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私が魔王になる前に  作者: よしや
第二章
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合格発表

 合格発表はエリーゼと一緒に見に行った。勿論、お互い保護者付きで。混雑することが予想されたのでリッカは置いてきた。わたしは受験票を片手に一生懸命に番号を探す。四十九番。ちょっぴり不吉な数字?


「四十七、四十八、…あった、四十九番あったわ!」

「私も見つけたわ。アリシア、おめでとう」

「うん、エリーゼもおめでとう」


 落ちたら悲しい……というよりもみんなに申し訳ないと思っていた私はほっとした。帰ったら師匠や先生やエルンスト、セバスチャンたちにもお礼を言おう。二人で喜んでいるとどこからか「エリーゼ!」と呼ぶ声が聞こえた。そちらをみると赤みがかった茶色のショートヘア―の女の子が元気に手を振っている。


「丁度良かったアリシア、紹介するわ。この子はコルネリア。この子の兄のフェリドが私の婚約者なの。コルネリア、この子はアリシアよ」

「よろしくアリシア」


 そう言ってコルネリアは手を差し出してきた。何の疑問も持たずに握手をすると、それまで黙っていたエルンストから待ったの声が懸る。


「アリシア、迂闊に手を出さないでください。コルネリアさんも礼儀がなっていないのでは無いですか」

「うちは、代々騎士の家系だからね。武器を持っていないことを証明するためにも挨拶は握手なんだよ。気に触ったならごめんなさい」

「エルンスト、心配してくれてありがとう。コルネリアも、ごめんなさいね」


 どちらが悪いという事は無い。けれどせっかくのお祝い気分が台無しになってしまうのは嫌なので私は謝っておいた。コルネリアは気にしていないと首を振る。活発で素直な子。このことも気が合いそうだ。


「ね、二人ともどうだった?私は合格だけど……」

「もちろん」

「合格よ」


 笑顔の花が咲き、私とエリーゼの手を取って飛び跳ねるコルネリア。少しばかり、リアクションが大げさな子だ。ぴょんぴょん跳ねたかと思ったら「兄様~」と叫びながらあっという間に走り去っていた。去っていた方を見やると黒髪の男の人がいる。


「あら、あの人アレクに付いている騎士でしょう?あの人が婚約者?」

「ええ、そうよ。会ったことがあるの?」

「この前、王都観光をした時にアレクを捕まえる手伝いをしたのよ」


 アレク付の騎士―――フェリドがコルネリアと話した後にこちらに向かって会釈をしたのでこちらも返しておく。周りは人でごった返しているので近づくことが出来ない。そのうちちゃんと挨拶できるだろう。大きく手を振るコルネリアに向かってエリーゼは小さく手を振る。私も手を挙げてコルネリアと別れた。


「アリシア様、制服を作る際にはぜひうちをご利用くださいな」

「もう、お母様ったら。こんな時にまで」

「いえいえ、是非ともお願いします」


 テレーゼさんに制服のことを言われた。そうだ、これから入学準備もいろいろしなくてはならない。寮に入るからそちらの準備も。いろいろテレーゼさんにお世話になるのは必至だろう。何かお返ししたいとは思うけれど私が思いつくことなんてほとんどない。これからエリーゼと一緒の学校なのだから、エリーゼに返すのが良いかな。いっぱい仲良くして困っていたら力になろう。力になってもらう事の方が多いかもしれないけれど。




「ただいまー」


 玄関ホールでずっとうろうろしていたらしい師匠が扉が開いた途端に肩を掴んで聞いてきた。隣にリッカもいる。


「アリシア、どうだった?」

「もちろん合格よ。師匠痛いから放し……」

「よくやった!アリシア、おめでとう」


 私の話も聞かずに師匠は腰のあたりを掴んで高い高いをしてそのままくるくる回る。いやいや私十二歳よ。背もそれなりに高くなったのよ。体だって重いでしょう……というかこれ、かなり怖い。お願い誰か止めて……。遅れて入ってきたエルンストが、「何やってるんですか!」と珍しく怒鳴った。後でリッカの話によるとそれほどに私の顔は恐怖に引きつっていたらしい。悲鳴を上げることもできなかったほどに。


「うるさいな、チハルの分まで祝うと決めたんだ。これくらいいいだろ」


 そっぽ向いてむくれる師匠。私はというと、降ろされたとたんに足が震えてエルンストにしがみ付いていた。合格したのにどんな仕打ちよ、もう。出迎えたセバスチャンが笑顔で言った。


「今日はお祝いでございますね。特別な料理を用意させましょう」


 その日の食卓には丸々一羽使ったローストチキンやら、オードブルやら、ケーキやら、いろいろな料理が並んだ。立食形式で使用人のみんなも一緒に食べようと私がエルンストに提案したからだ。


「え~この度、私アリシアは目出度く高等学校に合格いたしました。これも(ひとえ)に皆さんのおかげです。本当に有難うございました」


 皆で乾杯をした。師匠とエルンストのグラスにはお酒が入っている。セバスチャンもマーサもみんなみんな笑顔だ。切り分けられた鳥を食べ、果実のジュースを飲み、皆とおしゃべりする。


 ばば様、私、合格したよ。一人じゃないよ。祝ってくれる人がたくさんいるよ。


 一人で感傷に浸っていたら、頭にリッカがぶつかってきた。リッカはそのまま跳ね返されてケーキの方へ飛んでいく。


「リッカ!大丈夫?」


 リッカがケーキに頭から突っ込んでいた。慌てて救出して顔の周りのクリームを(ぬぐ)ってあげる。


「うふふふふ~幸せですよ~ひっく。ご主人様~リッカは~実は~」

「げ、リッカお前俺の酒飲んだのか」


 確かにちょっとお酒臭い。ふらふらと私の手を離れたリッカは、今度はエルンストのグラスに頭を突っ込もうとしてセバスチャンに止められた。


「リッカさんは酒乱だったのですか。マーサ、妖精とは言えリッカさんは女性ですのであなたが介抱して差し上げて下さい」

「あ、それなら私が……」

「今日の主役は貴女です。どうかお気になさらずに…」


 マーサによってリッカが連れて行かれた。……リッカが何を言おうとしていたのか気になったけれど、きっと後で聞いても酔っぱらった時の事は覚えていないって答えが返ってきそうだ。私はそのまま料理を食べ続けた。師匠とエルンストが両側に立っておすすめ料理を私の取り皿に山盛りによそっていく。


「アリシア、これも食え」

「こっちも美味しいですよ」


 もぐもぐもぐもぐ。


「ほれ、これも脂乗っていてうまいぞ」

「野菜もしっかり食べて下さいね」


 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。


「炭水化物は最強だよな」

「バランスよく食事はとるべきですよね」


 もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。


「本当によく食べるなー。そのうち太るぞ」

「少し食べすぎでは?レディーならもう少し控えめにするべきですよ」


 ・・・・・・。


「だ・れ・の・せ・い・よ!こんなに次から次へとよそられたら食べるしかないでしょう!いい加減にして!」


 私が怒って怒鳴ると二人はげらげらと笑いだした。あ…酔っぱらってる…?と思ったら周りの皆も笑っている。


「いやー良い食べっぷりですね。料理人冥利に尽きますよ」

「すみません。私もよそってあげたいとか思いました」

「一生懸命食べる姿も可愛らしかったですよ」


 食べるのに必死で皆に見られているなんて思わなかった。うわ、恥ずかしい。ケーキの為に腹八分にするつもりが、ちょっと……無理だったかな……。くっ、無念。


翌朝、私は食べすぎで、リッカは二日酔いで起きることが出来なかった。


 

ちなみに料理人は転移者を想定しております。

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