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私が魔王になる前に  作者: よしや
第二章
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学校でのウィル

「アリシア、何があったのか話してごらん。そんな顔して何もされてないと言われても説得力は無いよ」


 久々の再会だと言うのに、いったいどんな顔を私はしているのだろう。怒っても泣いてもいない…笑ってもいない顔か。ウィルは大きくなった。私も成長したけれど、拳一つ、二つ分高くなっているくらいかな。声も低くなり、顔立ちは随分と大人びたように感じる。昔と変わらず話しかけてくれることに少し安堵した。


「師匠に刃物を向けられて、悩んで困っていた時の顔だ」


 私は両手を使って無理やり口角を引っ張り上げて笑って見せた。ウィルの顔から怒りが消えて困ったような笑顔になる。まずはウィルと話だ、と思い両手を放して言葉を紡いだ。


「せっかくの再会なのに心配かけてごめんなさい。どこから話せばいいか私にもよく分からないの」


 悩みながらもヴェイグが話した内容をウィルに全て話した。殺されかけたことは省いて、遠足の時の事、銀竜家の事を全て。ウィルも聞きながら顔をしかめている。自分達が助けたと思った子が―――この学校で再会できたかもしれない子が亡くなっていたなんて思いもしなかったと。


「それで、アリシアはどうしたいの?」

「えっと、まだそこまで考えてなかったわ。あまりに衝撃過ぎて、頭が追い付いていないみたい」


 一人で抱え込めるほど些細な出来事ではないし、これは言うなれば個人情報だから信用出来る人にしか話したくない。リッカがどこまで把握できていたのかは知らないけれど、確かに迂闊に人のいる前で話せるようなものではない。リッカを見ると、「想像していた感動の再会にならなかったー」とコハクの上でむくれている。


「人の家の事情に首を突っ込むのは良くない……それは村に居た時からアリシアは分かっていたみたいだけれど、まさか助けたいなんて思っていないよね」

「え……あ、そうか、助けないとね」


 自分のせいだと攻める事しか思っていなかったから、これ以上犠牲者が出ないようにしようなんて思っても見なかった。もっと確実に私を傷つける手段があったはずなのにこんな温いことをしたのは、どうにかしてほしいと願ったのではないかと、ウィルの言葉で気づく。ウィルはしまったと言う顔をして口元を抑えた。


「えーと、助けたいなんて思っていないならアリシアは何を考えていたのかな?」

「私のせいだって思っていたの。私が助けなければあの子たちは助かっていたかもしれないのに」


 ウィルにとても大きなため息をつかれてしまった。私が聞き分けのない子供でウィルが諭す大人みたいに思えてくる。二つの齢の差は大きくなれば埋まるのだと思っていたけれど逆に開いているようだ。


「もしアリシアがいなかったとしても無事に逃げ切れた確証はないし、本気で逃げたかったらエルンストに保護されて引き渡される前に相談していたはずだ。」

「私が黒髪赤眼で、エルンストはその味方だからそんな事できなかったのかもしれないわ」

「あの時点で王女だなんて気づいていた様子はなかった。誘拐犯の様子から考えてもそれは無いと思う」

「牢屋を力技で脱出してしまったから怖くなったのかも」

「それは…」


 脱出するために曲げた鉄格子をウィルたちも見ていた。そうかもしれないなんてウィルも思ってしまったのだろう。無言になってしまった。


「取り敢えず週末にエルンストと師匠に相談してみるわ。ドラゴンも犠牲になったのは確実だから、エルンストも動いてくれるかもしれないし」

「紫竜家対銀竜家の構図が出来上がるわけだね。金竜家も君寄りみたいだし、僕は緑竜家。生活の基盤は銀竜家が担っているようなものだし赤竜家は魔石の卸先に付くだろうね」


 ウィルの顔を見る。銀竜家のどの立場の人がどこまで非人道的な事をしているのか、当主の主導なのか末端が勝手に動いているのかも分からない。けれど全てを解決しようとすれば最終的に銀竜家を相手取ることは確かで、末端だけだとしてもこっそり邪魔するだけと言うわけにはいかない。私は一人では出来ないからと周りの手を借りようとすれば、知り合いには貴族が多いため家同士の争いに発展してしまう。


「仮にもし彼の話がすべて本当だとして、彼がその被験体ならどうして野放しにされて学校なんかに来ているのか、アリシアは分かる?」


 私に復讐するため?捕らわれていた場所から抜け出すことが出来たなら銀竜家に対して復讐すればいいのに。わざわざ学校に来てまで私に接触するその意図もよく分からない。


「よく考えて動かないと、それに加えて君は王女なんだから王家もそこに巻き込まれるよ」

「だからって何もしないわけには……」

「それに本人がそれを望んでいるとは限らないだろう」


 今度は私が黙る番だった。確かに助けてくれなんて言われていないし、むしろ私に害を為そうとしているのなら余計なお世話だと怒鳴られそうだ。他にも……誰か犠牲になりそうなら止めさせたいのだけれど……


「他に隠していることは無い?隠しても為にはならないよ」


 懐かしい、ちょっぴり黒い笑みのウィルに私は少しだけ焦った。逃げ切れるだろうか。もし殺されそうになったなんて言ったら、ヴェイグが危ない。私が笑顔で誤魔化そうとすると、ウィルは距離を詰めて手を伸ばしてきた。

 コハクが私とウィルの間に入る。虎の巨体で無理やり入ろうとしたため押し出されて私とウィルは互いに後ろに下がることになった。暫くコハクとウィルのにらみ合いが続く。

 一触即発か。慌ててコハクに止めなさいと命令すると別の所から何とも軽い感じの声がかかった。


「あれっ、会長こんな所にいたんスか。うおっ、でっかい虎がいる」

「ああ、済まない、今いく」


 現れたのは二人組の生徒だった。一人は明るい茶髪の軽そうな男の子、もう一人はピンクの髪のセミロングの女の子。ウィルの事を会長と呼んでいる。


「会長?ウィルが生徒会長?まだ三年生でしょう?」

「四年生になると社交界に出る先輩方も多いからね。仕方なく三年生の僕が務めているんだよ」


 ウィルの話は貴族に限った話だ。毎年貴族が出てくるわけでは無いし、平民が生徒会長をやることだってあり得ない話ではない。ウィルの言葉を受けて真面目そうな女の子が話し始めた。


 「仕方なくって事は無いでしょう?しっかり選挙を行ったうえで選ばれたのですから。そちらはもしかして……」

「アリシア、こいつらは生徒会の連中だ。トーマとニーナ。トーマの方は覚えなくてもいいからね。」

「ひでー」


 身分の都合上だろうか、先に私に紹介してきた。男の子がトーマ先輩、女の子がニーナ先輩。二人は平民でウィルよりも年上だ。ウィルの学校生活をやっと垣間見た気がする。次いでウィルは私を二人に紹介する。


「この子はアリシア。僕の幼馴染で……王女だ」

「アリシアと申します。以後、よしなに」

「本物のお姫様かぁ、うわーこんな間近で見るの初めてだ」


 残念、田舎育ちのなんちゃってお姫様です。温室育ちならエリーゼの方がお姫様だよ。私がにこにこしているのをいいことにトーマは私の周りをぐるりと回って観察する。


「王女アリシアって言えば予言の王女でしょ?もっと不細工でごついの想像していたのにかわいいじゃないッスか」

「トーマ!」


 トーマの言葉にニーナが焦っている。そうか、身分差を気にするなら今のは失礼な発言になるのか。にっこり笑って気にしてませんよと言っておく。可愛いと言われたのだ、むしろ飛び跳ねて喜びたいくらいなのだが。

 一人で孤立する様子もなく、仲間もいて充実した生活を送っているようだ。手紙を送れないほど忙しかったと言うのは本当だろう。安心した。


「私の幼馴染をどうかよろしくお願いします」


 私がそう言って二人に頭を下げると呆れた顔のウィルがいた。うん、面倒見てもらうのは私の方なのに、何様のつもりだとかいうのは無しね。


「よろしくされちゃったな」

「されちゃいましたね。と言うわけでそろそろ会議に向かいますよ。中断して女の子といちゃいちゃしてたなんて、他の男子生徒の反感買いますからね。うまい言い訳はご自分で考えて下さい」

「いちゃいちゃってのはもっとこう……じゃあね、アリシア。一人で動かないように」

「うん、わかったわ」


 二人に連れられてウィルは去って行った。

 ばば様が亡くなって大変だったね、とか学校の方はもう慣れた?なんて少しぎこちなくなるような会話を想像していただけに、すんなり話が出来たのはある意味ヴェイグのお蔭かもしれない。

 動かないようにと釘を刺されたけれど、何か出来ないかと考えるのは自由だよね。

キャラクターが……増えていく……。村のおじさんやおばさんみたいに一括りに出きないかな。

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