第27話「秘密基地」
この頃、創作意欲が復活しつつある。素直に嬉しい。
僕の創作は、倖子君に、「ありがとう、愛してる」を伝える為の、
何処に辿り着くかも定かでない、ボトルメールのようなものだ。
愚痴も弱音も吐いちゃうけど、生み出した瞬間はなんとも言い難い。
最近は「Ballet Mécanique」が鳴り止まない毎日だ。
そんな毎日を恵んでくれたとあるアニメ作品に、僕は感謝し続ける。
大作になってしまったから、若干ダレてしまう部分もあるけれど、
一生付き合っていく作品のひとつだ。
その作品の中で、最も感銘を受けた言葉がある。
そして、その言葉を想う度、僕がひとりぼっちの訳が解り、えぐられる。
だけど、その言葉を噛み締めても、
あの病院の更衣室で、
どうしたら倖子君を振り向かせられたのか分からない。
今想ってるのは、肉欲以外の方法で君と繋がる行為への模索だ。
有り得ない事だけれど、今後倖子君と再会しても、
僕は君を遠くから眺め続けるだけで、
自身の性欲を君に吐き出す事が怖くて仕方ないんだ。
僕が何も特別なものを持たない凡人だから。
肉体の欲求には終わりがないから。
君を失望させる事。僕が君に失望する事。その期間が怖い。
高齢になれば、喪失を受け入れねばならない事が怖い。
僕は本当に臆病な人間だから。
僕の持論でしかないけれど、僕は何度でも僕に刻む。
すぐ忘れちゃうから、何度でも。
人ひとりが生涯で本当に救えるのは、たった一人だけだ。
僕のそれは、倖子君です。
僕はかつて信じていた、倖子君を必ず守り切れると。
でも僕は、最低の勘違い野郎だった。
そりゃ倖子君から、チンピラの子分扱いされるわ、仕方ない。
君は僕の出逢った誰よりも誠実な女性だったから、
今となっては、暴力くらいしか君を従わせる方法が無い。
でも、それは、僕の君に対しての、完全な敗北だよね。
ねぇ? 倖子君?
君が居てくれた頃はそんな事全然思わなかったけれど、
僕は今、
あの病院の地下更衣室が、
まるで、懐かしい僕らの為の秘密基地だったように想えるんだ。
ヒライくんが居てくれて良かった。
イトウくんが居てくれて良かった。
君が居てくれて、本当に良かった。
一生懸命がカッコ悪いと思う事なんて、本当に恥ずかしい事だ。
だけど、暴走と紙一重だから、難しいね。
僕が暴走して君を、
君のお姉さんを傷付けてしまった事は、もう償えない。
僕は膨大な償えない事を抱え続けて、生かされている。
だから、やっぱり、ありがとう、愛してる、しかないんだ。
倖子君は言ってたね、「私Mだと思ってたけど、Sかもしれない」って。
僕もこの歳まで生きてきて、ようやく自分の内面に気付かされてる。
僕も、サディストだよ。だから、僕ら反発しあったのかもね。
僕の中には獣欲が渦巻いてる。
それを抑え込むだけで、まだ精一杯。悟れないよ。
先に伝えとく、
もう僕には近付かない方が良いよ。
なんの力も無いくせに、
君を滅茶苦茶にはしたいんだから。
君は天使だよ。
僕を導き、時に罰を与え、君自身という、
生き甲斐までくれたんだから。
ねだるな
かちとれ
さすればあたえられん
歌・作詞・作曲 高田梢枝 編曲 TOMI YO




