第十四話:結婚式
王宮に招待されました。
なかなか豪華な王宮。大理石で作られた謁見の間に通される。
イガグリ坊主頭の王様が出てきた。
背も低く、痩せて、猫背。
あまり威厳のない王様だなあ。やる気なさそう。
王妃様は優しそうな感じ。隣にいるのは皇太子様かな、母親似で良かったね。後ろにはニヤニヤしてるおっさんがいる。このおっさんは事情を知ってそうだ。他に魔法使いのような恰好をしている女性がいる。よく分からんがみんな偉い人たちなんだろう。
「あーキミ、キミ、今回の働き、褒めてつかわす」
「ありがたきお言葉、光栄の至りでございます」と頭を下げつつ、事前にクラウディアさんが教えてくれたように返事をする。
あたしがドラゴン倒したわけじゃないんだけどね。
もしかしたら、この王様にもその情報は知らされているのかな。
そりゃ、やる気出ないわね。
王様も大変ね。
御下賜品をいただく。下賜品とは何ぞや。偉い人から貰うものらしい。箱を開けたら、棒が入ってた。何じゃこりゃと説明書を見ると「万年筆」と書いてある。ペンみたい。褒賞品ってことですか。
クラウディアさんがハラハラしながら小声で、
「プルムさん、この場で開けないで下さい」
「ああ、これはすいません」
王様は気にしてない模様。
「あーそれから、キミ、今日から警備隊員ね、ヨロシクー!」そのまま去っていく王様。
「へ? 何、警備隊員って?」
何だか知らんけど、あたしは王国の首都であるメスト市の警備隊員に任命された。
泥棒が警備隊員になっていいんかい?
まっ、いいか!
と思ったけど、ちょっと小声でクラウディアさんに事情を聴いてみる。
「クラウディア様、警備隊員って何ですか。私がなってよろしいんでしょうか」
「今回、精鋭部隊の人たちが大勢亡くなられたんですが、かわりに警備隊から有能な人が引き抜かれるみたいなんです。そのため、警備隊は欠員をうめるために新たに募集をかけたようですよ」とお答えになった。
大勢亡くなったんだ。かわいそう。
けど、要するに、人不足解消ですか。
お! ひらめいた!
リーダーとアデリーナさんの結婚式です。
あたしも招待されました。
真っ白のウェディングドレス姿のアデリーナさん。似合ってる。
「キャー! アデリーナさん、すごくきれい!」ぴょんぴょん飛び跳ねながら、サビーナちゃんが興奮してる。ポニーテールも弾んでる。
けど、実際、きれいだなあ。元々美人だけど。美しい黒髪をアップにして、ますますエレガント。スタイルもいいし。あたしもいつかこんな格好するのかなあ。
いや、するのよ! 絶対に。
似合うかどうかはともかく。
「プルムもはやくいい人見つけなさいよ」とアデリーナさん。
「アハハ、そうですねえ」
このオンナー! あたしの愛するリーダーをトンビみたいにかっさらいやがって。
え? そうじゃないだろって? そうなの!
まあ、あたしにとっては大切な仲間よ。いい人達。素直に祝福しなきゃ。
リーダーがやってきた。
やっぱり素敵。
ああ、心が疼く。心が苦しい。
「リーダー、ご結婚、おめでとうございます」ちょっと緊張してお祝いをいう。
視線をうまく合わせられない。
「ありがとう、プルム」嬉しそうなリーダー。
リーダーは他にもいろんな人から祝福を受けてる。
あんまり話せなかった。
話すと涙がでそうで。
けど、まだ話す機会はいっぱいあるんだ。
え? お前、警備隊員になるんだから、パーティからはずれるんだろって。
フフン、そうはならないんよ。
ウェディングドレス姿のアデリーナさんが持っていた花束を投げる。
ブーケトスよ。
ああ、あたしのところに向かって来る。
次は幸せを掴むんだ。
あたしは花束に向かって、手を伸ばす。
突然、あたしの頭上にでかい手が現れた。
なぜかバルドが花束を取る。
「何で、あんたが取るの!」とあたしはバルドに食ってかかる。
「いやあ、俺んとこに飛んできたんで、何となく取っちゃった。えーと、じゃあ、かの有名なドラゴンキラーにあげる」
あたしはバルドが差し出した花束を思わず受け取った。
「それじゃあ、意味無いでしょ!」
怒ったあたしは、受け取った花束でバルドをバシバシ叩きながら追い回す。
「痛い、痛い」と逃げるバルド。
「プルムさん、何をするんですか! 落ち着いてください」とサビーナちゃんに止められた。
むかついた!
もう働かん!
働いたら負け!
次回から「第二章 うら若き十七歳の可憐な乙女/ドラゴン秘儀団残党編」に続きます。




