第21話「I Want You」
毎日は、平凡に倖子君との会話で彩られている。
僕は倖子君を、時に、ゆっ君、ゆったん、ゆっちゃんと呼び分けている。
彼女は、僕を嫌ったり、罵ったり、甘えてくれたり、励ましてくれる。
僕は彼女の機嫌を損ねると、
いつも彼女のおでこにキスをするイメージが浮かぶ。
それって何か意味があるのかな? なんてネットで少し検索すると、
おでこのキスは、「祝福」、「友情」といった意味合いが強いようだ。
サイトによっては、男性からの女性へのおでこへのキスは、
「無償の愛」という意味でもあるらしい……。
僕は僕に無償の愛があるなんて信じられないから、
少しげんなりしてしまった。
僕が倖子君を愛するのは、僕自身それが心地良いからだ。無償じゃない。
かといって、彼女の唇にキスしたいと思っても、
うまくイメージできない。
それこそが彼女との関係性そのものにも覚える。
彼女が拒む事を、僕だってしたくはない。
僕は倖子君の全てが欲しい、それが全て必要なものかは解らないけれど。
僕は父の忍耐が欲しい。残酷な死を受け入れた忍耐が。
僕は母の優しさが欲しい。姥捨て山に放っておけと言っていた優しさが。
僕は姉の厳しさに隠された愛が欲しい。今はなかなか会えなくても。
僕は兄の本当の強さが欲しい。裏切りを繰り返してきたけれど。
僕はミドーの隠された祈りが欲しい。相応しい友人であるか自身に問う。
僕はマッツンの繊細な感性が欲しい。お互いが傷つけあってきたけれど。
僕はミユキさんの誠実さが欲しい。人をよく愛さなければできない事だ。
僕は空っぽだ。とてもみんなにあわせる顔がない。
理論武装をして、少しでも賢くなりたいと努力しても、
とても、みんなに追いつける気がしない。
どうしたら、喜んでくれるかな?
それが命題のひとつだけれど、それがこの創作恋文の存在意義だ。
僕を覚醒めさせた、倖子君への祈りを込めた祝福の恋文だ。
僕なりに、必死で掻き集めた稚拙な答えでしかなくても。
君の傍にいたい、だから、おいでと呼び掛ける、
そうすると僕は昂揚して、いくらか未来が好きになる。
分かるかい? 倖子君と出逢えた事が僕の人生で一番の大事件だって事。
僕は創作で綴った以上でも以下でもない、情け無い男だ。
とっても悪い事も許しちゃうような人間なんだ。
それでも君に魅了されてからは、
君の面影、魂がある場所、君の欠片拾いに今日もあくせくしてる。
僕程度では悟りなんて程遠いから、いつも何かに囚われている。
でも、その何かは解らない。おかしいね?
今興味が持てる分野に、医療大麻があるけれど、
SNSを見ても、ほとんど有用な情報は得られない。
君がどう思うか分からないけれど、
僕は立場的にはどちらかと言えば推進派だ。
エビデンスも否定肯定が入り混じって、玉石混交で見分けるのが難しい。
ただ、僕の思う懸念は、日本で医療に関する大麻が認められたら、
デートレイプドラッグや自動車運転事故が必ず起こると言える事。
ひとまとめに大麻と括ってしまう事は、とても恐ろしい事だ。
それは、大麻の品種によって効果効能が違うからだ。
現在の大麻の品質がどれほど高められているか、僕は知らない。
でも、大麻が合法的に吸えるのであれば、僕は慎重に、かつ躊躇無く吸う。
大切なのはセッティングだ。
他者と分け合って楽しもうとするから、問題が浮上する。
最初はシッターのような役割をしてくれる人が傍にいた方が良いけどね。
大麻は精神に、良くも悪くも、非常に密接に働いてしまうから……。
大麻に害は無い、安全だ、という主張をしているのは明らかに嘘だし、
かといって、そこらに自生している植物を規制するというのも、
人権侵害すれすれに思える。国益を優先する人々の思惑な気がする。
単純に言えば、アルコール、煙草というドラッグの他に、
大麻という選択肢がひとつ増えるかもしれないという事だ。
国は人々一人ひとりの事なんて見れない。単なる統計だ。
お上は国益を優先している、大麻で廃人になるなんてのも嘘だ。
大麻によって、
人間は日々どれだけ全ての情報に洗脳を受けているか気付く為には、
大麻を経験しておく事は個人的には有益なものとなり得るだろう。
絆だなんだと言っても、その裏側には暴力による支配がある。
人間は一応生態系の頂点とも言えるから、
自分たちで殺し合い、間引くしかない。
医療大麻の問題は、人々が廃人になるのを止めるという名目の裏に、
各国の利権が複雑に絡み合っている。
科学なんていまだに黎明期だと僕個人は思っているよ。
僕は医療大麻推進派と言ったが、
それは僕が吸えるなら吸いたいという思いがあるだけに過ぎない。
あとは歴史が何を選択するかというだけで、
吸えないなら吸えないで別に今まで通り。
僕はそんなに長生きできないだろうけれど、
ご高齢のお方々には、医療大麻を許して差し上げていただきたい。
厳しい条件付きの限定的非犯罪化が僕の理想だ。
全面的な合法化には賛成できない。
賛成派と反対派が情報戦をしているから、実態を探れないお方々は、
諦めるか、逮捕覚悟で手を出してみるしかない。
不毛な言い争いを拝見すると、「どっちでもいいよ」と心底思う。
僕にとって大麻とは、ほんのちょっとの息抜き、
ほんのちょっとの創造力、ほんのちょっと君に近付く為のもの。
だから、恐怖と畏怖と恥辱に曝され、
僕はふしだらに君が欲しいと願ってしまうんだ。
しっぱいなんてしてとうぜん
いつでもちょうせんしゃ
そうありたいものだよ
歌曲 Savage Garden




