第57話「Goodbye Happiness」
一番のダチの「どーでもいい」という発言を聞いて、
僕はその時とても悲しい気持ちになった。
けど、それは僕と同じだ。
否、僕の「どうでもいい」方が、もっとタチが悪い。
僕の素行を諭す為のあえての言葉だろう……。
しかし、僕も彼も、もう引き返せない。
せめて、できるのは、この「早水家の日常」をここで完結させる事。
「どうでもいい」で投げ出さない事。
何度でも記すけれど、僕は僕の葬式なんて全く望んでない。
現時点では誰にも看取られなくていいとすら思っている。
僕に使う時間やお金があるなら、
それで家族と美味しいものでも食べてほしいと、本気で願っている。
少なくとも、僕はもう引き返せない。
寂しい、でも人として生まれたからにはおそらく真っ当な感情だ。
僕は今後、母が亡くなっても、それでどんな苦境に立たされようとも、
お葬式に自身が出席していいとも思わないし、する気もない。
だから、現状のコロナ騒動はとても痛い。
倖子君に出逢うまでは、せかいで一番美しい女性だった人の生を、
生きている間に、できる限り刻み付けておきたい。
本当は、愛してるって抱き締めたい。
だけど、できない。
だから、いつも、ありがとう、だけ。
僕はいつまでも末っ子として姉兄に、
その家族に面倒ごとを押し付けてる。
だから、何の見返りも求めてはいけない。
倖子君の声音が失われた今は、母の声音が最上の音楽だ。
僕の社会上の立場は、障がい者で生活保護、薬物依存の独り身。
廃人といって差し支えない状態だろう。
結局は、手離すんだ、取り戻すんだ。
そう考えると過去と呼ばれるものが全て愛おしくなる。
もう一回全く同じ人生をやり直しなさいと神仏に命じられても、
大きな後悔はない人生ではある。まだ、今までは。
僕の大切な人たちが本当に亡くなるのは、僕が居なくなる時だけだ。
できるだけ多くの人を思い浮かべ、また会おうねって、手を振る。
本当に、人生は、有難い。
僕だけの真実は、
最愛倖子君と結ばれ、三人の優しい子供たちに恵まれた事。
だから……、
だから…………、
だからね――……、
僕は、もう――……、あるがまま生きてく。
だからもうさみしくない
だからしあわせよさようなら
しんぶつのごかごを
歌・歌詞・作曲 宇多田ヒカル




