第37話「Just Like Christmas」
2019年十二月二十四日火曜日友引、クリスマス・イヴ。
嗚呼、なんという複雑な心境だろうか……。
僕にとっては事実上クリスマスなんてものはおよそ縁遠いものなのに、
倖子君への恋慕から、クリスマスというものにしがみついている。
もしも倖子君と僕が付き合えていた未来があったとしても、
そんなに長続きはしなかったろう。
こんな仮装ならぬ仮想クリスマスごっこをして過ごすのが僕の精々だ。
多分それが神仏に与えられた、
僕の唯一幸せを感じられる行いなんだろう。
僕はエゴイストだ。別にその事になんの罪悪も感じない。
人の為は偽り、皮肉だよね。
僕は僕を優先する。せかい中の誰よりも。
今時大企業でさえ真顔で金払わないけど働けと言ってくる。
だから僕が、働かないけど金くれというのも道理は通るだろう。
誰も基準値なんて遵守しない。せかいは滅茶苦茶で、筋が通っている。
なんで誰とも付き合えないのかな?
そういたって真面目に考える事はあるけど、
最近少しずつ答えが見えてきた。
僕本来はもともと誰とも付き合いたいと思っていない。
子供の頃からの結婚や恋愛のストーリーの刷り込みでしかない。
実際誰かと付き合えても、まともな恋愛はできないと思う。
とにかくもう身動きが取れないし、ふたりになってしたい事もない。
先日とあるお方様から頑張って働きましょうねと言われたが、
僕からしたら働くなんて行いは、
現在の精神状態をさらに悪化させる行為でしかない。
愛する人と結婚できるでもなく、ろくな給料ももらえないのも約束済み、
なおかつお仕事は確実につまらないし、使えないし仕えない僕。
そんな分かりきった虚しい罰ゲームに誰が独りで進んで飛び込むねん。
現代でもバリバリ奴隷制度は存在している。
現政権が今更ロスジェネ救済策を講じたって遅すぎる。
総理大臣が何を言おうが、使えない四十男なんて現場には絶対要らない。
「働きましょう」というお言葉は、僕にとって「さっさと死ね」と同義だ。
そのお方様に、それ程の悪意があったとは思いやしないけど。
別に両親に対して特別な恨みつらみはないが、
両親のような結婚生活を送りたいかといえば絶対にNOだし。
それでも振り返れば、僕の両親は美しかった。
そもそも現状ひとりで行える事にしか興味がない。
複数のお方々が関わる出来事に興味がないとは断言しないが、
それで大体失敗してきた。
クリスマスといってもケーキひとつ食べる予定もない。
この感情もただの刷り込みだ。
僕は宗教なんて嫌いだ。
立派な教えとやらで何億救い、何億殺してきた?
度が過ぎた偉人なんてものは大概生贄か大罪人だ。憧れる自体バカげてる。
そういう嵐を生み出す存在に、僕はできれば一切関わりたくない。
異教徒でさえも愛することができる宗教的なアルバムが必要なんだ。
ただ、もしも倖子君が傍に居てくれたなら、
上述のほとんどの問題が解決され、僕はクリスマスを愛するだろう。
なんて、さ――、
ただの妬み僻みやね。
それがそう、僕にとっての――……、
ちょうどいいクリスマスっぽさかな。
せかいいちのクリスマスプレゼントは?
こわれたドラムってさ
きみはせかいいちうつくしいじょせいだ
歌 Low




