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ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険  作者: 守 秀斗
第一章 うら若き十六歳の夢見る乙女/レッドドラゴン編
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第十四話:結婚式

 王宮に招待されました。

 なかなか豪華な王宮。大理石で作られた謁見の間に通される。

 イガグリ坊主頭の王様が出てきた。

 背も低く、痩せて、猫背。

 あまり威厳のない王様だなあ。やる気なさそう。


 王妃様は優しそうな感じ。隣にいるのは皇太子様かな、母親似で良かったね。後ろにはニヤニヤしてるおっさんがいる。このおっさんは事情を知ってそうだ。他に魔法使いのような恰好をしている女性がいる。よく分からんがみんな偉い人たちなんだろう。


「あーキミ、キミ、今回の働き、褒めてつかわす」

「ありがたきお言葉、光栄の至りでございます」と頭を下げつつ、事前にクラウディアさんが教えてくれたように返事をする。

 あたしがドラゴン倒したわけじゃないんだけどね。

 もしかしたら、この王様にもその情報は知らされているのかな。

 そりゃ、やる気出ないわね。

 王様も大変ね。


 御下賜品をいただく。下賜品とは何ぞや。偉い人から貰うものらしい。箱を開けたら、棒が入ってた。何じゃこりゃと説明書を見ると「万年筆」と書いてある。ペンみたい。褒賞品ってことですか。

 クラウディアさんがハラハラしながら小声で、

「プルムさん、この場で開けないで下さい」

「ああ、これはすいません」

 王様は気にしてない模様。

「あーそれから、キミ、今日から警備隊員ね、ヨロシクー!」そのまま去っていく王様。

「へ? 何、警備隊員って?」

 何だか知らんけど、あたしは王国の首都であるメスト市の警備隊員に任命された。

 泥棒が警備隊員になっていいんかい?

 まっ、いいか!


 と思ったけど、ちょっと小声でクラウディアさんに事情を聴いてみる。

「クラウディア様、警備隊員って何ですか。私がなってよろしいんでしょうか」

「今回、精鋭部隊の人たちが大勢亡くなられたんですが、かわりに警備隊から有能な人が引き抜かれるみたいなんです。そのため、警備隊は欠員をうめるために新たに募集をかけたようですよ」とお答えになった。

 大勢亡くなったんだ。かわいそう。

 けど、要するに、人不足解消ですか。

 お! ひらめいた!


 リーダーとアデリーナさんの結婚式です。

 あたしも招待されました。

 真っ白のウェディングドレス姿のアデリーナさん。似合ってる。

「キャー! アデリーナさん、すごくきれい!」ぴょんぴょん飛び跳ねながら、サビーナちゃんが興奮してる。ポニーテールも弾んでる。


 けど、実際、きれいだなあ。元々美人だけど。美しい黒髪をアップにして、ますますエレガント。スタイルもいいし。あたしもいつかこんな格好するのかなあ。

 いや、するのよ! 絶対に。

 似合うかどうかはともかく。

「プルムもはやくいい人見つけなさいよ」とアデリーナさん。

「アハハ、そうですねえ」

 このオンナー! あたしの愛するリーダーをトンビみたいにかっさらいやがって。

 え? そうじゃないだろって? そうなの!

 まあ、あたしにとっては大切な仲間よ。いい人達。素直に祝福しなきゃ。


 リーダーがやってきた。

 やっぱり素敵。

 ああ、心が疼く。心が苦しい。

「リーダー、ご結婚、おめでとうございます」ちょっと緊張してお祝いをいう。

 視線をうまく合わせられない。

「ありがとう、プルム」嬉しそうなリーダー。

 リーダーは他にもいろんな人から祝福を受けてる。

 あんまり話せなかった。

 話すと涙がでそうで。

 けど、まだ話す機会はいっぱいあるんだ。

 え? お前、警備隊員になるんだから、パーティからはずれるんだろって。

 フフン、そうはならないんよ。


 ウェディングドレス姿のアデリーナさんが持っていた花束を投げる。

 ブーケトスよ。

 ああ、あたしのところに向かって来る。

 次は幸せを掴むんだ。

 あたしは花束に向かって、手を伸ばす。

 突然、あたしの頭上にでかい手が現れた。

 なぜかバルドが花束を取る。

「何で、あんたが取るの!」とあたしはバルドに食ってかかる。

「いやあ、俺んとこに飛んできたんで、何となく取っちゃった。えーと、じゃあ、かの有名なドラゴンキラーにあげる」

 あたしはバルドが差し出した花束を思わず受け取った。


「それじゃあ、意味無いでしょ!」

 怒ったあたしは、受け取った花束でバルドをバシバシ叩きながら追い回す。

「痛い、痛い」と逃げるバルド。

「プルムさん、何をするんですか! 落ち着いてください」とサビーナちゃんに止められた。

 むかついた!

 もう働かん! 

 働いたら負け!

次回から「第二章 うら若き十七歳の可憐な乙女/ドラゴン秘儀団残党編」に続きます。

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