表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険  作者: 守 秀斗
第二章 うら若き十七歳の可憐な乙女/ドラゴン秘儀団残党編
21/83

第十九話:チェーザレ以下バカ三人組とまた会う

 今日は非番。

 外は雨。

 寮の部屋で、サビーナちゃんとトランプゲームをしながら、ラブレターの文章を考える。

 なかなか、思いつかん。


 サビーナちゃんが昼寝してる間に、やっとラブレターを書く。


『こんにちは! 突然のお手紙失礼いたします。私の想いをお伝えしたかったため、お手紙を出させていただきました。実は、デルフィーノさんのことが以前から気になっておりました。もしできれば、私とお付き合いしていただけませんでしょうか? プルム』


 散々考えて、こんだけ。う~む、冴えない。地味。平凡。

 やはり、あたしは頭が悪い。けど、これが精一杯。

 仕方がない。

 せめて、封筒だけはかわいいのにしよう。


 お、小雨になったな。

 サビーナちゃんを起こさないように、そっと部屋を出る。

 傘をさして、文房具屋に。

 あんまりかわいいのが無いなあ。薄い桃色の封筒にした。まあ普通だな。


 帰り道。

 雨が強くなっている。

 あ、封筒がちょっと雨で濡れちゃった。

 少し、イライラ。

 ん? 背後から視線を感じる。

 サっと振り向く。

 誰もいない。


 気のせいかと思ったら、

「おい、ドラゴンキラー」と呼びかけられる。

 この声は例のバカ三人組だ。

 いつの間にか、目の前にチェーザレとその子分のアベーレとベニートが傘もささずに立っている。


「何か用すか」とあたしは興味なさそうに返事をする。


「お、何だ、そのピンク色の封筒は、ラブレターでも出すのか」とチェーザレがヘラヘラ笑いながら言う。

「ち、違うんよ!」

 こいつ、勘の良さだけは一流だ。


「誰に出すんだよ、俺にラブレター出すなら、いま受け取ってもいいぜ」

「あんたに出すわけない。これは大切な人に渡すんよ!」

「つまり、ラブレターを出すんだろ」

 あわわ! くそう、誘導尋問に引っかかってしまう。腹立つー!

 しかし、抵抗するぞ。


「違うって言ってんでしょ!」

「見込みのない奴に渡しても空しいだけだぞ」

「何だと! 見込みがないかどうか、まだ分からないじゃない!」

「やっぱりラブレターを出すんじゃないか。なに、誤魔化してんだよ。お前はアホか!」

 ギャハハと笑うバカ三人組。

 ああ、また引っかかってしまった。


「うるさい! あっち行け!」

 イライラするー!


「そう怒るなよ、いいことを教えてやろう。相手が怒った時、その瞬間こそ、相手に隙が出来たときだ」

「はあ?」

「そして、相手の一瞬をつく。分かったな」

「何のこと言ってんの、格闘技でもやってんのかよ!」


「まあまあ、俺たちもついに情報屋として活動を始めたんだ。何なら、お前の好きな奴の身辺調査をしてもいいぜ」

「あんたらなんかにまかせられんよ! 情報屋とか訳の分からないインチキ商売なんて」


「だから、怒るなよ。いろいろと情報を教えてやろう。去年、戦争があったけど、近衛連隊が一番戦死者を出したらしい」

「そんな事知ってるわい」


「いや、それで論功行賞に不満持っている兵士が多い。全然無いらしいぞ。まあ、領土が増えたわけじゃないから仕方が無いか。近衛連隊の兵士に知り合いがいるんだ。直接聞いたぞ」

「そんな情報、新聞にでも書いてあるでしょ。何が情報屋よ」

「ああ、お前、新聞とか読むのか。マンガしか読んでなかったのに」

「いつまでも子供じゃないわよ、マンガなんて卒業したんよ」

 本当は、全然、卒業してないけど。


「じゃあ、もう一つ、情報省がペンダントを明日の夜、運搬するそうだ」

 ペンダント! まさかドラゴンペンダントの事かしら。

 どこへ持って行くんだろう。


「何のペンダントよ」

「知らん」

「知らないなら、意味ないじゃない」

「そうだよ。だからお前に教えたんだよ」

「フン、下らない仕事ね」とあたしは嫌味を言う。


「まあ、まだ俺たちも言わば処女航海中なんだよ。お前もそうだろ」

「しょ、しょ、処女じゃないよ」と動揺するあたし。

「は? 何のことだ?」

「処女じゃないって言ってんでしょ!」

「仕事について、言ってんだけど。お前、何で処女にこだわるんだ」

「こ、こだわってないんよ!」とこだわるあたし。


「お前、まだ十七歳だろ、別にいいじゃないか。堂々としてろよ」

「う、うるさい、話しかけるな」と堂々とできないあたし。


「妙にこだわると処女をこじらせて、ずっとそのまんまだぞ」

「何だとー! 死ね! このセクハラ男!」


「おいおい、こっちは、心配してやってんだぞ」

「あんたには心配されたくないんよ!」

「ちょっと、落ち着けってば」

「お、落ち着いてるよ、この鼻くそ男!」と落ち着いていないあたし。


「何なんだよ、ったく。情報屋として使ってくれる件はどうなった」

「知るか、そんな事! どっか行け!」

「しょうがねえなあ、分かったよ、退散するよ。じゃあな、プルム首都警備隊員殿。ずっと、処女航海してな!」

 ギャハハと笑いながら去っていくバカ三人組。


 クソー!

 全く、あのバカ三人組にはムカついてしょうがない。

 あー、イライラする。


 ん? また背後から視線を感じる。

 サっと振り向く。

 誰もいない。

 気のせいかな。


 ベッドに入って、妄想デートでラブレターを渡すシミュレーション。

 うーん、やはり、巡回中は怒られるか。シーフ技でさりげなくポケットに入れようか。ちょっと変か。退勤するとき、渡すのがいいかなあ。渡した後、あたしは顔を真っ赤にしてダッシュで帰ってしまいそうだ。


 もしかして渡したら、いきなりゴミ箱に捨てられたらどうしよう。多分、その場であたしショック死しちゃうな。


 シミュレーションでもドキドキする。眠れない、と言いつつ、寝た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ