新しい家族。
何でウサギの目は赤いか知ってる?
何でウサギは白いか知ってる?
ウサギは寂しがり屋の泣き虫だからあなたのあたたかい赤で私の空白を満たして・・・じゃないと私死んじゃう。
雨の中、喉を切り裂かれ血飛沫を上げながら、叫ぼうにも声が出せなくのたうち回る男と、それを見つめる被り物した真っ赤なウサギが満足な笑みを浮かべる。
「あたたかい、・・・幸せ。」
日本は出生率が下がり働き手が減少の一途を辿った。日本はやむ無く移民を受け入れた。
最初は良かった。使う側の人間だけが儲かり、下の者はそれらの負担を強いられた。
日本警察だけでは手出しができないほどの大きなカルテルやギャング等が出現し、犯罪が増え始めやがてスラム街ができ、国が把握しきれない程の孤児や犯罪、殺人などが横行した。
俺の名前は橘 陸、フリーライターをしている。
今巷で騒がしてる猟奇的殺人を2ヶ月程追っかけているが中々ネタを掴めずあぐねいている。
その猟奇的殺人は3ヶ月ほど前から始まり今までの被害者数は14人。
今までの事件の関連性は全員喉元を鋭利な刃物で斬られてる事と、雨が降る日に必ず起こっていることだ。
数少ない目撃者の情報によると鼻が隠れる位のウサギの被り物し、被害者の血を全身で浴び真っ赤に染め立ち尽くしながら笑っていたと言う。
「とんだサイコパスだな。」
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そんな街外れ、緩やかな長い坂道を今日もネタを掴めずとぼとぼと歩いている。その途中にあるバス停、街路灯が暫くついたり点滅したりしている。
夏も終わり秋に差し掛かり小雨も相まって肌寒い夜。
「雨と夜が重なるとかなり冷え込むな。」独り言を呟きながら家路を急いで歩いてると、そのバス停のベンチには1人の少女がいた。
中学生くらいだろうか。第一印象はそんな感じでそれ以外にも色々と気になる所はいっぱいあったがそんな事は、どうでもいい。
俺は急いでカーディガンを脱ぎ少女に掛けてあげ、先程コンビニで買ったばかりの少し冷めてしまったが多少なり暖かいミルクティーを差し出した。
「まだ口を付けてない。あげるから遠慮なく飲みな。」俺はそう言いながら少女の目の前で飲み物の蓋を開け渡してあげた。
少女は目を大きく見開きビックリしていた。
見ず知らずの人からいきなりそんな事されて驚かせちゃたかな。でも待ってほしい驚いたのは俺の方だ。こんな肌寒い夜に裸足の薄汚れた白いワンピース、しかも首輪に先が千切れた鎖、こんな街外れのバス停のベンチで横になっていたのだから。
最初に見た時は死体!?と腰を抜かしそうになっていたくらいだ。
少女は顔を赤くしこくりこくりと頷きミルクティーに口を付けチビチビと飲み始めた。
「・・・・・・。」
その少女はコロコロと表情を変え目を瞑り何かを考え始めた。
落ち着いたところで改めて少女を見て思った事は、長く真っ白な髪、透き通った白い肌、目鼻立ちもしっかりした顔。ハッキリ言って10人いれば10人共カワイイ!と言うくらいにその一言に尽きる。そんな考え事をしていると
俺の服の裾をクイクイッと引っ張る少女。
「ありがとう・・・。」俺の目をしっかり見て小さい声ながら顔を赤くし感謝を述べる少女。
この時何より目に惹かれたのは、街灯に照らされた少女の瞳。深く吸い込まれそうな程綺麗な真紅色。・・・白うさぎ?とバカなことを考え込んで息を飲み込んだ。
「いいよ!気にするな。」と極めて明るく言葉を返した。
「落ち着いたかな?それより怪我とかは無い?おっとごめんごめん。自己紹介がまだだったね、俺の名前は橘 陸。君の名前は?」
少女はオドオドしながら少し沈黙をし
「・・・Jenna。」
「ジェナって名前?」俺はその言葉を繰り返し聞いた。
「ジェナ・ベイリー。エナって呼ばれてた。」少女はそう呟いて俯いた。
「あーえっとなんだ。・・・お腹空いてないか?俺の家に妹がご飯作って俺の帰りを待ってるんだ。」
後頭部を掻きながら少女に携帯を差し出し俺とツーショットで仲睦まじく写る妹の待ち受けを見せた。
「妹と同い年くらいだし良かったら友達になってくれないか?」
少女は最初は遠慮をしていたが説得の甲斐があって戸惑いながらもこくりこくりと頷いた。
「なんも心配は無い。とりあえずブカブカしているかもだけど俺の靴を貸すからこれを履きな、付け加えると俺の靴は臭く無いし水虫でも無い。」
と胸を張って言った。
「ありがとう・・・。」耳まで真っ赤にして俯く少女を見て目頭が、熱くなるのを気取られないよう頭に手を乗せ「うし!行くか。」
そうして雨の中1つの傘に少女と肩を寄せ合いながらも少女が濡れないよう、ブカブカの靴をぺたぺた鳴らしながら歩く少女と靴下で歩く俺は家路へと急いだ。
「ただいまー。」
と鍵を開け扉を開けた瞬間
「おかえりー!にい生きてる!?幽霊じゃないよね!?どこも怪我は無い?」奥の居間から走ってくる妹の楓が勢いよく抱き着きながらハァハァ、スーハースーハーと俺の胸から離れないまま、もごもご言ってきた。
「濡れてるから離れろ離れろ。」と引き剥がそうにも剥がせないちょっと残念な妹を紹介しよう。
楓は学校があれば高校一年生ぐらいの年代だ。
チビだが目がくりくりしていてTHE妹って感じの可愛らしい女の子だ。若干俺との距離感が近いのがたまに傷だが俺の自慢の妹だ。
「楓帰ってきて早々なんだが紹介したい人がいるんだ。」
ハアハアしていた楓が俺の言葉を聞いた瞬間ピタっと固まった。
「えっ何?ちょっと聞き取れなかった。・・・・・・紹介?なんで改まってるの?・・・女?にいにはウチって伴侶がいるでしょ!にいの浮気者ー!」
「いやいやいや落ち着け楓。とりあえずエナ入っておいで。」と玄関の外で入りにくそうにしていたエナを呼んであげた。
エナは俺の後ろ斜めに立ち裾を掴んで恥ずかしそうにしている。
そんなエナの姿を見た楓は目を見開いたが躊躇せず玄関を裸足で降りエナの事をギュッと抱きしめた。
「大丈夫だよ。もう大丈夫。もう1人じゃないから。」鼻水ずるずるしながらカワイイ顔を台無しにして。
エナは吃驚したのか耳を真っ赤にしオドオドしながら俺の顔を見てきた。
「行くところがないならいつまでも、ここにいていいんだからな。」そう言ってエナの頭をポンポンしてやった。
すると顔まで真っ赤にしモジモジしながら何かを伝えたそうな顔をしていたので楓を落ち着かせ俺と楓はエナの言葉を待った。
「・・・えっと、あの・・・。」
「大丈夫だよ。ゆっくりでいいよエナちゃん。」
「ここが温かくて・・・初めてこんな温かくて、・・・」ぎこち無いながら必死に言葉を紡ぎ、両手を胸の前で組みポロポロ涙を流した。
俺達に新しい妹が出来た。