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ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険  作者: 守 秀斗
第四章 うら若き十九歳の困惑する乙女/クーデター発生編
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第三十七話:チェーザレに機関銃罵倒攻撃

「おい、プルム」と声をかけられた。

 来たなあ、チェーザレ以下セクハラバカ三人組。

 よし、必殺! 機関銃罵倒攻撃開始!


「うるさい! 話かけるな、こっち見んな、近づくな、あっち行け! この鼻くそ男、世界で一番のブ男、今世紀最大のアホ、来世紀最大のバカ、偏差値ゼロ、太陽が西から昇ると思っているバカ、世界の女性の敵ナンバーワン、低脳、変態、痴漢、のぞき魔、下着泥棒、体操着泥棒、ハイヒール泥棒、上履き泥棒、自転車のサドル泥棒、若ハゲ、キモデブ、地下アイドルストーカー、年齢イコール恋人いない歴の男、本棚に薄い本しかない男、エロゲを積んでたタワーが倒れて頭打って大怪我した男、ゴキブリ、カマドウマ、ダンゴムシ、セアカゴケグモ、ヒアリ、ウジ虫、ダニ、シラミ、寄生虫、サナダ虫、アニサキス、ばい菌、虫歯菌、水虫、クトルフ、人類誕生以来の最低男、生物界で最低の不潔な生き物、お前らなんて海底深く沈んで深海魚のチョウチンアンコウに喰われろ、ついでに宇宙の果てまで飛んでいけ、最後はそこらへんの水溜りで溺れたあげく、三歳の子供が乗った三輪車に轢かれて死んじまえ!」

 あらん限りの言葉を使い、罵倒した。

 ふう、疲れた。


 あれ、よく見るとチェーザレしかいない。

 黒い背広で、ノーネクタイの恰好。


「今日はアベーレとベニートはいないの?」

「もう、先に故郷へ帰ったよ」

 チェーザレはあたしの機関銃罵倒攻撃をあっさりとスルーして答える。


「なんで?」

「仕事がうまくいかなかったからさ。俺もあとひと仕事して帰るよ。ちょっとした噂があってな」

「そうなんだ」

「小隊長に昇進したんだろ、おめでとう」

 何だよ、チェーザレの奴。

 また、ひっかけるつもりか。

 あたしは警戒する。

 騙されないぞ。


「お前、表面的にはふざけているけど、実際は真面目だしな。あんまり悩むなよ」

 な、なによ、勝手にシリアスモードにして。

「そうだ、この間、借金取りが来たぞ。お前を探しに」

「えー! こ、ここまで追いかけてきたの!」とビビりまくりのあたし。

「俺が代わりに払っといてやったよ」

「え! そんな、払うよって、今、持ってないけど」

「いいよ、別に」

「いや、払うから、必ず。もう少し待って、返せるくらい貯金がたまるから」

「今じゃなくていいよ。暇ができたら故郷に寄ってくれ。そん時でいいよ」

「そう、ありがとう……」

「プルム、お前は故郷の誇りだよ。頑張ってくれ、陰ながら応援してるよ」

「え?」戸惑うあたし。

「じゃあな、元気でな」となんとなく寂しげに去っていくチェーザレ。


 なによ、気が抜けたじゃない。

 チェーザレはお別れの挨拶にきたのか。

 借金まで立て替えてくれた。

 そのチェーザレに対して、あの機関銃罵倒攻撃。

 ちょっと酷すぎたか。

 どうしよう。

 なんだか悪い事した。

 うーん……謝ろうっと。


 あたしは、今来た道を引き返した。

 さっきのトイレも探してみる。

 ちょうど男が出てきた。

 またセルジオ元大佐に会う。


「なんだ、ドラゴンキラーじゃないか、なんで男子トイレに入るんだよ。ああ、お前は男だったのか、ギャハハ!」

 ふざけんな! おっさん、嫌な奴。

 相変わらず酒臭い。


 あたしが、ムッとしていると、

「何だよ、文句あんのか。俺が無職と馬鹿にしてんのか」と絡んでくる。

 やっぱ軍隊クビになったんだ。

 質の悪いひとやね。

 人生ヤケクソって感じ。

 

 チェーザレを探したけど、結局、見つからなかった。

 仕方がない。

 いつか、故郷に帰ったら謝りにいくことにしよっと。


 あれ、そう言えば、あたしバルドに何か聞こうとしていたんだけど、忘れちゃった。

 何だっけ。

 ナタがどうしたこうしたって?

 なんで鉈についてバルドに聞かなきゃいけないんだ。

 どうでもいい話だな。

 面倒くさい。

 忘れよう。

 忘れていいのか?

 うーん、まあ、いっか!

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