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白兎は赤に溺れる。  作者: 伊藤さん
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鍵師クロエ。

俺は橘 陸、フリーライターをしている。

雨の日に喉元を鋭利な刃物で切り裂かれて、その傍らには真っ赤な兎が笑っているという、猟奇的殺人事件を追っている。


その帰り道の途中で真っ白な少女を拾った。




「にい朝だよー起きてー。・・・起きないとチュウしちゃうよ。」

「陸、朝です。お寝坊です。」


まだ寝足りないのにゆさゆさ揺らしてくる2人の妹達に「あと30分だけ・・・。」と言い布団に潜った。


布団がもぞもぞしたと思ったら俺の両腕に柔らかいものが当たってきた。俺は目を見開き両隣を見渡すと妹達が抱きついていた。

待って待って心臓が破裂しそうなくらい早く脈を打つ。


「何してるの?」と平然を装いながら2人に声をかけたら


「にいが起きないから抱きついてるの。」ニヤニヤしながら言う楓。

「お姉ちゃんだけズルいから私も・・・。」と顔を真っ赤にしながら言うエナ。


ここは天国ですか?神様。


30分いい匂いを胸いっぱいに吸い込み、両腕の柔らかいものをゆっくり堪能できる訳もなく渋々起き上がった。


「おはよう楓、エナ。」

楓は不機嫌な顔をし、エナは残念そうな顔をしていたので2人の頭を撫でると機嫌を直した。


とりあえず顔を洗いに台所へ向かうとお味噌汁のいい匂いがした。


「今日クロエの所に行くから。二人共ご飯食べたら準備してな。」


「ゲッ!!」楓の顔が青ざめてるのが見て取れた。


「・・・にい、ちょっとウチ用事を思い出した・・・。」そう言いながら何処かに行こうとする楓の首根っこを捕まえた。


「エナの為だから頑張れるよな楓。」と諭す様に言うと諦めたのか口を尖らせた。


「ウチの骨はちゃんと拾ってね。」そう言いながら遠い目をしていた。


そんな2人のやり取りを見ていたエナは、笑うのを我慢してるのか肩を揺らしていた。


それを見た俺達は釣られて笑った。


クロエとは昔馴染みの腐れ縁って奴で鍵屋を生業にしている奴だ。


なんで鍵屋って?エナを拾った日、家にある工具で鎖だけは何とか外す事が出来たが、鉄の首輪はだけは外せなかった。その鉄の首輪には鍵穴が付いてて俺達には外す事が出来なかったのだ。


そこで俺は昔馴染みのクロエに連絡を取っていたって訳だ。


「今日の朝ごはんは何かな?」そう言いながらちゃぶ台のいつも俺が陣取ってる所に座った。


「ふっふっふっ今日はキャベツのお味噌汁になんとエナチが作った卵焼きです」っと自慢げに胸を張って言う楓。


「エナ、頑張ったな。」と左に座る頭を撫でてやると嬉しそうな顔をしていた。

右側からイヤな視線を感じたので見ると楓がジト目をしながらいじけていた。


「ウチかてお味噌汁作ったもん。」と言いながら頬を膨らませたので


「楓も頑張ったな。」と頭を撫でてやった。


食べ終わった俺達は準備をした。

エナは服を持っていなかったので楓の服を借りフードを深々と被り家を出た。


俺の家からクロエの家までは歩いて10程の所にある。

だんだんと家に近づくにつれ楓の足取りが重くなってるのが見て取れた。


なんでこんなに楓が嫌がってるかと言えば・・・。


「か~え~で~ちゅわ~ん♪遅いから迎えにきちゃったよ~♪」


「ひっ!!」


「ぐへへ、今日も楓ちゃん宇宙一カワイイね。お姉ちゃんとあんな事やこんな事楽しもうではないか。・・・じゅるり。」


「にい・・・。」


「チョーップ!こらこら楓が泣きそうな顔をしてるだろ。」


「痛。何すんだよ陸。」


この頭を押さえてる金髪碧眼の恵体のよろしい長身なお姉さんが鍵屋のクロエだ。

ちなみに10代の頃に綺麗、綺麗と言われ過ぎて拗らせ超が付くほどのカワイイ女の子が大好物。


「・・・ハァハァ、陸・・・。その後ろにいる子は・・・。Meの美少女スカウターが凄い反応をしているよ!美少女力はどれどれ・・・5・・・53万だと!ぐふっ。」


「あっ・・・。」

「エナ、ほっておいていいからな。いつもの事だから。」


「エナちゃん、楓ちゃんお姉ちゃんの家においで!とりあえずお風呂!3人で入ろ!ねっ何もしないから。えへへ」


「「ひえっ。」」


何もしないからって下心丸出しだぞクロエ。


「クロエ。エナの首を見てほしい。外せそうか?」


「おっとそれは愚問だね。陸、私に外せない鍵なんて無いよ。まあとりあえず見せてね。どれどれ・・・。にへへ。綺麗な髪の色だねエナちゃん。」


本当にブレないな。それを見て俺は楓の目を見て合図を送った。嫌な顔をしてたが妹の為か意を決した顔をした。


「クロエお姉ちゃん・・・。お・ね・が・い。」


「!!・・・ぐふっ!・・・Meの人生に・・・一遍の悔いなし・・・。」バタッ


突っ込むのを我慢した。


「道具はMeの家にあるからとりあえず行こう。」


クロエがそう言いながら楓とエナの手を取って歩き出した。


「陸から久しぶりに連絡が来たからまた戻ってきてくれるのかと思ってたんだけど。」


「もう戻らないよ。今のままで十分幸せだからな。」


「そっか。」


そうこうしている内にクロエの家に着いた。


「エナちゃん、鍵穴見せてくれる。」


そう言いながら道具でカチャカチャ10秒程クロエがいじっていたらガチャっと鍵が外れる音がした。


「お姉ちゃん!ありがとう!」と楓が抱きついた。


「うひょー!デレた!楓ちゃんがデレた!」


ちょっと理解不能なのでほっておく。


「首は痛くないかエナ?」

「うん。大丈夫です。陸。あのっ・・・クロエさんありがとう・・・。」


「んーエナちゃん、クロエさんじゃなくてクロエお姉ちゃんって呼んで呼んで♪」


「・・・クロエお姉ちゃん。」

「うひょーーー!!逝くはこれ!テクノブレイクしちゃう!」


ダメだこいつ。


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