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ArkRoyalを吸う君が好き  作者: 月下白明
4/4

1箱目-3本目-

どうも月下白明(ツキモトアカリ)です。

少し長くなってます。

裕司の過去回で少し暗めですが、今回もよろしくお願いします。

僕のたった1つの思い出。

それは、今は亡き母の料理の手伝い。

「長くなります。これは僕が小学4年生の時です。」

僕は母が大好きだった。

母の作る料理がたまらなく美味しくて、いつも夕飯前はよくキッチンに行って作ってるところを見ていた。

ある日、母は僕に

「裕司、将来のために料理のお手伝いしてみるかい?」

と、問いかけた。

僕は大きく首を縦に振り、それから毎日料理の手伝いをした。

包丁の持ち方から、切り方、調理方法、買い出しの仕方など教えてくれた。

まるで娘の嫁入り修行のようだったと今は思う。

それから4年。

学校終わりに買い出しに行くのが毎日の僕の仕事だった。

今日は母が病院に行ってくるとのことで調理は全部任されていた。

こう言ったことは何度もあったので別に何とも思わなかった。

だが、帰って調理を開始しようとした時、携帯が鳴った。

滅多に鳴らない僕の携帯を鳴らしたのは病院に行った母だった。

「もしもし、母さん? どうしたの?」


「裕司、落ち着いて聞いてね。母さん、肺に癌が見つかったの。それも結構進行してる。」

耳を疑った。

驚きのあまり携帯を落としてしまった。

それから母は声色を一切変えずに

「裕司、お母さんはもう助からないかもしれない。だから、今のうちにこれだけは言っておくね。うまくなくてもいい、愛を、愛だけを忘れないで。」

と伝えた。

当時の僕には全く理解できるほどの頭と冷静さはなかった。

それから1年も経たないうちに母は旅立った。

その夜、あの日の母の言葉の意味が理解出来た。

癌のせいで料理ができなくなり、抗癌剤治療も始めた母の代わりに僕が作り、食べさせた。

食べても食べても抗癌剤の副作用で戻してしまうのに、母はいつも笑って僕に

「おいしいよ、裕司。」

と言ってくれた。

自分ではまだまだ母の味に追い付けるほどでは無かった。

それなのに母は嘘の片鱗さえ見えない満面の笑みで僕にそう言った。

愛、それさえあれば何事もうまくなる。

実に気さくな母らしい言葉だと思った。

だから、また母のような満面の笑みを見せる人にいつか毎日料理を作るために料理の腕をあげた。

料理学校に入るか悩んだ。

だが、母は

「料理学校に入っても意味は無い。母さんは行ってなくてもここまで家族を幸せに出来てるんだから。」

と言っていたため前々から興味のあった映像の専門学校に入った。


「これが僕の料理を作る意味、僕の料理がうまい理由です。気持ち悪いですよね、マザコンの男なんて・・・・・・」


「気持ち悪くなんかない!」

話を終えた途端、突然怒鳴られた。

「気持ち悪いもんか! いいじゃないか! たった独りの母親だ! 大好きなのは大切なことだ! それを、それを気持ち悪いで片付けようとするな! お母さんが悲しむぞ!」

やってしまった。

大好きな母の話を好きな人にする。

どうしても嫌われると思ってしまうから自虐に走って自分を隠してしまった。

その結果、海咲さんを怒らせてしまった。

「海咲さん。僕、今自分に嘘ついてました。本当は母が大好きです。命日になると学校を休んでまでお墓に会いに行ってます。それくらい、今でも涙が止まらないくらい大好きです!」


「裕司くん・・・・・・。」


「ごめんなさい、僕大好きな母さんにひどいこと言いました。大好きな海咲さんを怒らせてしまいました。ごめんなさい・・・・・・。」

涙が止まらない。

見られたくない、くしゃくしゃになった男らしくない顔を。

それでも海咲さんは僕の顔を無理矢理上げさせ、

「裕司くん、私は君の作る料理が好きだ。毎日私に作って欲しい。お願いできるかな?」

真っ直ぐな眼差しで言った。

嬉しい。

母と同じように僕の料理が好きと言ってくれる人に出会え、こうして目の前で作って欲しいと言ってくれる。

僕は涙で濡れた顔を拭き、母に料理の手伝いをしてみないかと言われた時と同じように首を縦に思いっきり振った。

いかがでしたでしょうか。

最近はマザコンってあまり馬鹿にされない社会になってるのが驚きです。

昔、私はマザコンで虐められてたのでどこか嬉しいです。

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