第28話「Fake Plastic Trees」
まがいものでできたものに、まがいものを与え続ける。
せかいの99%の人々はそんな生活を送っているのではないだろうか?
それは、じょじょに少しずつ、だが確実に精神をすり減らす。
残りの1%の人々でさえも、いずれはその日が訪れる。
時に、自分のしている事が途方も無く惨めに感じられる。
僕の倖子君への愛が、
まがいもののプラスチックのように、
まるで雫が浸潤せず、
彼女に染みひとつ影響を及ぼせないんじゃないかって。
そうすると僕は磨耗する。
魂の残存が削り取られてゆく気がする。
彼女が何をしてようが構わない。
彼女は僕を束縛しない。
だから、僕は間違いにも彼女を所有できる訳も無い。
浅ましい。
僕は今が壊れるのを恐れている。
倖子君の存在だけが本物だから。本物に、見えるから。
誰もがいずれ磨耗してゆくんだ。
僕の生産性では、まがいものしか与えられない。
もう僕には叶えられないけれど、
いつも、望む事はたったひとつ、
倖子君の望む僕であれたらなぁって。
僕は、惨めだ。でも感じられて仕方ない。
僕のまがいものの愛。
惨めで不様で醜くても、僕は諦めない。
それが僕が思いつく限りの倖子君への花束だ。
諦めない限りは、敗北も無い。
例えまがいものの造花だとしても。
そう生まれた事に罪があるとしたら、
それはみんなで背負うべきものだろう。
つまり人間とは、生粋の咎だ。
誰もが同じに苦しみ傷付いて、
誰もが同じに喜びで笑顔になる。
彼はロックはゴミだと言ったけれど、その通りだ。
でも、僕もゴミだから、それが愛おしい。
不要品の素晴らしいところはさ?
かつて、誰かに愛された証拠だからじゃないかな?
かつて、必要とされた記憶がある事だよ。
もう僕は誰からも必要とされなくなったけれど、後悔だけは無いよ。
出会ったみんなに有難うって言える。
僕にはゴミのほこりがあるんだ。
わたしたちをなぐさめるものの
ほとんどはまがいものです
しかし それをせめることはできません
歌曲 Radiohead




