼びかけられる。

「はい」緊張するあたし。

「ちょっと会議室で相談したいことがあるんですが」


 ドキドキする。

 いや、単なる勘違いかも。

 ジュスタおばさんは、ジェラルドさんがあたしを見てたって言ったけど、実はあたしのアホ毛が気になって、思わずじっと見てただけかもしれん。


 また二人っきりで会議室。

 勝手に緊張するあたし。

「昨日の件ですが、情報省のクラウディア参事官に連絡しました」

「あ、そうですか。とりあえず、この件はもう情報省におまかせしたらどうですか」

「一応そうするつもりです。クラウディア参事官からは、この件は内密ってことにして下さいと言われました。プルムさんにも伝えて下さいとも」

「わかりました。ところで、チェーザレさんを殺した犯人の捜査の方はどうなんでしょうか」

「今のところ全く進んでいないんですが、私が考えているのは、やはり、クーデター計画の関係者じゃないかと思っています」

 チェーザレがクーデター計画について、ジェラルドさんに伝えようとしたのを知った犯人が殺したのだろうか。

 犯行の動機としては合っているけど。


「そうすると、ジェラルドさんも危険ってことですよね」

「そういうことになります」

「充分、身辺にお気を付けください」


 さて、話が終わって会議室を出ると、またジェラルドさんに廊下で呼び止められる。

「プルムさん、ええと、その……」

 何だろう。

 何、え、告白、まさか、何だろう。

 ドキドキするぞ。

 今、廊下ではあたしとジェラルドさんだけ。

 

「実は……」

 その時、チャラ男ことロベルトが廊下に顔を出し、

「プルム小隊長殿、電話っすよ~」と間抜けな声であたしを呼んだ。


「あ、いいです。すいません」

 慌てながら走って自分の小隊の部屋に戻って行くジェラルドさん。

 チャラ男、邪魔すんなよ!

 

 机に戻って、電話を取ると、

「こんにちは、プルムさん!」と美しい声が。

 クラウディアさんだ。


「プルムです。何でしょうか、クラウディア様」

「あの~こんな事、プルムさんにしか頼めないので電話いたしました」

「へ? 何ですか?」

「アレサンドロ大隊長のご自宅の番号お教え願いませんでしょうか。本当はこちらにも資料があるはずなんですが、見当たらなくて、失くしちゃって、あのー、そのー、他の職員に聞くのも恥ずかしくて」

 電話口でオロオロしてる。

 大丈夫か、情報省参事官殿。

 オロオロお姫様と呼びたくなる。


 なぜ自宅の番号が知りたいんだろう?

 あと、番号教えるついでに、クーデターの件も聞こうと思ったがやめた。

 あまり関わると面倒だ。

 仕事が増えちゃう。

 働いたら負け!


 とは言え、ちょっとあたしも赤ひげのおっさんが気になってきた。

 クーデターとは反乱を起こして政府を乗っ取ることとジェラルドさんに教えてもらったけど、もう少し詳しく知りたい。

 分隊長の机の上で難しい規則集を読んでいる、インテリのバルドに聞いてみる。


「ねえ、バルド、クーデターって何?」

「政府内の不満分子が現政権をひっくり返して、権力を握るのがクーデターだな。革命と違うのは、一般市民が参加していない点かなあ」

「ふーん」よくわからん。


「で、プルムは何でそんな事聞くの」

「えーと、今読んでる小説に出てきたんよ」と誤魔化す。


「警備隊は関係ないよね」とあたしが聞くと、

「いや、軍隊が起こすのが普通だけど、警備隊や一般人の政治活動家も加わる場合もあるよ」

「クーデターってどんな感じで起きるの?」

「まあ、政府の重要人物の逮捕や施設を占領するのが普通だな」

「ふーん」いまいちイメージがわかないな。


 いろいろと考えていると、クーデターの件やらチェーザレの件やらジェラルドさんのことが一緒くたになって、何だか落ち着かない。

 落ち着かないまま机に座っていると、ロベルトがドサッと大きな音を立てて、書類をあたしの机の決裁箱に置く。

 一瞬、ビビるあたし。


「ジェラルド小隊長、いい男っすねー、プルム小隊長殿はどう思いますか?」といきなり聞かれて、オタオタするあたし。

「そ、そうね、美男子ね」とろくに喋れん。


 しかし、チャラ男ことロベルトはそのまま席に戻った。

 単に、挨拶がてらに言っただけか。

 チャラ男の奴、ビビらせんなよ。

 しかし、ちょっと気になってきたので、アレサンドロ大隊長の様子でも見てくるかと、いつもはサビーナちゃんに書類は持って行ってもらうんだけど、あたしが持って行く。


「失礼します」と大隊長室に入る。

 決裁文書を決裁箱に置くと、ただうなずく赤ひげのおっさん。

 うーん、いつもと変わらん感じだ。

 特に変わった様子は無い。

 と思ったら、あれ、机の上に首都メスト市の地図を広げて見ているぞ。

 官庁街の部分とかを赤線で引いている。

 怪しいぞ。

 要注意だな。

 しかし、赤線なんて引いている段階なら、まだクーデターは起こさないだろう。


 翌日は、休日。

 モヤモヤを解消したい。

 朝っぱらから、スキップして賭博場へ。

 モヤモヤしなくても行くけどね。

 

 朝でもやってる珍しい店が、ゲッ! 改装中。

 仕方が無い。

 王宮の向こうの賭博場へ行くか。


 ん? 背後から視線を感じる。

 サっと振り向く。

 誰もいない。


 気のせいかと思ったら、あれ、前方に見たことあるおっさんが歩いている。

 ブルーノ元中佐だ。

 また、「ドラゴンキラー」とか嫌味を言われるかもしれないので、久々のシーフ技!

 壁隠れ。

 と言っても、王宮の壁に向かってうつ向いているだけ。


 あたしには気づかず通り過ぎた。

 無職だからヒマなのかね。

 王宮前の大通りにあるラーメン屋に入って行った。

 朝からラーメン食うのか?

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