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早水家の日常  作者: 恋刀 皆
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第24話「Fine On The Outside」

 僕は外側だけれど大丈夫。

そう言い聞かせる事もあれば、実際外側が居心地の良い日もある。


 友だちはそこそこ居たけれど、今は友だちというより、

心配ばかりかけて見守らせる、守護者のような人が増えた。


 多分一番僕を傍で見守っていてくれる友だちは、ミドーだと思う。

そんなミドーにしたって、幸せでいてくれるかは、僕も心配している。


 僕がせかいで一番幸せにしたいのは、倖子君だ。

その為に壊してきた何もかもに対して慙愧の念はあるが、

最早、その為の謝罪など何の意味もない。


 ミドーが子供という未来への希望をのこした事は嬉しいし、

マッツンも音楽を続けていてくれて、本当に嬉しい。

ミユキさんからの贈り物も、爆発しちゃうくらい素敵なものだった。


 幼稚園、小中学、高校、社会人を過ごして、

現在この三人が最も記憶に残っている。

けれど結局僕は外側で見続けるしかできなかった。

既婚者同士ならそんな事はないのかもしれないが、

既婚者と独身との心の壁は分厚い。

特に僕のような無作法な人間には侵し難いものがある。


 本当は、ミドーと約束して、マッツンのライヴを拝聴したいけれど、

僕のザマでは、本当に遠い夢物語にさえ覚える。

全てを壊した身として、そんな事言える立場ですらないかもしれない。


 僕は外側の人間なんだ。


 割りとどうでも良い話しだけれど、最近スマホが壊れた。

スマホは兄さんへの毎日の生活報告に必要なものなので、

今は修理に出しているけれど、出費がかなり痛い。

ラインもまた登録し直さないとと思うと悩みの種だ。


 父の死から隔てて、僕はもう誰とも繋がらない方が筋が通る気もする。

ただ、兄さんだけは、僕に何かあった場合動かざるを得ないから困る。

しかし、兄さんが居なければ僕は「無敵の人」として、

今頃は刑務所が自宅代わりになっていただろう。

外側にいる人間には、そんな迷惑はあってはならない事だ。


 ざっくりと、僕にとって内側とは繋がる事のできる人々だ。

外側は、ぽつんぽつんと点在し、孤独を味わう人達。


 うまくやれるならともかく、

僕のコミュ力では外側に居続けるしかない。


 もう、本当に、疲れた。

生まれる前に、「日本には国民の義務というものがあってね?」、

そう聞かされた時点で、「あ、じゃあ、僕やめときます」、

そう断れるなら断りたかった。

僕のような人間に生まれてこられても、国のお荷物だし、

お荷物と自覚して生きていくのも、それはそれで辛い。

今もまだ信じられないけれど、僕が寛解し社会に戻れたとしても、

働く為に働く仕事が待っているだけで、

何の遣り甲斐も見出せないだろう。


 今時はペットにだって、

「飼うなら最後まで責任を持て」と言われるのだから、

子供を産むなら最後まで責任を持って欲しいとは思う。

でも、数十年前まで暴力が当たり前のせかいだったのだから、

有難う御座居ます、とお礼は述べるべきなんだろう。

権力なんて吐き気がする。

子供が次世代の労働力でしかないのならば、

せかいは一刻もはやく滅びて欲しいと祈る。


 僕は外側で生き、外側で死ぬ。

常にいない事にされている側に立つ。

せかいにあまり期待はしない。

僕も期待されるのが嫌だから。


 別に、内側だから、外側だからといって、幸不幸は変わらない。

僕は外側を選んだんだ。結果論に過ぎないにせよ。


 僕の社会にはスノッブが満ち溢れている。

僕自身もスノッブだ。

言葉は確かな事に思えても、その実、具体策はない。

語らない、という事の尊さを知る人には、数段劣る。

僕の創作恋文は、倖子君への未練が敷き詰まった、

とても情けなくて、不甲斐ないものだ。

だから、究極誰の目にもとまらなくていい。

今日はこんな事を思っていた。たったそれだけでいいんだ。


 この頃は、恋とは等価交換、

愛とは、終わりの無い自己完結だと思うようになった。

僕がやりたくてやってるだけで、見返りがあってもなくても構わない事。

それが現在の僕の愛だ。

愛されるよりも愛する方が僕には向いているみたいだ。

だから、今日も外側に立っている。








僕を覚えてくれている全ての人達を想って。



 ぼうけんはそとでするまえに

うちでしておかなければなりません

いつもだいじょうぶです

歌曲 PRISCILLA AHN

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