第20話「The World of midnight」
日々生活をし様々な情報を浴びると、
何故だか僕は逃げ出したくなる。
思った以上にせかいは穴だらけで、
不完全であるように思われて仕方がないからだろう。
僕より幸せな人を探してもキリが無いが、
僕より不幸せな人を探してもキリが無い。
エゴを持って事をなす方が僕は圧倒的に多いが、
幸せとか愛なんてものは、エゴとか相対などではなく、
ひたすら忘我の境地の中で空気のように与えられるものだと思う。
現在は「早水家の日常」以外での創作活動の場を停止しているが、
その代わりにゲーム制作という新しい生き甲斐が生まれた。
とはいえ、個人でできる事などたかが知れている。
今のところはゲームというより、少し豪華な紙芝居に過ぎない。
でも、これもまた、倖子君への恋文、捧げものだ。
例えば見返りを求める事が恋ならば、
愛は自己完結させられるから気負いはない。
彼女を思い浮かべて、僕の醜い感情も綺麗な感情もあるがままで良い。
僕の毎日の生活に倖子君の欠片がそこかしこに散りばめられていて、
一緒にいられた半年にも満たない時間を反芻する。
今日はこんな事を思い出した。
君と一緒に歩きながら話していて、
僕は理由ははっきりしないが君に「ごめん」と謝った。
そこで君は、「なんで謝るの?」といったが、
僕は、「悪いと思ったら謝るものじゃない?」と返した。
その当時は、僕には謝る癖がついていたと思っていた。
でも、つい最近それが何故か解った気がした。
僕は僕を卑下していた。
君にふさわしい男じゃなくて、ごめんね。
君にたくさん嫌な思いをさせて、ごめんね。
こんなに情けない男で、ごめんね。
僕は僕を哀れんで、言い訳に謝罪を使っていたんだ。
僕にとって愛とは倖子君との記憶だ。
君の記憶をよすがに生き、凍る程冷たい日常をあたためてくれる。
そこでは僕がどれ程泣き叫んでいても、
決してその姿を誰かに見られる心配は無い。
生きる事が遊びではない場所。
僕はあがいて一通でも多くの恋文を海に流す。
それだけが僕の心の平穏を見出せる場所だから……。
僕が誰かを許す事なんておこがましいけれど、
僕は僕の出会った全ての人々に笑顔でいてほしい。
どうか、僕の事で心を不安で揺らさないでいて欲しい。
君は、自由なんだから。
ぼくはきみのことをかんがえつづけます
するとこころがあたたかくなります
たとえこのまよなかのせかいのなかでも
作詞・作曲・歌 - Minako "mooki" Obata




