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早水家の日常  作者: 恋刀 皆
29/57

第29話「ロングホープ・フィリア」

 ふたりの友人へ


 僕のひとり目の友人ミドー。

打ち込んでみたは良いけど、正直何を書いても言い訳にしかならないな。

ミドーの力になれたら良いけれど、僕の生活にその余力はない。

僕は対人関係を諦めてしまったから。

友というものへの羨望が、僕の命をまだ繋ぎ止めてくれている。

会いたい。でも、会うのが怖い。友だちなのに。

つかみどころの無い、「生活」というものを目先だけでなんとかしてる。

ミドーに合わせる顔が無いのは、僕が僕を哀れんでいるから。

僕は僕を幸せだと断じなければ、僕自身を許せない。

でも、死は隣り合わせで、じょじょにできない事が増えていってる。

まさかの坂を転がる石のように不様に丸くなっていってる。

前にも書いたと思うけど、僕にとって友とは心に棲んでくれる人だ。

その人を想う気持ちが、嫌悪や憎悪だとしても。

僕が孤独なのは、かつてあまりにも八方美人だったしわ寄せだ。

映画やアニメで、

これでもかと現実と虚構を味わっても、

僕の人生は楽勝過ぎて酷過ぎる。

人に頼れないのは、人を信じていないからだ。


 あの頃のミドーが何処まで把握していたのか知らないけれど、

中学の時に一度僕からミドーに喧嘩を仕掛けたよね。

あれから20年以上経ってわざと負けてくれたのが分かった時、

僕は凄く腑に落ちた、だってさ、あまりにも何の手応えもなかったもん。

だから、今度は僕の告白だ。

あの喧嘩はさ、当時僕をイジめていた彼らが、

ミドーに喧嘩を売って勝ったら、

僕をイジめるのをやめてやるってそそのかされてやる事にしたんだ。

所詮は誰もカーストの中。思い返すと胸糞悪いよ。僕にも、彼らにも。

弱い者がさらに弱い者を叩くってヤツだ。

友人でも、対等な関係を維持するのは、僕にはとても難しい。

だから、僕は極力人を動かさない生き方を選んだ。それが今だよ。

誰も悪くないし、人に罪というものがあるなら、

各々が背負い、各自で解決していくものなんだろう。

みんな最低で最高だ。

多分、勝っても負けても、

僕は独りになってでも彼らに立ち向かうべきだった。


 ふたり目の友人マッツン。

僕は出会った時から、貴方が嫌いだった。嫌な感じを覚えた。

だけど当時はその内解けていく問題だと思っていた。

それは半分正解で半分は不正解だった。

貴方の影響は、僕にはとても大きなもので、

時には僕と貴方は同じ風景を視ていると錯覚を覚える事すらあった。

でも今は貴方の視ている風景がほとんど解らなくなってしまった。

その事を悲しく想う。

しかし、貴方はプレゼントをくれた。

憶えていてくれるかな。

僕が今までの人生で体験したどんな旅行の中でも、

貴方との四国旅行が最高の旅行なんだ。

僕の人生であれ程充実した旅行を送れる事はもうないと想う。


 問題は凄くシンプルで、僕が心を開けばいいだけの話だ。

ミドーもマッツンも、僕ほどには閉じていない。狭量じゃない。

僕が会いたいと切望すれば、きっと応じてくれるよね。


 だけどもう僕は、

この切望に対し何に困っているのかすら解らなくなってしまった。

再会したところで明るい話題はないし、

ふたりの足を引っ張るくらいなら、おとなしくしていた方がマシだ。

だから、今生はもう再会は果たせないだろう。

でも、不思議とまた何処かで出会える気がしているんだよね。

何かふたりに役立てる事が見つかった時は、必ず連絡をするよ。


 思うに建設的な喧嘩を、もっとしておくべきだった。

それは今でもうまくできない。僕はすぐに感情的になってしまうから。

病気の療養の為にも、もう難しい人間関係はいらない。

僕は全て望んで今がある訳じゃないけど。


 ふたりにとって、結婚ってどんなんなん?


 僕は結婚を選択する事はできないから、一生謎のままだよ(苦笑


 それでも、どうか、倖せでいて、








僕の出会った最高の――、



 ぼくのふたりのえいゆうへ

キンピカのままで

それときらくに

歌 菅田将暉 作詞・作曲 秋田ひろむ(amazarashi)

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