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ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険  作者: 守 秀斗
第二章 うら若き十七歳の可憐な乙女/ドラゴン秘儀団残党編
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第十八話:アデリーナ殴られる

 そろそろ寒くなってきたなあという日、巡回中のアデリーナさんがなかなか帰って来ない。

 市民から通報があった。

 警備隊員の女性が倒れてるとのこと。

 あたしらの部隊の管轄区域だ。

 デルフィーノさん以下、全員で現場に駆けつける。

 情報省の建物近くで、アデリーナさんが倒れてた。


「アデリーナ! 大丈夫か!」リーダーが焦って、アデリーナさんを起こす。

 幸い、意識はあるみたい。

 情報省付近の小道で不審な人物を見たので、職務質問したら、いきなり頭を殴られたそうだ。


 お前が殴ったんだろって? そんなことするわけないでしょ!


「攻撃魔法使えばいいのに」とあたしがアデリーナさんに聞くと、

「警備隊員は魔法が禁止されてるから使えなかった……」とのこと。

 真面目だなあ、アデリーナさん。


 あたしなんか巡回してても、職務質問なんかしないけどね。

 面倒だし、そもそも、あたしが泥棒なんだから、まっ先に自分で自分を職務質問しなきゃいけないことになるんよ。


 おい! お前は何のために巡回してるんだって? 散歩よ、散歩。働いたら負け!

 え? この税金泥棒って? もともと泥棒ですので。

 けど、すんまへん。


 リーダーがアデリーナさんを抱き上げて、病院に連れて行った。

 あっ、お姫様だっこだ。

 いーなあ、いーなあ、アデリーナ。

 今度、あたしもケガしたふりでもしようかな。


 とりあえず、残ったメンバーで付近の周辺への聞き込み。

 あたしとデルフィーノさん、バルドとサビーナちゃんとで二組に分かれる。

 デルフィーノさんと一緒で、あたしは、ウキウキ! おっと、ダメダメ。

 アデリーナさんをぶん殴った奴を逮捕しなきゃ。


 目撃者を探し出して話を聞くと、黒装束の人物が走って逃げていくのを見たそうだ。

 黒装束! まさか、ドラゴン秘儀団か。

 シアエガ湖で全滅したんじゃないのか。

 それとも、ドラゴン秘儀団のコスプレをした奴か、ってドラゴン秘儀団のことは秘密にしてるんだから、それは無いだろうね。


「その不審者、ドラゴンがデザインされているペンダントをしてませんでしたか」とあたしが目撃者に聞くと、

「さあ、気づきませんでしたねえ」とのお答え。


 うーむ、今回もドラゴンペンダントを落としてくれれば、分かりやすかったんだけど、そういつも落としたりはしないか。しかし、情報省付近というのがひっかかるんよね。

 結局、黒装束以外には収獲無しで、警備隊庁舎に戻る。


 リーダーが先に帰っていた。

「アデリーナさんの具合はどうなんですか」とサビーナちゃんが心配そうにリーダーに聞いている。

「大丈夫だけど、しばらく休んだほうがいいと医者には言われたんだ。だけど、本人はすぐ復帰したいと言うんだよ」

「いや、休んだほうがいいよ。こういう時はゆっくり休んだほうがいい」とデルフィーノさん。

 優しいなあ、デルフィーノさん。

 ますます、好感度アップかける三乗。


「ところで、プルムさん」とデルフィーノさんから声をかけられた

「はい、何でしょうか! 分隊長殿」デルフィーノさんに声をかけられるだけで嬉しくなる。


「さっき、目撃者の方にペンダントの事を聞いてたけど、何か思い当たる事があるんですか」

 やばい! ドラゴン秘儀団の件は情報省以外は極秘だったんだ。

 どうしよう。

「えーと、単純にペンダントが好きなんで聞いただけです」とメチャクチャな答え方をしてしまった。

「そうですか」とデルフィーノさんあんまり気にしてない、と思ったら、セルジョ小隊長ところへ行く。

 まずいなあ、ペンダントの事、報告すんのかな。


「セルジョ小隊長殿、提案があるのですが」

「何だね、デルフィーノ君」

「巡回は、現在一人で行っていますが、今回のアデリーナ隊員の件を鑑みると、当分の間、二人体制の方がよろしいのでは」

「なるほど、そう言えば、その方がいいかもしれん。ちょっと、大隊長に言ってくる」とセルジョ小隊長が大隊長室に向かった。


 え? 二人体制? じゃあ! デルフィーノさんと一緒に巡回することもあるんだ。やったあ! 巡回デート! 巡回デート!

 お前、ふざけてんのか! いい加減にしろ! 仕事しろって? いいじゃん、それぐらい許してよ!


 あたしは、翌日、サビーナちゃんとアデリーナさんのお見舞いに行った。

 官庁街の近くにあるラブクラフト病院。

 頭に包帯巻いてるアデリーナさんにリーダーが付き添ってる。

 いーなあ、いーなあ、アデリーナ。


「おケガの方は大丈夫ですか、アデリーナさん」とサビーナちゃんが聞くと、

「全然、大丈夫、早く仕事に復帰したい」とアデリーナさん。

 えらいなあ、あたしなら出来る限り引き延ばして、ずうっと休んでるぞ。


「犯人、どんな奴だったんですか」とあたし。

「うーん、黒装束ぐらいしか分からない。情報省の建物を見ながら行ったり来たりしてたんで、変だなと思って……」と言いながら、アデリーナさんが急に口をおさえる。

 気分が悪そう。

「どうした」とリーダーが心配そう。

 アデリーナさん、頭殴られてるし。

 やばくないか。心配になる。


「大丈夫……」と言いながら、リーダーの胸にもたれかかるアデリーナさん。

 びっくりして、オタオタするあたし。

 アデリーナさん、失神してる。

 全然、大丈夫じゃないぞ!

「おい、アデリーナ、しっかりしろ」とリーダーがアデリーナさんに呼びかける。

「お医者さん、呼んできます」とサビーナちゃんが慌てて病室を飛び出した。


 あたしらは、医者が診察している間、廊下で待つ。

「大丈夫かなあ」と廊下をウロウロしているリーダー。

 医者が出てきた。

「おめでとうございます」

 は?

「おめでたです」

 リーダーが病室に飛び込んだ。


 あたしはリーダーに「おめでとうございます」と言う。

 けど、ショック!

 何でショックなんだよって? うーん、とにかく、つらいんよ。うまく説明できん。

 結婚して、一緒に住んで、一年間。妊娠しても、全然おかしくないだろって? そうなんよ、そうなんよ。だけど、何かモヤモヤすんのよ。


 そのまま、今日はうちらの部隊は夜勤。アデリーナさんはお休み。

 夜勤と言っても、警備隊の部隊室で座ってるだけ。

 夜の巡回は自警団がやっている。

 交替で休憩時間があるけど、あたしの場合は常に休憩しているようなもんね。

 通報があったら駆けつけることになっているけど、ほとんど通報はない。

 本当は、昼間に眠ってなきゃいけないんだけど、アデリーナさんの件で、起きたまんまで出勤。

 普段なら爆睡しちゃうけど、眠れん。いつもは、ほとんど寝てるんだか起きてるんだか分からない状態なんだけどな。


 リーダー嬉しそうにしてた。

 ああ、ショック。

 何で、ショックを受けるんだって? うーん、自分でも分からない。

 お前が一方的に片思いしてただけだろって? 片思いでも切ない気分になるんよ。現実を突きつけられたんよ。

 いーなあ、いーなあ、アデリーナ。

 あたしがつわりで苦しむことは、果たしてこれからあるのだろうか。

 やれやれ。


 まあ、ともかくアデリーナさん、本当におめでとう。

 あたしは前向きになるぞ。

 よし、今度は、恋文作戦だ!

 デルフィーノ分隊長にラブレターを書こっと。

 けど、ラブレターってどう書くの?

 だいたい、手紙って書いたことない。

 どう書きだすの? 

 分からん。


 ちょっと、警備隊の書類を見てみる。

『拝啓時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます』

 違う。

『お世話になっております』

 違うって。

『事務連絡』

 違うだろー!


 いいや。

 もう、いきなり、

『分隊長、好きです! プルム』でいいか。

 だめ、短すぎ! おまけに鉛筆書きだと、まるで幼稚園児みたい。


 やっぱり、

『はじめまして』かな。

 違うー! 毎日会ってるじゃん。


『お仕事、お疲れ様です』

 うーん、何だか疲れてきた。


 最初の書きだしから悩むあたしは、やはり頭が悪い。

 鉛筆じゃあ、かっこ悪いな。そうそう下賜品の万年筆とやらを思い出す。

 さすが高級品。きれいだ。鉛筆書きよりマシかな。

 ん、このペン本体にちょっとキズがついてるな。

 まあ、いっか!


 って、内容考えなきゃ。

 デルフィーノさんに勤務中、ラブレターを渡したら、怒られるかな。

 優しいから怒らないだろう、と思う。


 朝になって、夜勤が終わって、サビーナちゃんと一緒に寮に帰る。

 パジャマに着替えて、ベッドヘタイブ! 妄想デート! 相手はもちろんデルフィーノさん。

 そうやって、寝るときはいつも妄想してんのかって? そうよ、何が悪い!

 え? キモイ? うるさいわい!

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