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早水家の日常  作者: 恋刀 皆
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第44話「Sis puella magica!」

 僕が必要としているのは、あらゆる幸福を覚え感謝できる器と、

あらゆる不幸を受け入れられる器だ。


 自分より幸せな人がいくらでもいる事。

自分よりも不幸な人がいくらでもいる事を、常に忘れてはいけない。

だから幸福も日常も不幸も、どれもが大切だ。


 僕の祈りは、極力行動しないという行動に込められている。

様々な物語に出会うと、その度になにがしか心が揺さぶられる。

物語とは全てが創り手の魂が磨き上げられたものでできていると感ずる。

創作者の端くれとして、作品との相性があるのは仕方ないけれど、

バカにしていい作品などひとつもない。

バカにしていいのは純粋な消費者だけが許された行いだと、

僕は想っている。

何かをつくりだすという行いをする人々にとって、

優劣は思い描いてしまうが、全て尊いものであるはずだ。


 僕の創作は糞便と同じ行為だ。

要らなくなったものを排泄し、その在り方を整理する大切な役割がある。


 色々な物語に出会う中で、

体験や経験がなければ救えない事象を目の当たりにした時、

消化できず、産み落とす事へ繋がる。


 危険を避けたければ、陽のあたる道だけを選び続ける方がいいだろう。

けれど、僕は真夜中のささめきに耳を澄ます安らぎを知ってしまった。

自分よりも不幸な人に対して、蜜を味わい、また自己嫌悪する。

とある小説で、“人はひとりで勝手に助かるだけ”と拝読したが、

その助けにはなれるかもしれないが、本質的にはその通りなのだろう。


 生活保護のケースワーカー様に、

「生活保護っていうのは国に支配されているという事だからね」、

そう伝えられた。

だが、どうだろう? どんな地位に居たってその上位存在は必ずいる。

誰もが仕え、支配はされている。

自由というものは途方もなく広大でもあり、

足りるならほんのわずかでもいい。


 僕が最も困るのは、

この創作というボトルメールを送れなくなる事であり、

その他は刑務所でも病院でも施設に入ってもどれでもいい。

ただ血縁には非常に迷惑な話だ。

だから、こんな僕でも、僕なりには踏ん張っている。

僕は幸か不幸で言えば、それなりには幸せな生い立ちなのだから、

できる限り、頭を垂れ続けるしかない。

出会ったみんなに感謝。有難い。


 と、もう人生が終わるかのような言葉だけれど、

まだまだ創作は始まったばかり、どれだけ悲惨でも、生き残らないと。

自己啓発なんかで、

自分の悩みをメモして整理しておくといいなんて聞くけど、

この創作は、その機能を十分有してくれている。


 僕の創作スタイルや才能を自己分析すれば、

すぐにプロになる為の筆なら折るけれど、

僕の創作は仕事は仕事でも、ライフワークだ。

一日でも健康で長く生き延びる為のもの。


 今日は少々メンタルに堪える作品に出会ってしまった為、

嘔吐するように創作を綴っている。

僕は現実では一応殺人を犯した事はない事になっているけれど、

様々な罪状で裁かれようと、

静かに受け入れるくらいしかできない身の上だ。

ことごとく犯し、犯されてきた。


 誰かの涙が、誰かを潤すものなのだろう。

だからこそ、

理不尽に思える憎しみや悲しみにも敏感に、許せるようにと、

自身の覚悟をいつでもスタンバイさせておくんだ。

僕はたくさんの人々に背き、欺き、痴れ、裏切りを繰り返してきた。

僕がそんな場面に直面したって、お互い様だ。

だから、そう想える自分を創ってくれた、大切な女性に感謝し、








心から、その人が救われるように、小さく祈るんだ。



 わすれないで

いつもだれかがあなたのためにたたかっていることを

そうすれば あなたはひとりではないから

作詞・作曲 梶浦由記

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